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ママとパパは駆け落ちだったみたい

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シルフィは、巨大な獣人がママとどこか似た匂いなのに戸惑っていた。

「パルスぅ!パルス、どこ⁉︎」

パルスの気配がしない事に怯えて、鼻をくんと上に向けて匂いを探す。



「王様。実はシルフィ様は目がお見えでは…」

おずおずとした声に、その獣人はにやりと笑った。

さすればロクサーヌのように。ずっとわしの小鳥でおるのじゃな‼︎」

その声が、痛みでぼんやりしていたパルスの頭を打った。


「シルフィを離せ!」

叫びながら巨大な獣人の手に飛びつく。
噛みつきながら後ろ足で蹴りをいれる。



「パルス!パルス‼︎」

シルフィの切羽詰まった声と共に、再び襟首がぎゅっと掴まれて持ち上げられた。
目の前には爛々と燃える金色の目。
獣は猫族の頂点の獅子だ!

怖い。
怖いけど、シルフィが!


ぶんと投げられる。
今度は上手くくるりと回って、壁に蹴りを入れて床に降りた。
思いっきりシャーと牙を剥く。

途端に上から大きな手が湧いて、ぎゅっと押さえつけられた。
手の主は、さっきのライサンダーだ。

騙された!
やっぱり良い人なんかじゃ無い!

めちゃくちゃに暴れようとしたが、首筋をきゅっと押さえつけられて動けない。
自分をよぶシルフィの声が響いてくる。


「鬱陶しい!処分せい!」

獅子が吠え上げた。
その威圧が部屋から吹き荒び、部屋にいる全ての人が尻尾を股にたくしこんだ。

「し、しかし王様。このお子様も、ロクサーヌ様のお産みになった…」

「五月蝿い!穢らしい!」

そう叫んでから、手の中で震えるシルフィを見る。


「おう、大きな声を出してびっくりさせたのぉ。怖かったのぉ。」

ごろごろと雷に似た音が、再び始まる。

「いい子だのぉ。わしとお城に行こうねぇ。」

シルフィの叫びも届かない。



(必ず行くから!必ず行くから!)

ぎゅっと押さえつけられて声が出せずに心の中で叫ぶ。

(大好きシルフィ‼︎必ず助けにいくから!)


「パルスぅ!パルスっ!嫌だぁ!」

にやぁにやぁと叫ぶ声が遠ざかっていく。
獅子は黒いのの処分を念押しして去っていく。


シルフィ。
シルフィ。

涙がぼろぼろと溢れて床の絨毯を濡らした。

ずっと繋がっていた心が、霞んで消えていく。
シルフィが遠くに消えていく。

ざわざわとした気配が遠くなっていく。


守れなかった。
攫われた。
自分の無力さに力が抜けていく。

いつのまにか抑える手は無くなっていたが、力無く転がったままパルスは泣き続けた。
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