【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら

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城での生活

3 不埒者

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従者を抜き去って走る。
ナルディアの山奥を駆け回っていた足腰は強い。
裾を乱さずにキリルとガルゼは庭を駆け抜けた。


あーっ
と、いう幼い声が上がった。

ルーア‼︎

目配せと同時に、ガルゼは風も起こさずに消えていく。

甲高い声と泣き声が上がる。

キリルは二段抜かしで階段を駆け上がりながら三階に駆け込む。
蝶の間でガルゼが不埒者を床に拘束していた。
その近くで床に座り込むルーアが目を見開いている。

「ルーっ‼︎」
慌てて駆け寄って抱き上げると、小さな身体がうっうっと震えて、あ~ と、声が上がった。

ちゅっとほっぺにキスを落とす。
ちゅっと耳にキスを落とす。
その間も背中に回した手はとんとんして、口は
「いい子だね。もう大丈夫だよ。」を、繰り返す。

ちらりと見ると床に金髪をばら撒いた細身の男が、腕を背中捻り上げられていた。
ガルゼは片膝を床に付き、その男のキラキラした紫色の袖を固めている。

男は甲高い声で叫びあがり、その向こうでオロオロとするフロットコートをまだ脱いでもいない男がいた。

~~あのフロットコート、見たことがある。
確か学園で一時期キリルに纒わってた奴だ。
男爵家の三男で爵位は貰えそうに無いから、いい婿入り先を探してた。確か名前は…

「何すんだよっ!痛いっ‼︎早く離せよ!
僕が誰だかわかってんのっ。お前なんかクビだぞぉ」

甲高い声は耳が痛い。

僕が誰かとか… 知らんがな。


とりあえず。

万が一。

この金髪がアルベルトの糸が繋がる相手なら。
面倒くさいのでゆっくりと視る。

その金髪の糸は、おろおろした男とピッタリと繋がって、うっふんあっはんと絡みあっていた。

なんだよぉ。
カップルじゃん。
相手がいるじゃん。

(いいなぁ。ちくしょう。)
よその男にちょっかい出すなよな‼︎


ルーアをとんとんとしながら揺すり上げる。
泣き声は小さくなって、途切れ途切れになっていって、その金髪の声だけが耳をつんざく。

「ここは僕の部屋だぞぉ!
なんでこんなガキがいるんだよぉ!」


部屋の入り口にいる執事長と目が合った。
キリルの目を見てぶんぶんと首を振る。

ふ~~ん。

キリルは落ち着いたルーアにお水を飲もうね、と従者に託す。
だってここにいたら僕が怖い人だとわかっちゃうからね♡

キリルは叩き込まれた貴族スマイルで、美しい笑顔をフロットコートに向けた。

「ネプラ様。お久しぶりで御座います。
これはどういうことで御座いましょう?」

ネプラ。そんな名だったな。

ネプラはキリルを見て。
ギョッとして、見た。
~~はい、二度見という奴ですね。

そうのキリルをその脳味噌に刻んでくれたらしいので、さらに笑をキラキラさせる。

にいきなりいらっしゃって、を泣かせたのはいったいどういう訳で御座いますの?」

「え、え?キリル様の家⁇」

ネプラのおろおろが強くなる。

「はぁ⁉︎ナニ言ってんのぉ!お前は誰さぁ」

床に半分顔を付けているのに、金髪は叫ぶ。

「ここは僕の部屋だ!
勝手に子供が寝てたから叩き出してやったんだよっ」

……叩き出した……

キリルはぴきりと固まった。


怒です。
怒がごごごごっと波打ってます。



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