8 / 31
シルフィと王城
8
しおりを挟む
栄養状態も良くなり、シルフィは人型に戻った。
パサパサだった髪は、毎日丁寧に洗われ、オイルを刷り込まれ、何度も櫛けずられる。
白っぽいとしか見えてなかった髪は、みるみる発光するような白銀に変わった。
それが肩までサラサラと伸びている。
もともと外にあまり出てない肌は、毎日甲斐甲斐しくマッサージされる。
もう水蜜桃のように瑞々しく柔らかい。
唇は花のようにふっくらして桃色で。
冬の空を切り取った様な瞳は、ピンとした長いまつ毛に縁取られていた。
シルフィは目が見えない。
だから自分の容姿もわからない。
ただ、ママそっくりだと言われていた。
可愛い人型に戻ったのを一番喜んだのは、勿論王だ。
可愛いのぉ。
可愛いのぉ。
と、どっかのエロじじいのような鳴き声をあげながら、ベロベロとグルーミングしている。
くすぐったさに耳をぴくぴくしながらも、シルフィは満更でもない。
尻尾がたしたしと大きく振られていく。
先っぽがぼわぼわした王の尻尾は、風が起こるくらい激しくぶんぶんと振られていた。
グルーミングは好きだ。
ブラッシングもマッサージも気持ちいいけど。
グルーミングは魂をほぐされるようにうっとりしてしまう。
グルーミングされてると、ママやパルスを思い出す。
清拭するよりも距離が近いからだと思う。
目が見えていないからと、食器は全て木製だ。
ただ木製は温度がわからなくて。
たまにごっくんして、凄く熱い時がある。
……知ってる。
そんな時、侍従のヘレナが密かに笑いを浮かべているの。
優しくて甘い声で親切だけど。
時々、トリアスを侮る声になってる。
~~見えないとわかると、人はいろいろだ。
パルスは正しい。
力があるって、わからないようにしなくっちゃ。
シルフィはひとりぼっちになって、少し慎重になってきた。
トリアスはママに支えていたことがあるって。
「それはもう、美しくてお優しくて」
ママの事を話す声は愛しさと悲しみが、子守唄のようになっている。
ママの話は好き。
でも…
「そんな大切は王女様が、こんなに苦労なさって…」
決してパパの事を言わない。
外に出て苦労して、子供を産んだ。
それだけ。
~~パパを忘れそうで怖い。
何処に何があるかわかってる。
日差しを遮るように、木の影にカウチソファがあることも。
ハーブガーデンと花園の真ん中に、小さなバードバスがある事も。
木や花のエナジーを溢れさせる為に、ここは楽園のような森になっている。
木の根につまずかなように、皆んな注意してくれるけど、本当は分かってる。
でもわからないふりして、たまに枝に当たる。
侍従のイオは本を読んでくれる。
僕が外に出たいと泣かないように、全てが整えられている。
温室の中の造られた楽園。
~~シルフィは時々、閉塞感で苦しくなった。
*******************
いつも読んで頂いて、ありがとうございます。
次回からはパルスのお話になります。
パサパサだった髪は、毎日丁寧に洗われ、オイルを刷り込まれ、何度も櫛けずられる。
白っぽいとしか見えてなかった髪は、みるみる発光するような白銀に変わった。
それが肩までサラサラと伸びている。
もともと外にあまり出てない肌は、毎日甲斐甲斐しくマッサージされる。
もう水蜜桃のように瑞々しく柔らかい。
唇は花のようにふっくらして桃色で。
冬の空を切り取った様な瞳は、ピンとした長いまつ毛に縁取られていた。
シルフィは目が見えない。
だから自分の容姿もわからない。
ただ、ママそっくりだと言われていた。
可愛い人型に戻ったのを一番喜んだのは、勿論王だ。
可愛いのぉ。
可愛いのぉ。
と、どっかのエロじじいのような鳴き声をあげながら、ベロベロとグルーミングしている。
くすぐったさに耳をぴくぴくしながらも、シルフィは満更でもない。
尻尾がたしたしと大きく振られていく。
先っぽがぼわぼわした王の尻尾は、風が起こるくらい激しくぶんぶんと振られていた。
グルーミングは好きだ。
ブラッシングもマッサージも気持ちいいけど。
グルーミングは魂をほぐされるようにうっとりしてしまう。
グルーミングされてると、ママやパルスを思い出す。
清拭するよりも距離が近いからだと思う。
目が見えていないからと、食器は全て木製だ。
ただ木製は温度がわからなくて。
たまにごっくんして、凄く熱い時がある。
……知ってる。
そんな時、侍従のヘレナが密かに笑いを浮かべているの。
優しくて甘い声で親切だけど。
時々、トリアスを侮る声になってる。
~~見えないとわかると、人はいろいろだ。
パルスは正しい。
力があるって、わからないようにしなくっちゃ。
シルフィはひとりぼっちになって、少し慎重になってきた。
トリアスはママに支えていたことがあるって。
「それはもう、美しくてお優しくて」
ママの事を話す声は愛しさと悲しみが、子守唄のようになっている。
ママの話は好き。
でも…
「そんな大切は王女様が、こんなに苦労なさって…」
決してパパの事を言わない。
外に出て苦労して、子供を産んだ。
それだけ。
~~パパを忘れそうで怖い。
何処に何があるかわかってる。
日差しを遮るように、木の影にカウチソファがあることも。
ハーブガーデンと花園の真ん中に、小さなバードバスがある事も。
木や花のエナジーを溢れさせる為に、ここは楽園のような森になっている。
木の根につまずかなように、皆んな注意してくれるけど、本当は分かってる。
でもわからないふりして、たまに枝に当たる。
侍従のイオは本を読んでくれる。
僕が外に出たいと泣かないように、全てが整えられている。
温室の中の造られた楽園。
~~シルフィは時々、閉塞感で苦しくなった。
*******************
いつも読んで頂いて、ありがとうございます。
次回からはパルスのお話になります。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
この恋は無双
ぽめた
BL
タリュスティン・マクヴィス。愛称タリュス。十四歳の少年。とてつもない美貌の持ち主だが本人に自覚がなく、よく女の子に間違われて困るなぁ程度の認識で軽率に他人を魅了してしまう顔面兵器。
サークス・イグニシオン。愛称サーク(ただしタリュスにしか呼ばせない)。万年二十五歳の成人男性。世界に四人しかいない白金と呼ばれる称号を持つ優れた魔術師。身分に関係なく他人には態度が悪い。
とある平和な国に居を構え、相棒として共に暮らしていた二人が辿る、比類なき恋の行方は。
*←少し性的な表現を含みます。
苦手な方、15歳未満の方は閲覧を避けてくださいね。
孤独を癒して
星屑
BL
運命の番として出会った2人。
「運命」という言葉がピッタリの出会い方をした、
デロデロに甘やかしたいアルファと、守られるだけじゃないオメガの話。
*不定期更新。
*感想などいただけると励みになります。
*完結は絶対させます!
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
狂わせたのは君なのに
白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! 時間有る時にでも読んでください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる