なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

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60 王子の帰還  侍従A

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帰還された王子のお顔をじっと見守り。
そして、目が合った時。

ジュノ様のエメラルドの瞳が大きく見開かれてキラキラと輝きだしました。
その輝きは頬を染め、顔を艶やかに彩ります。

王子がジュノ様の名を呼ばれると同時に、まるで矢の様に飛び出されました。

その場には王子達の帰還を歓迎する為に、沢山の人々がいらっしゃいます。
騎士団員も、下働きも。
むろん宰相様はじめ、執務棟のあらゆる部署の者がいらっしゃいました。

その衆人環視の真ん中で、ジュノ様は王子に飛びついておりました。




べろちゅうです。


なんということでしょう、べろちゅうです。

観衆のど真ん中でのべろちゅうです。



ジュノ様は一途な方でございます。
隠す気もない宰相閣下への熱のいれようから、猪突猛進で、周りが見えない方では無いかと、正直思っておりました。

そのジュノ様が、押して、押して、押し捲られたあげくの恋の自覚。
と、なったら。
そりゃ、もう、とまりませんやね。

王子は当たり前ですが、うっとりと二人の世界に入られてます。


周りはただただ、し~~んと静かで。

んふっ♡  ん♡
しゅき♡  ん、しゅきっ♡
という、水音混じりのべろちゅうする二人だけが動いております。


~~~いたたまれません‼︎


そのうち、そろそろと人が欠けて行きました。
その口元はにまにまと緩んでおります。
もう、しょうがないなぁ♡
と、誰かの心の声が、全員の頭の中をれリレーしたことでしょう。



もう。

コレは。


今夜は熱烈合体ですね。

ようやくの初合体でございますね。


リサ様がこっそりと私を手招きされました。
薔薇が届くから設る様にとの指示でございます。
無論です。
香りも灯りも。
雰囲気作りなら、お任せ下さいり
一生、心に残る夜を創り上げてご覧にいれます。



それからずっと、汗を落としてお着替えされてから。
夕食中も、ただただバカップルと化した二人はくっついておりました。

膝の上にお座りになったジュノ様は、子犬のようにすんすんと、王子の腕の中で匂いを嗅いでおられます。
甘える様に頬を擦り付けておられます。

もう王子は、スライムかっ!
と、蕩けておられます。

私どもは、お邪魔にならないように、そおぉぉっと気配を消して部屋を出ました。



「ジュノ、ジュノ…」

甘い声が流れて参ります。
ああ、良かった。
これで皆が幸せになる。

カトラリーを磨きながら、ちょっと長かった戦いの日々を振り返っておりましたら、

「お~い、ジュノ? ジュノ⁉︎」

声を抑えて、でも叫ぶ様な王子の声に、私どもは臨戦態勢をとりました。

「ジ、ジュノ! ジュノ‼︎」

声が焦っておられます!‼︎

どうなさったのでしょう!
猶予はありません!

出来るだけ音を立てずに、でも素早く部屋へと、飛び込みました。



私どもを降り仰いで、王子は眉をハの字にされました。
そこには、王子の腕の中で完全にしたジュノ様が、すぴすぴと微笑んでおられました。


~~王子の御不在の間。
ジュノ様はほとんど睡眠をとられてませんでした。

王子の香りに抱かれて、幸せそうに睡るジュノ様は、そりゃもう天使の様でございました。





翌朝、ワンチャンを目指す王子が、まあ、ペロペロと何やらなさってらっしゃいました。

が。

はっきり申し上げましょう。
ジュノ様の睡眠の深さを侮ってはなりません!と。

結局、報告の為に泣く泣く出勤なさる王子の背中に、私どもは涙がちょちょぎれそうでございました。

ジュノ様は、多分違う意味での休日許可が出ておりました。
ですから私どもは、その天使の寝顔を堪能させて頂いいたのでございます。

そうしてジュノ様がお目覚めになられたのは、実に昼過ぎの事でございました。




王子に、不憫という称号と、
同情による好感度が爆上がりしたのは、いうまでもございません。
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