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結局、田舎で我に帰る

43 対する

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血の匂いが強烈に湧いてくる。
うめき声は途切れ途切れだ。

早く血を止めなくては‼︎

ルツはばさりと立ち上がると、急いで表の扉に向かった。

蹴り飛ばすように扉を開ける。

田舎の家には鍵が無い。


ばん‼︎
と、開いた扉に。
部屋の人間は、ぎょっとして振り向いた。

「ルツ⁉︎」

じいサマの驚愕の声よりも。
ルツは怒りでずんずん入ると、金貨を前に突き出した。

「足りないと言ってた税金分の金貨は用意した。
ここから出て行ってもらおう‼︎」

シュベツは飛び出すかと思える程に目を見開いて、いきなり現れた森人を凝視した。
そして、現れたのがルツだと認識して、にやりと笑った。

「へぇ。やっぱり化けてやがったな」


銀糸が小さな顔を美しく浮かび上がらせている。
怒りに燃えたエメラルドグリーンの瞳は、中に火花の様に金粉を散らしてこちらを見ている。
頬は上気して桃色で。
唇もふっくりと花弁のようだ。

これがルツ。
いつも薄黄色くぼんやりと見せていた中に、こんな美しい姿を隠していたのか。


シュベツはべろりと舌で唇を舐めた。

ぞくぞくする。
こいつは高く売れる。
ザナよりも若く、美しい。
でも売る前にさんざんいたぶって、泣かしてやる。



突き出された金貨を受け取って、手のひらの上で数える。
10枚。
馬鹿馬鹿しい。
そんなはした金。
こいつを前にそんなものどうでもいい。

ルツの乱入に口をあんぐり開けていた徴税役人に、その金貨を渡す。
コイツは役に立たない。
男1人を刺したくらいで、びびってやがる。

「確かに10枚」

「さぁ、じいサマを解放しろ。
村長も手当てしないといけない!」

真っ直ぐに言い募るルツが眩しくて、癪に触る。
早く泣かせたい。

「いやぁ。この金はあんた達の生活費に回しますよぉ。客を採る為の服だって、森人だったらせめてシルクを用意しないとねぇ」

「はぁ⁇」

踏み出そうとしたルツに、シュベツは営業用の笑みを見せた。

「ルツ、逃げ……」

ザナの声はすぐに途切れた。
身動きしないまま、口を魚の様に大きく開いてはくはくしている。
ザナは声が出せなかった。
その首には鈍く黒光りの首輪がある。

にやにやとシュベツは、椅子に人形のように座るザナの首輪を指で摩った。


「ど、どうする…隷属の首輪は一つしか手に入らなかったぞ…」

おろおろと手を揉みしだく小太りの役人に、シュベツの笑は崩れない。

「大丈夫ですよ、旦那。
ザナはこっちのモンですから。」

腰のベルトに留めていたナイフを抜き取ると、焦らすようにザナの目の前で見せびらかす。

「ザナを置いて逃げられる訳がねぇ。
このまま二匹とも、こっちのモンでさぁ」



‼︎

その言葉を聞いて。
ルツは怒りで目眩がした。

その怒りのままに、足元から植物達に力を叩きつけた。


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