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領地の暮らし
3 勝利の駆け引き
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合図と共に二頭は爆走した。
アルベルトがひひんと走る。
ちっくしょう!負けるもんか‼︎
スライドの違いでキリルは小刻みに足を動かす。
大喜びのルーアの甲高い笑い声が弾ける。
"何か始まった"と聞きつけた使用人は、四つ足の主人にへひっと絶句し、邪魔にならない様に素早く壁に張り付いた。
縦揺れになった左右の腰骨に揺られて、手を滑らせたルーアがとっさにアルベルトの髪を掴む。
痛っ‼︎
叫びが上がった。
その隙にキリルは抜き去った。
それが面白くてルーアの足がぱたぱた跳ねる。
笑い声が対抗心を煽っていく。
ちっくしょおっ‼︎
アルベルトは鍛えた上腕に力を入れて、床に掌を叩いて突き放した。
俺は現役で戦っているのだ!
負けるわけにはいかない‼︎
二頭は廊下を疾走した。
「キリル様ぁーっ‼︎」
「アルベルト様ーっ!」
歓声が届いて力が入る。
負けないぞっ!
キリルが横目で見ると、もう並んでいるアルベルトと目が合った。
マジだ。
マジな目だ。
擦れた膝が痛い。
付いた掌は、少しでも速く進めるように叩き付けている。
隣のアルベルトの気配がぐんぐんと迫ってくる。
ちぃくしょおっ‼︎
ルーアを乗せているのに、逃げ勝つつもりか!
アニマとアニムスの体力の違いを見せつけられてるようで、ムカつく。
歯を食いしばって四つ足で走る。
廊下の途中で現れる従者は、ひやっ、と驚いて壁に張り付く。
まだまだ負けないぞっ!
擦り抜けたアルベルトの肩を睨みつけながら、キリルは必死で後を追った。
負けた。
腹立つ。
「負けましたぁ。凄いですねぇ。これからもルーアの馬をよろしくお願いしますね♡」
負けを潔く認めて、キリルは相手を褒め称えた。
ほら、ちゃんとした大人だから。
そうしつつも、ドヤ顔のアルベルトにすかさず仕事を振ってやった。
アルベルトは得意絶頂の世界で気づいていない。
くすっ。脳筋野郎め。
内心で舌を出したところで、夏空の様なアルベルトの目と合う。
火花の様な視線の応酬に、アルベルトはにんまりと笑った。
そしてルーアを抱き上げると「楽しかったか?」と聞いた。
「そう言えば、この勝負の景品を決めていなかったな」
あ、気づいてたんかい!
満更脳味噌が筋肉だけに行ってるわけじゃ無いんだ…と、妙な感心をしていると
「ルーアは何がいいかな?」
え?と、二度見するような凄く優しい声できいた。
そしてルーアのぷっくりしたほっぺにちゅっとキスした。
「え…っと、え…っとぉ」
考えていたルーアはちゅっ♡という音に、くすぐったそうにきゃっと笑った。
その目が遠い憧憬を辿る様に、ほわっと滲んで少し細められたのをキリルは見逃さなかった。
ルーアの青空が滲んで、そしてアルベルトを切なそうに見返す。
「あのね。父様と母様はいつもちゅうしてたの。ちゅうして。ママとパパもちゅうして。」
おいおいおい。
アルベルトの目がふふふん。と言ってる。
的確に嫌がる所を突いてきたな。
脳筋野郎だと思ってたら、とんだ策士だったってわけかい!
まぁ、ルーアが"仲良し夫夫"で幸せになるなら。
いつでもちゅうでもハグでもするけどなっ!
アルベルトがひひんと走る。
ちっくしょう!負けるもんか‼︎
スライドの違いでキリルは小刻みに足を動かす。
大喜びのルーアの甲高い笑い声が弾ける。
"何か始まった"と聞きつけた使用人は、四つ足の主人にへひっと絶句し、邪魔にならない様に素早く壁に張り付いた。
縦揺れになった左右の腰骨に揺られて、手を滑らせたルーアがとっさにアルベルトの髪を掴む。
痛っ‼︎
叫びが上がった。
その隙にキリルは抜き去った。
それが面白くてルーアの足がぱたぱた跳ねる。
笑い声が対抗心を煽っていく。
ちっくしょおっ‼︎
アルベルトは鍛えた上腕に力を入れて、床に掌を叩いて突き放した。
俺は現役で戦っているのだ!
負けるわけにはいかない‼︎
二頭は廊下を疾走した。
「キリル様ぁーっ‼︎」
「アルベルト様ーっ!」
歓声が届いて力が入る。
負けないぞっ!
キリルが横目で見ると、もう並んでいるアルベルトと目が合った。
マジだ。
マジな目だ。
擦れた膝が痛い。
付いた掌は、少しでも速く進めるように叩き付けている。
隣のアルベルトの気配がぐんぐんと迫ってくる。
ちぃくしょおっ‼︎
ルーアを乗せているのに、逃げ勝つつもりか!
アニマとアニムスの体力の違いを見せつけられてるようで、ムカつく。
歯を食いしばって四つ足で走る。
廊下の途中で現れる従者は、ひやっ、と驚いて壁に張り付く。
まだまだ負けないぞっ!
擦り抜けたアルベルトの肩を睨みつけながら、キリルは必死で後を追った。
負けた。
腹立つ。
「負けましたぁ。凄いですねぇ。これからもルーアの馬をよろしくお願いしますね♡」
負けを潔く認めて、キリルは相手を褒め称えた。
ほら、ちゃんとした大人だから。
そうしつつも、ドヤ顔のアルベルトにすかさず仕事を振ってやった。
アルベルトは得意絶頂の世界で気づいていない。
くすっ。脳筋野郎め。
内心で舌を出したところで、夏空の様なアルベルトの目と合う。
火花の様な視線の応酬に、アルベルトはにんまりと笑った。
そしてルーアを抱き上げると「楽しかったか?」と聞いた。
「そう言えば、この勝負の景品を決めていなかったな」
あ、気づいてたんかい!
満更脳味噌が筋肉だけに行ってるわけじゃ無いんだ…と、妙な感心をしていると
「ルーアは何がいいかな?」
え?と、二度見するような凄く優しい声できいた。
そしてルーアのぷっくりしたほっぺにちゅっとキスした。
「え…っと、え…っとぉ」
考えていたルーアはちゅっ♡という音に、くすぐったそうにきゃっと笑った。
その目が遠い憧憬を辿る様に、ほわっと滲んで少し細められたのをキリルは見逃さなかった。
ルーアの青空が滲んで、そしてアルベルトを切なそうに見返す。
「あのね。父様と母様はいつもちゅうしてたの。ちゅうして。ママとパパもちゅうして。」
おいおいおい。
アルベルトの目がふふふん。と言ってる。
的確に嫌がる所を突いてきたな。
脳筋野郎だと思ってたら、とんだ策士だったってわけかい!
まぁ、ルーアが"仲良し夫夫"で幸せになるなら。
いつでもちゅうでもハグでもするけどなっ!
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