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家族になりますね
8 臆病心
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「アルベルト様は、かなり本気でキリル様を想ってらっしゃきますよ。」
真っ直ぐな言葉に固まる。
そう、固まる。
身動き取れずに、動けない。
まるで自分の心のようだ。
手にしているお茶の水面がぶるぶると波立つのに気付いて、キリルはそっとカップを置いた。
「わかってる。視線が熱いからね。
でもそれが愛なのか、ただの欲求不満なのか、わかったもんじゃ無いだろう?」
精一杯気取って。
力を込めて口の端を上げる。
侮って嗤っているように見えて、キリルの目は真剣だ。
『自分の言葉を粉々にして欲しい』と、その目が言っている。縋っている。
「性処理の相手として見ているのなら、砦で同じベッドに入った時に喰われちゃったんじゃ無いですか?」
ガルゼはここで甘えさせる気は無かった。
自分で自分を理解していかないと進めないのだ。
キリルは目を揺らした。
わかってる。
アルベルトは約束を破らない。
そしてキリルの心を優先させてくれる。
わかってる。
わかってるんだ…
「無理だよ。
僕がアルベルトに恋をして。
身も心もアルベルトに捧げて。
自分の一部になってしまって。
もうアルベルトがいないと生きていけなくなった時に… 糸で繋がる相手が現れるかもって思ったら…… 無理だよ…」
ガルゼの口元がきゅっと一文字になった。
「例え結婚した相手がいても。
糸の相手が現れたら心が持ってかれる。
もう、他が見えなくなる…」
「キリル様。何度も申し上げていますでしょう。
糸は愛だけじゃなく。自分の命の深い所で繋がってる物ですからね。それは良い縁だけじゃありませんよ。」
「わかってる。
沢山の悪縁も執着も見た。
でも"憎い"という心でも、その相手しか見えなくなっていくじゃないか。」
そして取り残された者は、泣いて泣いて引き下がるしか無くなるのだ。
卑怯者‼︎
キリルは心の中で叫んだ。
ガルゼの相手は結婚していた。
でも直ぐにガルゼしか見えなくなって、家族を捨てて暴走していった。
ガルゼは葛藤と涙と苦しさでもがいてもがいた。
自分の糸を自分で切った。
そんなガルゼを思いやる事もなく、薄情にぺらぺらと言い訳している。
罪悪感と痛みを思い出させる自分の言い訳の、残酷さに吐き気がしそうだ。
でも。
「アルベルトの目に映らなくなるのが怖い…」
キリルは視線を上げれなかった。
指先が震えている。
ああ、今晩はもう針を持つのは無理だな。
「心を向けるのは怖い…このまま独りで生きてく。
取り残されるのは怖いから…」
暖かい手が、そっと頭に乗った。
やわやわと撫でてくる。
ああ、ガルゼは母様のようだ…
優しく頭を抱き込まれた。
ガルゼの腕の中は安心する。
夜も昼も、どんな時も一緒にいてくれた。
そしてどんな時も自分を捨ててはいかない。
ガルゼの腰に腕を回して、キリルは顔を埋めた。
真っ直ぐな言葉に固まる。
そう、固まる。
身動き取れずに、動けない。
まるで自分の心のようだ。
手にしているお茶の水面がぶるぶると波立つのに気付いて、キリルはそっとカップを置いた。
「わかってる。視線が熱いからね。
でもそれが愛なのか、ただの欲求不満なのか、わかったもんじゃ無いだろう?」
精一杯気取って。
力を込めて口の端を上げる。
侮って嗤っているように見えて、キリルの目は真剣だ。
『自分の言葉を粉々にして欲しい』と、その目が言っている。縋っている。
「性処理の相手として見ているのなら、砦で同じベッドに入った時に喰われちゃったんじゃ無いですか?」
ガルゼはここで甘えさせる気は無かった。
自分で自分を理解していかないと進めないのだ。
キリルは目を揺らした。
わかってる。
アルベルトは約束を破らない。
そしてキリルの心を優先させてくれる。
わかってる。
わかってるんだ…
「無理だよ。
僕がアルベルトに恋をして。
身も心もアルベルトに捧げて。
自分の一部になってしまって。
もうアルベルトがいないと生きていけなくなった時に… 糸で繋がる相手が現れるかもって思ったら…… 無理だよ…」
ガルゼの口元がきゅっと一文字になった。
「例え結婚した相手がいても。
糸の相手が現れたら心が持ってかれる。
もう、他が見えなくなる…」
「キリル様。何度も申し上げていますでしょう。
糸は愛だけじゃなく。自分の命の深い所で繋がってる物ですからね。それは良い縁だけじゃありませんよ。」
「わかってる。
沢山の悪縁も執着も見た。
でも"憎い"という心でも、その相手しか見えなくなっていくじゃないか。」
そして取り残された者は、泣いて泣いて引き下がるしか無くなるのだ。
卑怯者‼︎
キリルは心の中で叫んだ。
ガルゼの相手は結婚していた。
でも直ぐにガルゼしか見えなくなって、家族を捨てて暴走していった。
ガルゼは葛藤と涙と苦しさでもがいてもがいた。
自分の糸を自分で切った。
そんなガルゼを思いやる事もなく、薄情にぺらぺらと言い訳している。
罪悪感と痛みを思い出させる自分の言い訳の、残酷さに吐き気がしそうだ。
でも。
「アルベルトの目に映らなくなるのが怖い…」
キリルは視線を上げれなかった。
指先が震えている。
ああ、今晩はもう針を持つのは無理だな。
「心を向けるのは怖い…このまま独りで生きてく。
取り残されるのは怖いから…」
暖かい手が、そっと頭に乗った。
やわやわと撫でてくる。
ああ、ガルゼは母様のようだ…
優しく頭を抱き込まれた。
ガルゼの腕の中は安心する。
夜も昼も、どんな時も一緒にいてくれた。
そしてどんな時も自分を捨ててはいかない。
ガルゼの腰に腕を回して、キリルは顔を埋めた。
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