上 下
14 / 59
城での生活

1 ファーストコンタクト

しおりを挟む
目の高さになる様に床に座った。
そりゃ、もう‼︎
全身全霊心を込めて、にっこりした。
そして緩く両腕を広げる。

ソレは幼児のDNAに刻まれている、抱っこするのを待ってますよ♡のポーズだ。
嫌じゃなかったら飛び込んできてね♡のポーズ。

ルーアの青空がゆらゆら揺れる。
…ふっふっふ、悩んでいる。
悩んでいるなっ。

キリルはじっと待った。
幼児と猫は焦ってはいけない。
無害だと分かったら、近寄ってくるのだ。
そしてこのファーストコンタクトは大事!
後々にまで影響する。

もぞもぞと布の中から小さな手が見えて来た。
そろりそろりと出て来るのをまつ。
~そうして、程なくルーアが腕に収まった。



城は三階がプライベートフロアになっている。
ベビールームは主寝室の隣にあった。
アルベルトはどうも三階を使わずに一階の夜会の控えの間に巣を作っているようだ。


キリルは契約書を何度も読み込んでサインした。
これで名実ともに夫夫だ。
ちなみにルーアを抱っこしたままだ。

サインを終えて、アルベルトは足取り軽く巡回にいった。
そうして執事長に案内されるままに城を歩く。
ちなみにルーアを抱っこしている。

言っておくが非力と言われるアニマだって、24時間幼児を抱える力はあるのだ。
たとえ重くて泣きそうでも、出会ったばかりの幼児と猫は、相手が満足して離れるまで抱っこで抱っこの抱っこするのが基本だ。
腕はぷるぷるしているが、根性!だ。
従うガルゼはわかっているので何も言わない。


吹き抜けのある玄関ホール。
大広間も晩餐室も、いざとなったら傷病者を受け入れられるように。そして家具もバリケードを作れるように無骨だ。
合理的だと答えると、驚かれた。

王都の令息はその無骨さを田舎臭いと言うと言う。
馬鹿だろう‼︎
見てくれより命が大事。これ基本ね。


山が近いお陰で地下水が豊富だから、部屋には小さなバス・トイレが付いている。
もちろん大きな浴場もある。
王都なぞ、ベッド脇に壺が置いてある屋敷もあった。
ここと王都。
どっちが衛生的に上なのかは丸わかりだ。

使用人は王都では屋根裏に詰め込んでたりする。
ここでは別棟で男・女・家族となってるそうだ。
もちろんバス・トイレ付きで。
それは有事には開放されるそうだ。

ベビールームはふわふわしたユニコーンやくまちゃんの壁紙だった。
ちょっと赤ちゃんすぎやしませんか。
そろそろ興味あるものって…

キリルは鍵持ちなので全ての部屋を案内される。

南側に面する扉を開けると、薄暗い踏み込みを抜けると、陽射しの降り注ぐ明るさにめが眩んだ。

「あぁ!」

ルーアが腕の中でバウンドした。

「ちょう、ちょうちょう‼︎」

そこは大きな部屋だった。主寝室より大きい。
控えの間も二つつき、洗面所もある。
でも何より。

うすいマカロングリーンの壁紙には、鮮やかな蝶が一面に舞っていた。
柔らかな新芽を思わせるグリーンのカーペットには、
デイジー、キンポウゲ、チゴユリ、ヒナゲシ、ヘビイチゴと、いろんな野の花が咲いている。

キリルの腕から滑り降りたルーアが、蝶を追ってとたとたと歩くのをキリルはデレっと見惚れた。
野原の花園にいるようだ。
日当たりも良くてルーアも楽しそうだし。

「ここを子供部屋にします。
慣れるまでは控えの間に僕もいますから。」

貴族は子供を乳幼児から一人にして育てるべき、というクラリス育児法ってぇのが主流だけどキリルは反対だ。
アレルを育てて実感した。
子供は抱っこするものだ。
(決して怪しい意味じゃ無い)
一緒にベッドで寝るものだ。
(言っとくが不埒な意味では無い)


付いて歩いていた従者が、ちょっと息をのんだ。
何か言おうと口を開けたの、執事長がすっと押し止める。

「かしこまりました。ここは"蝶の間"と申しまして、前の奥様が嫁いでいらした時に設られた部屋でございます。そのお子様のルーア様にぴったりと存じます。」

……なんか封じましたよね。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

ギャルゲー主人公に狙われてます

白兪
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。 自分の役割は主人公の親友ポジ ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、

狂わせたのは君なのに

白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

王子様から逃げられない!

白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

断罪だとか求婚だとかって、勝手に振り回してくれちゃってるけど。僕はただただ猫を撫でたい。

たまとら
BL
じいちゃんに育てられたリラク。 なんか、ちょっと違うみたいだ。

甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?

秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。 蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。 絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された 「僕と手を組まない?」 その手をとったことがすべての始まり。 気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。 王子×大学生 ――――――――― ※男性も妊娠できる世界となっています

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

処理中です...