【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら

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城での生活

5 勝利は骨の髄まで叩き込む

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キリルはぱっと手を離した。

たたらを踏んだビーチェは、その勢いでネプラの胸に飛び込む。

立派です。
腕を背中に捩じ上げられても、闘う気力が衰えて無かった事に、賞賛を禁じ得ません。

ネプラは喚くビーチェを、慣れているのか抱く様にぐっと拘束した。
赤い糸が弛みもせずに重なる。
見事に二人の赤が蝶々結びに重なる。

ちくしょう‼︎


キリルはゆっくりと片手を胸の前に当て、片足を引いて礼をした。軸がブレない美しい礼だ。

「私はファンドール公爵家から参りました、キリルと申します。」

「こ、公爵ぅ!?」

「はい。アルベルト様に是非にと請われまして」

嘘じゃないよん。
この婚姻の設定は"一目惚れ"さ。

ビーチェの怒りで真っ赤だった顔からすっと色が抜けていく。
ふうん。 伯爵家より公爵家は偉い。
そんな常識あるんだ。

「悩んでおりましたら、国王からも請われまして。ルーア様の母親になる為にやって参りました」

ルーア様の
わかるよね?
それがどういう事だか。

「もう、アルベルト様ったら、いそいそと婚姻の書類を用意されてましたのよ♡」

もう熱烈でこまっちゃうぅ♡と、まるで他意が無さそうに、小首を傾げるのは得意。
むっちゃ得意です。
ついでに天使と言われる笑顔をむける。
コレで面倒臭い奴は大概煙にまけるのさ。

「おかげでもう夫夫としてこの城の鍵も頂いておりますの。」

にっこり。
よりも、にんまり。

母親、婚姻の書類、鍵。

脳味噌に沁みるようにちょっと時間をとる。
オッケー?
ここまで了解した?
まだまだあるよ?

さあて、僕が鍵を持ってる城に、"侵入した"ってわかってくれちゃった?

あ、フルフルしてるビーチェにもう一つ毒を投げなくちゃ。

「ルーア様は前の領主のお子様。そして次期領主として承認されてアルベルト様の養子となっております。」

堂々と「叩き出した」なんて言われてもねぇ。

でも、「え?」とキョトンと飲み込めてないみたい。
持って回ったいい方だから?
ストレートに言わないとダメなのか?
ある意味面倒くさい。
考えろ!頭をつかえよっ‼︎


「次の領主はルーア様と決まっております」

分かってます?
それを叩き出して泣かしたと知ったら、ご実家は大変でしょうねぇ。
あ、それはとしての触れ合いとでも誤魔化しが出来るかしら。

でもね、私の実家(公爵家って言うんだけど)は序列にちょっとうるさくて。
あ、そう言えば。
王様も子供を虐めるひとには苛烈なタイプだったわねぇ。
あら、ちょっとどうなっちゃうのかわかんないわぁ。

てへ♡ と他意が無さそうに笑顔のまま。
そのぼんやりした脳味噌に一撃二撃と叩き込む。



つ・ま・り

「愛人としてのおねだりやあれやこれやは、城の外で本人同志でお願いしますね。
にいきなりやって来られても、城門をお開けする事は御座いません」

いちゃつくのは外。
ここにあんたの部屋は無い。
いきなり来るんじゃ無いぞ‼︎
お前らがルーアを叩いたのは、ぜってぇ忘れないからなっ!って、事です。

笑顔のまま目の奥に圧を込める。
山奥の修行の時に獲物を狩って来た殺意のある奴だ


もとより白くなっていたネプラも。
気の強さだけで、何の根拠も無かったビーチェも。

白目を剥かんばかりにガタブルしたから
「は~い!おかえりだよぉ♡」
と、従者達に荷物を運ばせた。


「こんな失礼な家。二度と来てやらないからね‼︎」

「はぁい♡了解でぇ~す‼︎」


捨て台詞を残すのは敗者のお約束。
勝ちました。
キャットファイトは勝ちました。

ふと見ると、もうスタンディングオベーション。
残った皆んなが拍手してくれてます。

うん。
あいつ、嫌われてたんだね。
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