【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら

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城での生活

7 壁ドンからの

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正門の跳ね橋が上がる雷鳴が響いた。
その音を聞きながら、そっとルーアの耳から手を離す。お昼寝中のルーアを脅かさないように、慌てて耳に蓋をしたのだ。

時間を考えながら階段を降りた。
アルベルトの帰城だ。
ヤル気満々なキリルを止める者はいない。



玄関の出迎えの使用人の前にキリルが立っていた。
遠くからでもなんか明るく見えるので、すぐわかった。
「おかえりなさいませ」という笑顔は蝋燭を100本灯したように眩い。

アルベルトは何かを感じ取った。
いわゆる虫の知らせ。あるいは悪い予感。
行きたくねぇ‼︎と、心が叫んだ。
それでも誘蛾灯の様な笑顔にふらふらと近づく。

おかえりなさいませ。の挨拶の後。
玄関ホールに入ると、家令がすっと片手を挙げて人がさささっと散っていく。

あ、あれ?
いつもは見ない使用人達の後姿に、アルベルトはキョトンとした目を向け、そしてキリルを見た。


キリルが大きくなっている⁉︎

いや、遠近法のせいだ。
何故か出迎えに立っていた位置からずんずんと真っ直ぐに向かってくる。

頭の中で危険信号が点滅したが、"逃げたら負け!"と、自分を鼓舞した。

ぐっと胸を逸らしたアルベルトは、とても凛々しくてかっこよかった。
そのアニムスの見本のようなイケメンっぷりに、キリルはなんかむかっとした。



「今日。ビーチェ様がいらっしゃいました」

その笑顔の裏で、アルベルトはキリルが正面突破するほどに憤っていることを悟った。
つまらん。ただのアニマの嫉妬の闘いか。

「自分の愛人を御すくらい。自分でなさって下さいませ。」(迷惑かけんじゃねーよ)

「あれは愛人などでは無い。
手さえ握った事も無いぞ。」

嫉妬合戦だと思っているのが見え見えだ。
面倒くさそうな自己弁護の言葉は、ふうん。
というドスの効いた返事にかき消された。

「それでは何故、好き勝手にさせていたのですか?望む部屋をわざわざ空けてまで」


つん。


キリルの人差し指がアルベルトの秘孔をついた。
コレで3年後に死亡する… なんて訳は無く。

押し出す様に、アルベルトの心臓の近くを突く。

ゔ。 と、一歩さがるアルベルト。

「我が物顔で城にいたのはご存知でしたよね」



つん。


突かれて一歩下がる。
バスチャンは遠くでうんうんと頷いている。
何度も何度も進言したのだ。

「服に宝石。請求書を回せば全部ダダ!」



つん。


「そのお金が、どこから出てるかお分かりですよね」


つん。


「税です。
必死で真面目に働いた者の税が、愛人でも無い者の宝石になってた。って仰るんですかぁ」


つん。


キリルのつんは筋金入りだ。
痛点を見事に一点集中している。
訳の分からないその物理的痛みは、正論な言葉で追い詰めることを相乗効果にしてぐんぐん来る。

つんされる度にアルベルトは後ずさっていた。

「放置しとけば王都からやってくる伴侶候補を追い返してくれるし。って、甘く考えてましたよね。ああいう人間は、調子に乗っていくってわかってましたよね。」



つん。


ぐっと下がったアルベルトは、自分の踵が壁にガツンと当たった事を知った。
もう下がれない⁉︎


「ばっかじゃ無いのおっ!」

キリルが叫びながら。
自分の頭の横にべちょんと手を着いたのが同時だった。


~~これ、壁ドンって奴⁉︎




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