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学園のはなし

2 コレと森人

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さすがにと大声で言ったラッシュ様を、
アメデオ様は
「おまえは馬鹿かっ!」
と口を封じた。

いや、慌てて遮ってももう聞いてますから。

そして叱られたラッシュ様は、憮然として口をへの字にしている。
まるっきり悪いとはカケラも思ってなさそうだ。

~~正直、わかります。

わかんないけど、わかります。

"森人"に夢と希望を持っていた口ですね。
そのドキドキワクワクの森人とのご対面で、現れたのがルツだったという訳で…


ルツの髪はストローイエロー。
手っ取り早く言うと麦わら色だ。
パサパサで艶の無いありふれた色。
そして瞳は鶸萌黄。
芽吹くときの躍動感のある萌黄色とは違い、淡くて黄色っぽい、ぼんやりとした緑色なのだ。

森人は別名でエルフと言われる。
その一族は美麗で有名だ。

そんな美人で有名な森人との面接に、ウキウキワクワクしてたのに。
多少耳の形がとんがってようと、地味なルツが現れたら。
そりゃあ
「なんだコレ!」と、言いますよね。
わかります。
今までがそうでしたから。

まぁ、言われる方はたまったもんじゃないけどね。



「ごめんね、ルツ君。」

この場で分かったのが、アメデオ様が平民にも謝罪出来るって事。
噂に虚偽は一句も無く。
素晴らしい方だと言うことぐらいだわ。
うん。


「ラッシュは10日前に森人と知り合ってね。
はっきり言って魂をがんじがらめにされてしまったんだよ。(古典的な恋に落ちた表現)
それ以来ずっと探しているんだけど見つからなくってね。まぁ、分かっているのがこの学園の薬草を採取している子だってくらいでね。」


10日前。
薬草の採取。
そのワードで、ルツはあれっ⁉︎と思った。
ソレってもしや第三地区の森ではございませんか?と。

「それ以外にも分かってる事はあるぞっ!」

ラッシュ様が顔を真っ赤にしてぐいとアメデオ様に詰め寄った。

「彼は雲母キラのごとく煌めくプラチナブロンドで、美しいエメラルドの目をしているっ‼︎」

おやぁ。

「この学園の印のある採取袋を持っていたから、絶対。絶対!関係者なのだ‼︎」

それって。

「彼は美しい。美しい森人だ!
コレとは全然違う!
お前も見れば納得するはずだっ!
同じ空気を吸うのもおこがましい程に違う!
森人がいるから"世話係"にどうかと言われたから、彼かと思って来てみたのだ!
コレならいらん!
俺は今までの世話係で良いぞっ‼︎」


ラッシュ様の怒鳴り声が、まるっきり耳に入って来なかった。
随分なセリフは、耳を滑って何処かへ漂っていく。


銀髪で。
緑の目で。
学園の採取袋を持って。
10日前にラッシュ様と会った森人。


……僕じゃん。

僕のことじゃん。

勿論声に出しはしなかったが、ルツはゲンナリと呟いた。

その間にもラッシュ様は、なんかその森人への礼讃をブツブツと唱えている。
~~正直キモい。

これだから人は森人に何やら夢を見てしまうのだ。


ルツは自分の姿を、
凡庸に変えといて良かった。
と、心の底から思った。

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