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学園のはなし

1 コレと言われました

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さすが王立学園。
さすが貴賓室の応接間。

シャンデリアがぶら下がり。
なんかもうキラッキラです。
どうやって掃除すんだよ!
と、叫びたくなる高級品に満ち溢れています。


たかが平民の面接なのに。
なんなのこの状況…
これはアレか?
ゴージャスをばーんと押し出して、萎縮させる戦法なのか⁉︎

もちろん平民の僕は喉が乾っからで。
心拍数はどっくんどっくんとレッドゾーンです。
お尻の下のソファは、全身がぬおぉぉぉん‼︎
と沈んでいきそうなくらいにふっかふかです。
その総刺繍の布地は、僕のお尻が付いたりしたら、お尻が綺麗になって発光しちゃうんじゃないかって思うくらいにお高いのが見え見えなので。
ちょっと先だけ座って。
いや、空気椅子のように座った風を装って、ひたすら苦行に耐えております。


目の前には学園長。
たかだか平民の面接なのに、事務員を出すこともなく。
豊かなおひげを捻りながら、やっぱり緊張してらっしゃいます。

そして隣にはアメデオ様。
宰相の御子息で、と津々浦々に名を轟かすこの方は。
緊張でガジガジな僕を解そうと、さっきから優しく声を掛けて下さっておりました。
まぁ、立場の違いから共通の話題も無く。
天気やなんやで話が盛り上がる訳も無く。
凄~く微妙な空気なんですが。



廊下からカッ、カッ、と、威勢のいい足音が近づいてきた。
当たり前だがノックは無く。
扉に付いたドアマンがぱっと開けたところで、その方の姿が見えました。

肩に流れた黒髪は、青光りする艶を持っています。
引き締まった体格は、優れた戦士を思わせます。
堂々とした態度は生まれながらの覇者を物語って、その顔は非常に秀麗。
しっかりとした鼻筋と、鋭く大きな紫紺の瞳。
でも優しく緩められた口元は、お手本の様なロイヤルスマイルを発しておりました。

はっきり言って美男子。

その顔は、僻地の酒場や宿屋ですら、物好きな女将が額に入れて飾っているお馴染みの一枚で。

第二王子、ラッシュ様。
そう、今日の面接の相手です。


ラッシュ様はその場にいる者に笑顔を振りまいた。
そう、平民の僕にも。


そのロイヤルでイケメンのスマイルに、当たり前だがドキューン♡となって硬直した。


ラッシュ様はそわそわと辺りを見渡して、上機嫌のまま尋ねられた。

「で、"森人"は何処にいらっしゃるのだ?」



はっ⁇

と、一瞬たじろいで。
アメデオ様は首をぐるんと回して僕を見た。

……ちょっと沈黙。

僕とアメデオ様と学園長はどう反応していいのかわからずに、黙って顔を見渡した。

沈黙する三人の上を、舐める様に期待の熱視線が行き来する。


あの……
わかってる?

ここに一人不釣り合いな平民が居るってわかってる?

そいつの耳がちょっととんがってるの見えてる?

僕はだんだん項垂れて。
ただだ足元に視線を移した。

……。


部屋に沈黙が流れる。

ラッシュ様のにこにこだけが浮いている。

部屋に沈黙が流れる。

……。



やがて、
意を決してアメデオ様が答えた。

「ここだよ。
 君のお望みの"森人"のルツ君だ。」

正直顔を上げられない。
それでも恐る恐る目を上げたら、目を真ん丸にしたラッシュ様がいた。
そんな顔しててもイケメンだな。おい。

現実逃避の為に、ルツはそう思った。
だって…


はあぁぁぁぁぁっ‼︎

ラッシュ様の逞しい肩がふいごの様に前に揺れた。
吐き出す息が、驚愕の叫びになっている。


「こ、が森人だとっ⁉︎」

はくはくとラッシュ様が鯉の様に口を動かす。

はないだろうがぁっ!」

……僕が絶対零度の目をしていても。
無理もないと思いませんか。
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