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そしてリターンする?
73 実験された朝
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ガーディヴ二世の国は海洋大国で。
吹き抜ける風は潮を含んで湿っている。
王宮の開け放たれた窓から覗く海は、強めの太陽を反射してキラキラ光っていた。
足元にひろがる街はほぼ白で。
それの隙間を埋め込むように、緑がわさわさとある。
潮風になぶられながらも、植物は総じてデカそうだ。
オットマンのついたソファで、アドルはゆるりと転がっている。
ぼんやりしていると、ようやく勃っていた俺の俺がやっと眠りについてきた。
ったく。
さり気なく媚薬的な?だと。
さり気なく似た子を手配しちゃった。だと。
~~うっかり乗っかってたら、どうなっていたかわからない。
良く気付いた俺。
自画自賛する。
うん。
これは褒め称える案件だ。
こういう困った事にならないように、就いてるんじゃないのかい、ヤルターシ。
そのヤルターシは、テラスでトロピカルなものを飲みながら、ガーディヴ二世と雑談していた。
「でも、思い切ったよなぁ。長男なのに養子に出るって。」
二世という名を冠しているガーディヴにとって、自分の立場が180度変わるのは、考えもつかなかった。
しかもヤルターシは、騎士団長の息子として、幼い頃から鍛え抜かれていた。
就職も騎士団に入団で。
もう、人生のレールは一本だと周りも本人も思っていた。はず。
「…まあ…。適性を突き詰めちゃったカンジ?」
なんとか軽くいなそうとしても、ガーディヴ二世の食いつきは止まらない。
「しかもあのリサ・ラッセル嬢との婚姻だろ。……素直に尊敬するわ。」
学園時代。
"南国育ちだから、おおらかだよん♡"
という、フレーズでチャラいガーディヴは目に付く可愛い子ちゃんを食いまくっていた。
当たり前だが男女の差は無い。
目立つジュノは、早々に目をつけた。
ところが。
~~そこにいるのだ。
可愛い子ちゃんがそこにいたのだ。
なのに、何故か出会えない。
朝も。
昼も。
夕方も。
声をかけようとすると消えちまう。
バイトの市場で出待ちしても、配達だの裏方だのと、擦りもしない。
そこだ。
確かにそこにいるのに。
まるで泥沼の迷路に入り込んだ様に、なぜか行きつかない。
イラッと、俯瞰で見てみると。
誰かの思惑が透けて見えた。
誰かがジュノをガードしている。
まるっきり自然に、疑問が出ないように。
生き物のようにタイムテーブルをずらしている。
王子の立場をフル活用すると、一人の令嬢が浮かんできた。
美人で賢いその令嬢に、面白がって誘いをかけたら、木で鼻をくくったような態度が返ってきた。
なんかムカついて密かに対戦すること二カ月ばかり…。
まあ、痛み分けをした。
手打ちをして戦友となった。
~~その令嬢が言わずと知れたリサ嬢なわけで。
彼女は自分の人生で最初で最後の白旗を上げさせた者だ。
はっきり言おう。
敵わない。
苦手だ。
ごめんなさい。
だ。
ヤルターシはリサ嬢に見染められ。
養子になり、将来宰相になる。
……なんかヤバい。
リサ嬢の、愛情生活が薄いんじゃね~
っと反論できる唯一の弱点がなくなってしまった。
ますます敵わない。
あの国に喧嘩を売るのはやめよう。
と、ガーディヴ二世は心に刻んだ。
あんなおっかない令嬢と、ちょっと得体の知れないヤルターシがいるのなら、生涯あの国と友好を結んどこう。
~~とりあえず。
調印式をしてから、この警備の万全な街を見せびらかして、御当地フードで胃袋をキャッチだ!
吹き抜ける風は潮を含んで湿っている。
王宮の開け放たれた窓から覗く海は、強めの太陽を反射してキラキラ光っていた。
足元にひろがる街はほぼ白で。
それの隙間を埋め込むように、緑がわさわさとある。
潮風になぶられながらも、植物は総じてデカそうだ。
オットマンのついたソファで、アドルはゆるりと転がっている。
ぼんやりしていると、ようやく勃っていた俺の俺がやっと眠りについてきた。
ったく。
さり気なく媚薬的な?だと。
さり気なく似た子を手配しちゃった。だと。
~~うっかり乗っかってたら、どうなっていたかわからない。
良く気付いた俺。
自画自賛する。
うん。
これは褒め称える案件だ。
こういう困った事にならないように、就いてるんじゃないのかい、ヤルターシ。
そのヤルターシは、テラスでトロピカルなものを飲みながら、ガーディヴ二世と雑談していた。
「でも、思い切ったよなぁ。長男なのに養子に出るって。」
二世という名を冠しているガーディヴにとって、自分の立場が180度変わるのは、考えもつかなかった。
しかもヤルターシは、騎士団長の息子として、幼い頃から鍛え抜かれていた。
就職も騎士団に入団で。
もう、人生のレールは一本だと周りも本人も思っていた。はず。
「…まあ…。適性を突き詰めちゃったカンジ?」
なんとか軽くいなそうとしても、ガーディヴ二世の食いつきは止まらない。
「しかもあのリサ・ラッセル嬢との婚姻だろ。……素直に尊敬するわ。」
学園時代。
"南国育ちだから、おおらかだよん♡"
という、フレーズでチャラいガーディヴは目に付く可愛い子ちゃんを食いまくっていた。
当たり前だが男女の差は無い。
目立つジュノは、早々に目をつけた。
ところが。
~~そこにいるのだ。
可愛い子ちゃんがそこにいたのだ。
なのに、何故か出会えない。
朝も。
昼も。
夕方も。
声をかけようとすると消えちまう。
バイトの市場で出待ちしても、配達だの裏方だのと、擦りもしない。
そこだ。
確かにそこにいるのに。
まるで泥沼の迷路に入り込んだ様に、なぜか行きつかない。
イラッと、俯瞰で見てみると。
誰かの思惑が透けて見えた。
誰かがジュノをガードしている。
まるっきり自然に、疑問が出ないように。
生き物のようにタイムテーブルをずらしている。
王子の立場をフル活用すると、一人の令嬢が浮かんできた。
美人で賢いその令嬢に、面白がって誘いをかけたら、木で鼻をくくったような態度が返ってきた。
なんかムカついて密かに対戦すること二カ月ばかり…。
まあ、痛み分けをした。
手打ちをして戦友となった。
~~その令嬢が言わずと知れたリサ嬢なわけで。
彼女は自分の人生で最初で最後の白旗を上げさせた者だ。
はっきり言おう。
敵わない。
苦手だ。
ごめんなさい。
だ。
ヤルターシはリサ嬢に見染められ。
養子になり、将来宰相になる。
……なんかヤバい。
リサ嬢の、愛情生活が薄いんじゃね~
っと反論できる唯一の弱点がなくなってしまった。
ますます敵わない。
あの国に喧嘩を売るのはやめよう。
と、ガーディヴ二世は心に刻んだ。
あんなおっかない令嬢と、ちょっと得体の知れないヤルターシがいるのなら、生涯あの国と友好を結んどこう。
~~とりあえず。
調印式をしてから、この警備の万全な街を見せびらかして、御当地フードで胃袋をキャッチだ!
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