恋するじゃがいもと、先輩とボケナス

たまとら

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学園生活

2 今までの暮らし

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ルインの家は【辺境】という枕詞どころか正式名称に付くほどのど田舎だ。
国境の山岳沿いに細長く、王国を護るように領地はある。

王国は王都を中心に街道が張り巡らされている。物流を廻すためだ。
このアルヴィン辺境領にも、軍事馬車というデカくて重いのがすれ違える程に立派な街道が通っているが、国境の山の山頂付近で途切れている。他の領地の街道はそのまま他国へと続いているのにだ。

つまり、この山の向こうはでは無いという事だ。

アルヴィン辺境伯の領民達は思う。
もし向こうが他国なら、ブラックなオーバーワークにならないだろうにと。
国境侵犯した他国のワルどもを叩きのめすだけでいい、楽しい簡単な定時上がりも夢じゃ無い仕事になるハズだと。
こんな24時間ワーカーホリックと陰口を叩かれて、あの領行ったら苦労するからと嫁の来ても無い様な羽目になる事は無いだろうにと。

山の頂きの向こうは他国では無く、鬱蒼とした森だった。
なんか長くてありがたい名前があるが、人は恐れて"森"と呼んでいた。
周辺国で不可侵条約が結ばれている領土の空白地帯だ。

『かつてここに神の国があったが七日七晩で消えた』そんな伝説がある。
周辺国にも多少違っても異口同音の伝説が残っていた。
それは『触らぬ神に祟り無し』『臭い物に蓋をしろ』『好奇心は猫をも殺す』などなど。
実際昔には行軍した国が幾つか潰れ、いつしかそこは地図で"森"となった。

森の魔素は濃い。
魔力の少ない者が近づくと血反吐を吐いてのたうつほどに濃い。
魔力を循環させて魔法として撃ち出すことで、やっと立っていられるほどに濃い。
しかも魔素溜まりは澱んで、瘴気へと変容してそこから魔獣が沸いてくる。

魔獣は人を襲う。
人の魔力を喰えば苦痛が治るからだと伝えられている。
そんな人喰い魔獣を狩って領民や国民を守るのがアルヴィン辺境伯の仕事だった。


瘴気を取り込んで変容したのが魔獣なら、魔素を取り込んで進化したのがアルヴィン家だと、ルインは密かに思っている。
だって父も長兄も次兄も三男のウルク兄様も巨人族ですかぁ?ってくらいデカいのだ。
ばばばんとした筋肉で、腹立つ程にマッチョなイエメンなのだ。

母様は華奢で綺麗で妖精みたいだが、嫁いで来たから系統が違っても理解できる。
でもルインはアルヴィン家特有の赤銅色の髪と緑の目をした生粋のアルヴィンっ子なのに、どういう訳かちんまりしている。

かっちょいいウルク兄様目指して頑張ってみたけど、剣の素養はまるきりなかった。
魔力は潤沢なのに、戦いに使える攻撃方面の能力はまるきり無い。それこそ雑巾の様にぎゅっと絞っても一滴も出そうに無かった。
"剣に炎を纏わせる"という兄様みたいなかっちょいいものが出来ない。
でも"ふるいに魔力を流して粉砕してふかふかな土にする"のは簡単だった。
そんな訳でルインは農業方面に生きようと、よわい5歳で決めていた。



つまりルインにとって学園で畑と出会うことは望外の喜びというやつだった。

「ここは園芸部なんだけど人手が足りないから、入学までの空き時間に良かったら来てね」

そんなシグルド先輩の誘いに勿論と拳を握った。
翌朝作業着と長靴で現れたルインに、全員が驚いたのは言うまでも無い。

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