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家族になりますね
7 向きあう
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寝入った幼児は周りに熱を放射する。
ルーアのおでこは、汗で湿った髪が張り付いていた。
それをキリルは優しく撫でて引き剥がす。
ちょっと前迄親指をちゅつちゅっと吸っていたのに、もう大の字で緩んだ半開きの口で眠っている。
はじめは抱っこしてくっ付いて眠ってた。
それが三歳を過ぎた頃から、一人で寝るようになった。
むしろキリルに添い寝されるのが恥ずかしいようで、一人で寝んねすると言い張っている。
子供の成長は嬉しいけれど、寂しい。
むちむちとしていた手も、ずんずん大きくなっている。今では縦に伸びているようだ。
ルーアはアニムスだ。
これから雨後の筍のようにぐんぐん成長して、アルベルトの様に美丈夫な男になるんだろうなぁ。
ルーアは着々成長して自立を始めた。
四歳を過ぎた今では、キリルがいなくても泣かなくなった。
もう蝶の間はルーアの部屋になり、付属している控えの間からキリルは出ていた。
キリルは夫夫の主寝室となる部屋の、妻側の部屋を使っている。
毎晩ルーアを寝かしつけてから、自分の部屋へと帰る。
そして針箱を広げて針を持つ。
糸と刺繍はキリルにとってアイデンティティだ。
アレルから来る手紙には、隣国との協定がゆらゆらと動いているのが書いてあった。
民族性なのか、考え方の違いは歩み寄ってい無い。
カリヴァンスも出来るだけの策を考えている。
助けの要請があったら、すぐ出兵するだろう。
隣国ほ我が国の3つの領地と接している。
険しい山岳地帯のおかげで、激しい衝突は起きていない。
隣国は山が連なって、その彼方に草原が伸びている。豊かな自然が充分あるのに。
民族的に農業のように定住する事を良しとしない。
巧みな騎馬で突き進んで、略奪の手柄を良しとする民族だ。
鬼神の様に押し入って、人も物も略奪する。
その王はその部族を力で御せる者だった。
その傍若無人なやり方は、王国が建った途端規律が出来て連携を取る様になり、略奪の規模は拡大している。
小競り合いを繰り返す態度に他国もイラついている。
それでいて、カリヴァンスの前領主への襲撃と言う審尋はのらりくらりと躱して、証拠も消す程に狡猾だった。
ガルゼはキリルの美しい指先が、布に模様を築いていくのを見つめた。
猩猩紅の糸が踊っている。
あんなに赤い糸を嫌っていたのに。
今、針箱の糸はぎっしりと赤く埋め尽くされ。
キリルは毎晩せっせと刺繍をしている。
あの糸を用意したのはガルゼだ。
神殿で聖なる木と呼ばれていたガジュマの樹液を煮詰めて、ミョウバンで色止めして、月の光をたっぷり浴びせた。
月の神ハラーハが紡ぐ人の縁を信じて、"無事に帰ってきますように"と祈りをこめて縫う。
しかもその意匠はハラーハの紋様だ。
糸の用意が出来てから。
キリルは出兵する者達の為にと縫っている。
キリルの力なら、守護する力も跳ね上がるだろう。
それをわかっているキリルは、一人でちまちまと縫う。
例えば包帯にも汗留めにもサポーターにもなるように、長方な布に刺繍をしている。
ガルゼは知っている。
キリルがそれとは別に、アルベルトの為に鎧の下の肌着を縫っているのを。
それを言及しても、『ルーアの為に無事に帰ってもらうようにね。』と答えるだろう。
「キリル様。」
そろそろ休憩を。
と、お茶を出す。
昔から一蓮托生で二人はいた。
二人だけの時は侍従関係では無く友人となっている。
だからはっきりと言える。
「わかっておられますよね。
アルベルト様は、かなり本気で想ってらっしゃいますよ。」
ルーアのおでこは、汗で湿った髪が張り付いていた。
それをキリルは優しく撫でて引き剥がす。
ちょっと前迄親指をちゅつちゅっと吸っていたのに、もう大の字で緩んだ半開きの口で眠っている。
はじめは抱っこしてくっ付いて眠ってた。
それが三歳を過ぎた頃から、一人で寝るようになった。
むしろキリルに添い寝されるのが恥ずかしいようで、一人で寝んねすると言い張っている。
子供の成長は嬉しいけれど、寂しい。
むちむちとしていた手も、ずんずん大きくなっている。今では縦に伸びているようだ。
ルーアはアニムスだ。
これから雨後の筍のようにぐんぐん成長して、アルベルトの様に美丈夫な男になるんだろうなぁ。
ルーアは着々成長して自立を始めた。
四歳を過ぎた今では、キリルがいなくても泣かなくなった。
もう蝶の間はルーアの部屋になり、付属している控えの間からキリルは出ていた。
キリルは夫夫の主寝室となる部屋の、妻側の部屋を使っている。
毎晩ルーアを寝かしつけてから、自分の部屋へと帰る。
そして針箱を広げて針を持つ。
糸と刺繍はキリルにとってアイデンティティだ。
アレルから来る手紙には、隣国との協定がゆらゆらと動いているのが書いてあった。
民族性なのか、考え方の違いは歩み寄ってい無い。
カリヴァンスも出来るだけの策を考えている。
助けの要請があったら、すぐ出兵するだろう。
隣国ほ我が国の3つの領地と接している。
険しい山岳地帯のおかげで、激しい衝突は起きていない。
隣国は山が連なって、その彼方に草原が伸びている。豊かな自然が充分あるのに。
民族的に農業のように定住する事を良しとしない。
巧みな騎馬で突き進んで、略奪の手柄を良しとする民族だ。
鬼神の様に押し入って、人も物も略奪する。
その王はその部族を力で御せる者だった。
その傍若無人なやり方は、王国が建った途端規律が出来て連携を取る様になり、略奪の規模は拡大している。
小競り合いを繰り返す態度に他国もイラついている。
それでいて、カリヴァンスの前領主への襲撃と言う審尋はのらりくらりと躱して、証拠も消す程に狡猾だった。
ガルゼはキリルの美しい指先が、布に模様を築いていくのを見つめた。
猩猩紅の糸が踊っている。
あんなに赤い糸を嫌っていたのに。
今、針箱の糸はぎっしりと赤く埋め尽くされ。
キリルは毎晩せっせと刺繍をしている。
あの糸を用意したのはガルゼだ。
神殿で聖なる木と呼ばれていたガジュマの樹液を煮詰めて、ミョウバンで色止めして、月の光をたっぷり浴びせた。
月の神ハラーハが紡ぐ人の縁を信じて、"無事に帰ってきますように"と祈りをこめて縫う。
しかもその意匠はハラーハの紋様だ。
糸の用意が出来てから。
キリルは出兵する者達の為にと縫っている。
キリルの力なら、守護する力も跳ね上がるだろう。
それをわかっているキリルは、一人でちまちまと縫う。
例えば包帯にも汗留めにもサポーターにもなるように、長方な布に刺繍をしている。
ガルゼは知っている。
キリルがそれとは別に、アルベルトの為に鎧の下の肌着を縫っているのを。
それを言及しても、『ルーアの為に無事に帰ってもらうようにね。』と答えるだろう。
「キリル様。」
そろそろ休憩を。
と、お茶を出す。
昔から一蓮托生で二人はいた。
二人だけの時は侍従関係では無く友人となっている。
だからはっきりと言える。
「わかっておられますよね。
アルベルト様は、かなり本気で想ってらっしゃいますよ。」
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