囚われの斎王は快楽に溺れる  竜と神話の王国

たまとら

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女神の血脈

27 心の傷と恋心

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「首の擦過傷とみぞおちに殴られた痕があったよ。あとあちこちに歯型。……ん。良かったね、貞操は無事だった。」

デネブは眠るネティの横でアキラに告げる。


ホルスがネティが出掛けたと言った。
密かに付いている護衛も一緒だからと気を抜いていた。

あの市場でのおやじから念話が入ったのは、割とすぐだった。

ネティが攫われた。

奴隷狩りのアジトを見つけたけれどネティは見えず、慌てて走り回った。
倉庫街の端に、異様な結界が張ってあった。
とても強固で破るのに時間がかかった。

アキラは両手で顔を覆う。

気を抜いていた。
護衛の奴らも自分も。
ゼオライトの手ばかり用心して、奴隷狩りのヤクザの事を考えてもいなかった。

抱き上げたネティの軽さが浮かぶ。
ぶるぶる震えて気を失った。
首にはあんな物つけられて。

怒りが湧き上がって押さえられない。

「アキラ、病室を出なさい。」
デネブがきっぱり告げる。

「そんな物騒な気を撒き散らして、ネティが安心出来るはずないだろう。
脳筋らしく森の中を暴れ回って、念話をくれた人にお礼を言って、心配してる人に大丈夫って挨拶に行ってこい。」

言い訳も出来ずに追い出された。
こんな時、俺は何も出来ない。
いらいらひりひりするしか出来ない。
せめて発散する為に裏山へと走り出した。


俺はバカだけどこの気持ちが何なのかわかってる。
俺はネティが好きだ。
初めて見たとき、背中だったけどあの時から。
俺はネティを守りたい。
ネティが欲しい。
ネティが笑っていられるようにしたい。

鬼気迫る勢いで走り込みながら、アキラは考えていた。



目が覚めたネティは、クリーンで綺麗にしたのにも関わらず、ふらつく足でシャワーを浴びた。
長い時間かけてシャワーで洗った。

出て来た時は腫れた目をして微笑んだ。
ありがとうございます。と皆んなに言った。
無事で良かったと言われて、おかげ様でと笑った。



あれからネティは変わらずに過ごしている。
笑顔で喋り、竜の世話をする。

ただ夜、竜の運動場を徘徊する。
竜達はそんなネティをじっと見守り、アキラは竜舎の陰から見守る。
明方近くまで歩くと部屋に帰り、静かになる。
ホルスは寝てると言う。
でも目の下の隈が濃くなるばかりだ。




「あの子、奴隷狩りに捕まったんですって」

華やかな衣装からの声に、竜の運動場にいた全てがぴくりとする。

「やあね、何されたのかしら。」

「汚らわしいわ。」

もっと言い募ろうとした令嬢達の衣装がごうっと熱い風邪でめくれた。
きやあっと声を上げてうずくまる彼女達の前にアキラが立っていた。

「いいか、その汚い口を閉じていろ。」

熱い炎のように噴き上げながら、口調は氷のように冷たい。

「今度そのツラを見せたら、2度と喋れないようにしてやる。」


大丈夫、そんな怒らないで。
と、言おうとしたのに、ネティは込み上げる吐き気でしゃがみこんでしまった。
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