駆け落ちの後始末を、僕らに求めるのはマジ勘弁して欲しい

たまとら

文字の大きさ
上 下
25 / 31
パルスの血族

25

しおりを挟む
ラルーナが死への階段を登った時。
タイタニアからは何のリアクションも無かった。
もっともこちらから連絡する手立てが無かったのかもしれない。
オベロン王は何も語らず、死への痛みに耐えているようだった。

ただ、ルザの樹海に接している領はタイタニア探しに火がついた。
ルザの樹海は別名"暗黒の迷い森"と呼ばれて国境にある。
中は暗く、近寄るだけで体内の感覚が狂っていく。
どんどん負の感情に囚われて、人型を維持できずに獣に変わり、彷徨ったまま出口がわからなくなると言われていた。

国境ゆえに、シーシュスも接している。
先代の領主もオベロンの出現に驚いてタイタニアを探していた。
もちろんライサンダーも。
だが、見つからないのだ。

ただ、このルザの樹海の周りには古くから言い伝えがあった。
夏至の時に"森の中から人影が手招きする"
"ある井戸の水が枯れて何かが上がってくる"
ロダ川も、夏至の時にポロロッカが起こる。

"夏至"と"水"それがタイタニアに繋がっていると研究者は信じていた。


ライサンダーは伝承にある井戸の全てに、夏至の前にパルスの髪を少し切って、封印した手紙と共に投げ込んだ。
血族としてのパルスの髪ならばタイタニアへの扉が開くかも知れないと思ったからだ。



~~そして、返事が来たのだった。


返事はユグロロという、崖の岩肌に巣を作る鳥が運んできた。
人混みの中、迷う事なくライサンダーの元へ飛んできた鳥は、通信文を落とした。
ライサンダーは詳しく綴った手紙を鳥に託した。
そうやって密かな文通のあと、タイタニアから鳥が魔道具を運んできた。


世界大戦以来、魔法は消えつつあった。
生活魔法すら使えない者も増えた。
魔道具を直に見た者はあまりないだろう。
魔道具など、御伽のようだ…。 
未知への興奮でライサンダーの尾はぶんぶん揺れる。
転移する魔道具。
……こんなもの、王に知られたら、反逆を疑われてしまうな。
タイタニア、全ての研究者が探すはずだ。
こんな物をポンと出すほどの科学力なのか。


まず、説明書通りに場所を空けた。
誰にも覗き込まれないようにする。
広い場所にソレを置く。
発動する様に少し力をながすと、直ぐに離れた。

魔道具がチカチカと点滅する。
そこから1メートル程の陣が辺りに広がった。
その上に光が流れる。
そして、噴水のように光が幕になって立ち昇った。

転移は知らない場所には出来ない。
転移した場所に、何かがあった場合、自分の細胞がその物と癒着する恐れがある。
その為に陣の上の物はすべからく消滅させられる。
排除する為の光が陣を掃除して、さらに風が湧き上がった。


ライサンダーはこの目新しい物に、食い入るように見つめている。

やがて陣の中に人影が浮かび上がり、ライサンダーは、片膝をついて迎えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません

りまり
BL
 公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。  自由とは名ばかりの放置子だ。  兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。  色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。  それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。  隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

狂わせたのは君なのに

白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

この恋は無双

ぽめた
BL
 タリュスティン・マクヴィス。愛称タリュス。十四歳の少年。とてつもない美貌の持ち主だが本人に自覚がなく、よく女の子に間違われて困るなぁ程度の認識で軽率に他人を魅了してしまう顔面兵器。  サークス・イグニシオン。愛称サーク(ただしタリュスにしか呼ばせない)。万年二十五歳の成人男性。世界に四人しかいない白金と呼ばれる称号を持つ優れた魔術師。身分に関係なく他人には態度が悪い。  とある平和な国に居を構え、相棒として共に暮らしていた二人が辿る、比類なき恋の行方は。 *←少し性的な表現を含みます。 苦手な方、15歳未満の方は閲覧を避けてくださいね。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

処理中です...