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結局、田舎で我に帰る
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血の匂いが強烈に湧いてくる。
うめき声は途切れ途切れだ。
早く血を止めなくては‼︎
ルツはばさりと立ち上がると、急いで表の扉に向かった。
蹴り飛ばすように扉を開ける。
田舎の家には鍵が無い。
ばん‼︎
と、開いた扉に。
部屋の人間は、ぎょっとして振り向いた。
「ルツ⁉︎」
じいサマの驚愕の声よりも。
ルツは怒りでずんずん入ると、金貨を前に突き出した。
「足りないと言ってた税金分の金貨は用意した。
ここから出て行ってもらおう‼︎」
シュベツは飛び出すかと思える程に目を見開いて、いきなり現れた森人を凝視した。
そして、現れたのがルツだと認識して、にやりと笑った。
「へぇ。やっぱり化けてやがったな」
銀糸が小さな顔を美しく浮かび上がらせている。
怒りに燃えたエメラルドグリーンの瞳は、中に火花の様に金粉を散らしてこちらを見ている。
頬は上気して桃色で。
唇もふっくりと花弁のようだ。
これがルツ。
いつも薄黄色くぼんやりと見せていた中に、こんな美しい姿を隠していたのか。
シュベツはべろりと舌で唇を舐めた。
ぞくぞくする。
こいつは高く売れる。
ザナよりも若く、美しい。
でも売る前にさんざんいたぶって、泣かしてやる。
突き出された金貨を受け取って、手のひらの上で数える。
10枚。
馬鹿馬鹿しい。
そんなはした金。
こいつを前にそんなものどうでもいい。
ルツの乱入に口をあんぐり開けていた徴税役人に、その金貨を渡す。
コイツは役に立たない。
男1人を刺したくらいで、びびってやがる。
「確かに10枚」
「さぁ、じいサマを解放しろ。
村長も手当てしないといけない!」
真っ直ぐに言い募るルツが眩しくて、癪に触る。
早く泣かせたい。
「いやぁ。この金はあんた達の生活費に回しますよぉ。客を採る為の服だって、森人だったらせめてシルクを用意しないとねぇ」
「はぁ⁇」
踏み出そうとしたルツに、シュベツは営業用の笑みを見せた。
「ルツ、逃げ……」
ザナの声はすぐに途切れた。
身動きしないまま、口を魚の様に大きく開いてはくはくしている。
ザナは声が出せなかった。
その首には鈍く黒光りの首輪がある。
にやにやとシュベツは、椅子に人形のように座るザナの首輪を指で摩った。
「ど、どうする…隷属の首輪は一つしか手に入らなかったぞ…」
おろおろと手を揉みしだく小太りの役人に、シュベツの笑は崩れない。
「大丈夫ですよ、旦那。
ザナはこっちのモンですから。」
腰のベルトに留めていたナイフを抜き取ると、焦らすようにザナの目の前で見せびらかす。
「ザナを置いて逃げられる訳がねぇ。
このまま二匹とも、こっちのモンでさぁ」
匹‼︎
その言葉を聞いて。
ルツは怒りで目眩がした。
その怒りのままに、足元から植物達に力を叩きつけた。
うめき声は途切れ途切れだ。
早く血を止めなくては‼︎
ルツはばさりと立ち上がると、急いで表の扉に向かった。
蹴り飛ばすように扉を開ける。
田舎の家には鍵が無い。
ばん‼︎
と、開いた扉に。
部屋の人間は、ぎょっとして振り向いた。
「ルツ⁉︎」
じいサマの驚愕の声よりも。
ルツは怒りでずんずん入ると、金貨を前に突き出した。
「足りないと言ってた税金分の金貨は用意した。
ここから出て行ってもらおう‼︎」
シュベツは飛び出すかと思える程に目を見開いて、いきなり現れた森人を凝視した。
そして、現れたのがルツだと認識して、にやりと笑った。
「へぇ。やっぱり化けてやがったな」
銀糸が小さな顔を美しく浮かび上がらせている。
怒りに燃えたエメラルドグリーンの瞳は、中に火花の様に金粉を散らしてこちらを見ている。
頬は上気して桃色で。
唇もふっくりと花弁のようだ。
これがルツ。
いつも薄黄色くぼんやりと見せていた中に、こんな美しい姿を隠していたのか。
シュベツはべろりと舌で唇を舐めた。
ぞくぞくする。
こいつは高く売れる。
ザナよりも若く、美しい。
でも売る前にさんざんいたぶって、泣かしてやる。
突き出された金貨を受け取って、手のひらの上で数える。
10枚。
馬鹿馬鹿しい。
そんなはした金。
こいつを前にそんなものどうでもいい。
ルツの乱入に口をあんぐり開けていた徴税役人に、その金貨を渡す。
コイツは役に立たない。
男1人を刺したくらいで、びびってやがる。
「確かに10枚」
「さぁ、じいサマを解放しろ。
村長も手当てしないといけない!」
真っ直ぐに言い募るルツが眩しくて、癪に触る。
早く泣かせたい。
「いやぁ。この金はあんた達の生活費に回しますよぉ。客を採る為の服だって、森人だったらせめてシルクを用意しないとねぇ」
「はぁ⁇」
踏み出そうとしたルツに、シュベツは営業用の笑みを見せた。
「ルツ、逃げ……」
ザナの声はすぐに途切れた。
身動きしないまま、口を魚の様に大きく開いてはくはくしている。
ザナは声が出せなかった。
その首には鈍く黒光りの首輪がある。
にやにやとシュベツは、椅子に人形のように座るザナの首輪を指で摩った。
「ど、どうする…隷属の首輪は一つしか手に入らなかったぞ…」
おろおろと手を揉みしだく小太りの役人に、シュベツの笑は崩れない。
「大丈夫ですよ、旦那。
ザナはこっちのモンですから。」
腰のベルトに留めていたナイフを抜き取ると、焦らすようにザナの目の前で見せびらかす。
「ザナを置いて逃げられる訳がねぇ。
このまま二匹とも、こっちのモンでさぁ」
匹‼︎
その言葉を聞いて。
ルツは怒りで目眩がした。
その怒りのままに、足元から植物達に力を叩きつけた。
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