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そしてリターンする?
75 目からポロリと ヤルターシ
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紙は植物から作る。
刈られた植物は、再び育つまでに時間がかかる。
つまり、紙は有限な資源。
反故紙もリサイクルされているが、やはり高い。
王宮や役所は仕事柄石板や羊皮紙は使い勝手が悪すぎるから、どんどん書類に紙を使う。
そうなると、やはり平民は紙は高嶺の花。
当たり前だか使えない。
全国の教え処では、石盤と石筆がスタンダードだ。
石盤は薄い粘板岩を板にしたもので、そこそこ重くて結構脆い。
だいたいが、隣の席の女の子をごぼうだのにんじんだのとからかって、頭に叩きつけられて(インパクトはあるが、脆いのでそう痛くない。)割られてしまう。
石筆は蝋石がメインだけど、これも山を削って作られるから高価だ。
識字率の向上の為に組まれた予算は昔から変わらず、増額の予定も割れた石盤の修理もされていない。
かつて貧乏男爵家の三男は、繰返しの綴りを覚える時に、湿らせた土に棒で字を書いて覚えたそうだ。
貧乏な子供は通えない。
物資も行き渡っていない。
全国に作られた教え処は、上手く機能していなかった。
街歩きから城に帰って来て、互いだけになってから、
「石灰だ。あの石灰を筆記道具にする。」
アドルはヤルターシに熱く語った。
幼い子供でも線のかける柔らかさ。
アレなら石盤では無く、木の板でもいける。
ぐっと拭き取って、何度でも書ける。
値段はかなり安くなるはず。
だって材料は処理に困るほどにあるのだ。
「リサ嬢なら、"石灰筆"を上手く作り上げる術があるだろう。ひょっとしたら、それを作る工房を老人や子供で立ち上げるかも知れないな。」
ヤルターシがやたら商談していた物は、シングルマザーが立ち上げた雑貨屋の為だろう?
そう言われてヤルターシは固まった。
知ってたの?
そんな顔にアドルはにやりと不適に返す。
ジュノが学園時代から今に至るまで、市場の"覚え処"に通っているのは知っている。
子供の教育は国の財産だと、"覚え処"を編成したのも知っている。
宰相の執務室で、子供の教育について熱弁を奮っていたのはちゃんと報告されていた。
それは一介の事務員がやる事じゃ無い。
国の仕事として王妃がやる事だ。
上手く"石灰筆"が出来たら、こっちの国にも工房を作って、恩を売りつつ友好を深められる。
そう、外交も絡む王妃としての仕事だ。
つまり。
「俺は公私共に、ジュノを捕まえる事ができるわけだ。」
どうだ?
アドルの広げた風呂敷に、ヤルターシは赤ベコのように頭を振った。
ヤルターシは感動していた。
全身の血が沸騰する程に、ざわざわと動いて鳥肌がたった。
コレが思春期のお子様なら、
あれ、コレって恋?
と、錯覚しそうなくらいの動悸息切れ目眩でふるふるした。
馬鹿だ。
馬鹿だと、思ってたのに。
なんとまぁ、立派に大きくなって……。
ある意味、失敬な感動で、ヤルターシは震えた。
このまま一生サポートしていこう!
と、心に誓うのだった。
刈られた植物は、再び育つまでに時間がかかる。
つまり、紙は有限な資源。
反故紙もリサイクルされているが、やはり高い。
王宮や役所は仕事柄石板や羊皮紙は使い勝手が悪すぎるから、どんどん書類に紙を使う。
そうなると、やはり平民は紙は高嶺の花。
当たり前だか使えない。
全国の教え処では、石盤と石筆がスタンダードだ。
石盤は薄い粘板岩を板にしたもので、そこそこ重くて結構脆い。
だいたいが、隣の席の女の子をごぼうだのにんじんだのとからかって、頭に叩きつけられて(インパクトはあるが、脆いのでそう痛くない。)割られてしまう。
石筆は蝋石がメインだけど、これも山を削って作られるから高価だ。
識字率の向上の為に組まれた予算は昔から変わらず、増額の予定も割れた石盤の修理もされていない。
かつて貧乏男爵家の三男は、繰返しの綴りを覚える時に、湿らせた土に棒で字を書いて覚えたそうだ。
貧乏な子供は通えない。
物資も行き渡っていない。
全国に作られた教え処は、上手く機能していなかった。
街歩きから城に帰って来て、互いだけになってから、
「石灰だ。あの石灰を筆記道具にする。」
アドルはヤルターシに熱く語った。
幼い子供でも線のかける柔らかさ。
アレなら石盤では無く、木の板でもいける。
ぐっと拭き取って、何度でも書ける。
値段はかなり安くなるはず。
だって材料は処理に困るほどにあるのだ。
「リサ嬢なら、"石灰筆"を上手く作り上げる術があるだろう。ひょっとしたら、それを作る工房を老人や子供で立ち上げるかも知れないな。」
ヤルターシがやたら商談していた物は、シングルマザーが立ち上げた雑貨屋の為だろう?
そう言われてヤルターシは固まった。
知ってたの?
そんな顔にアドルはにやりと不適に返す。
ジュノが学園時代から今に至るまで、市場の"覚え処"に通っているのは知っている。
子供の教育は国の財産だと、"覚え処"を編成したのも知っている。
宰相の執務室で、子供の教育について熱弁を奮っていたのはちゃんと報告されていた。
それは一介の事務員がやる事じゃ無い。
国の仕事として王妃がやる事だ。
上手く"石灰筆"が出来たら、こっちの国にも工房を作って、恩を売りつつ友好を深められる。
そう、外交も絡む王妃としての仕事だ。
つまり。
「俺は公私共に、ジュノを捕まえる事ができるわけだ。」
どうだ?
アドルの広げた風呂敷に、ヤルターシは赤ベコのように頭を振った。
ヤルターシは感動していた。
全身の血が沸騰する程に、ざわざわと動いて鳥肌がたった。
コレが思春期のお子様なら、
あれ、コレって恋?
と、錯覚しそうなくらいの動悸息切れ目眩でふるふるした。
馬鹿だ。
馬鹿だと、思ってたのに。
なんとまぁ、立派に大きくなって……。
ある意味、失敬な感動で、ヤルターシは震えた。
このまま一生サポートしていこう!
と、心に誓うのだった。
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