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53 王妃の後宮 上
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今日は王妃様んちに行く。
って言うか王様の後宮にお邪魔する。
女の眼は厳しいのです!
と、拳をにぎる侍従ちゃん達に凄まれて、もう大渦に翻弄される公園ボートの如く…。
執務室にいつの間にか有給申請されてるわ。
寝る前に全身にナニやら塗り込まれるわ。
だからお触り禁止です‼︎
と、王子は叱られていた。
~~ホイップクリーム塗ったケーキ台の如く?
後は飾り付け。って感じ?
「近くにいるとムラムラするから三階に行く!」
と、口を尖らせた王子は恨めしげに三階に行った。
子供かっ!
~~まあ、王子の体温が無くて、なんか物足りなくって、なかなか寝付けなかったけど。
……これは内緒だし。
王様の後宮は戸建てだ。
敷地の周りは堀と塀に囲まれている。
ほら、王様以外の男は入れないし。
人質候補は揃っているから、厳重管理されている。
正直、遠い。
緊張もあって、もう、疲れています。
同じくご指名を受けたヤルターシ様にエスコートされてます。
ようやく門迄来た。
そこにはリサ様が待っていてくださって。
女性の侍従へ、ウチの侍従ちゃんからお土産が渡される。
門番の待機室で待ってますからいってらっしゃいませ、と手を振られて中に入った。
リサ様はにこにこしながら
「あのお茶会から、王妃様と親しくさせて頂いてますのよ♡」
そして今日のジュノを褒める。
肩より伸びた髪を軽く編み込んで、自然に流した型を絶賛してくれた。
後で侍従ちゃんに報告しよう♡
真っ直ぐ伸びるレンガ道。両脇に家。
手入れされた花と低木が美しい。
今代の王の好みだろう。
"避暑地の恋"みたいな?
なるほど後宮は一つの村だ。
王様の好みを映し出す村だ。
まぁ、王様のプライベートな癒し空間だからね。
正面にぱっと見可愛らしい山荘ふうな古民家がある。
田舎風だけど、違う。
あらゆるバイトを経験したジュノは、その屋根のスレートは超高級ザナビ製で、壁の石だってそんじょそこらに見ないモノだということを見てとった。
王妃はナチュラルメイクで。
華美にならないゆったりとした民族衣装のようなドレスでいらした。
ゆるふわに結い上げた髪から、くるんとほつれた一筋は計算され尽くした色っぽさだ。
女神‼︎
おほほっ♡と、称賛の言葉を受け。
きゅっとハグされ、小道を通ってガゼボへと案内される。
「多分お部屋よりもガゼボの方が落ち着くと思って」
ありがとうございます。
その通りです。
年収の何倍かのソファにお茶をこぼしたら…
とか。
うっかり飾り棚の物を落としたら…
とか。
もう、もう、落ち着きませんから。
小道から開けたそこは見晴らしの良い芝生だった。
風は健康な田舎の匂いに溢れていた。
ガゼボの周りには小さな花壇があって、青い勿忘草で彩られ、えんじ色の牡丹と早咲きの雛菊が咲いている。
遠くの芝生の上を柔毛のふわふわしたひよこが駆け抜けて行くのが見えた。
きっと向こうに小さな池があるのだろう。
王宮で見慣れた薔薇園や庭とは趣きが違う、手入れされながらも自然のままに見せかけている。
なかなかの癒し空間だ。
王様はスローライフに憧れているのかもしれない。
白い柱で八角形の広いガゼボの中には、女性が二人いらっしゃる。
こんな時、後ろの侍従は空気となっている。
「側妃のカーミラ様と、ソラージュ様よ。」
俺は緊張しながらきちんと仕込まれた礼をした。
なんだ、王よ。
スローライフを愛する朴念仁風なのに、奥さん三人もいるんじゃないか。
……やっぱ子孫の為だよね。
王の役目は血筋を未来に残す事。
男の側妃って、……無いよね。
なんとなく、ジュノはちくっと胸が痛かった。
って言うか王様の後宮にお邪魔する。
女の眼は厳しいのです!
と、拳をにぎる侍従ちゃん達に凄まれて、もう大渦に翻弄される公園ボートの如く…。
執務室にいつの間にか有給申請されてるわ。
寝る前に全身にナニやら塗り込まれるわ。
だからお触り禁止です‼︎
と、王子は叱られていた。
~~ホイップクリーム塗ったケーキ台の如く?
後は飾り付け。って感じ?
「近くにいるとムラムラするから三階に行く!」
と、口を尖らせた王子は恨めしげに三階に行った。
子供かっ!
~~まあ、王子の体温が無くて、なんか物足りなくって、なかなか寝付けなかったけど。
……これは内緒だし。
王様の後宮は戸建てだ。
敷地の周りは堀と塀に囲まれている。
ほら、王様以外の男は入れないし。
人質候補は揃っているから、厳重管理されている。
正直、遠い。
緊張もあって、もう、疲れています。
同じくご指名を受けたヤルターシ様にエスコートされてます。
ようやく門迄来た。
そこにはリサ様が待っていてくださって。
女性の侍従へ、ウチの侍従ちゃんからお土産が渡される。
門番の待機室で待ってますからいってらっしゃいませ、と手を振られて中に入った。
リサ様はにこにこしながら
「あのお茶会から、王妃様と親しくさせて頂いてますのよ♡」
そして今日のジュノを褒める。
肩より伸びた髪を軽く編み込んで、自然に流した型を絶賛してくれた。
後で侍従ちゃんに報告しよう♡
真っ直ぐ伸びるレンガ道。両脇に家。
手入れされた花と低木が美しい。
今代の王の好みだろう。
"避暑地の恋"みたいな?
なるほど後宮は一つの村だ。
王様の好みを映し出す村だ。
まぁ、王様のプライベートな癒し空間だからね。
正面にぱっと見可愛らしい山荘ふうな古民家がある。
田舎風だけど、違う。
あらゆるバイトを経験したジュノは、その屋根のスレートは超高級ザナビ製で、壁の石だってそんじょそこらに見ないモノだということを見てとった。
王妃はナチュラルメイクで。
華美にならないゆったりとした民族衣装のようなドレスでいらした。
ゆるふわに結い上げた髪から、くるんとほつれた一筋は計算され尽くした色っぽさだ。
女神‼︎
おほほっ♡と、称賛の言葉を受け。
きゅっとハグされ、小道を通ってガゼボへと案内される。
「多分お部屋よりもガゼボの方が落ち着くと思って」
ありがとうございます。
その通りです。
年収の何倍かのソファにお茶をこぼしたら…
とか。
うっかり飾り棚の物を落としたら…
とか。
もう、もう、落ち着きませんから。
小道から開けたそこは見晴らしの良い芝生だった。
風は健康な田舎の匂いに溢れていた。
ガゼボの周りには小さな花壇があって、青い勿忘草で彩られ、えんじ色の牡丹と早咲きの雛菊が咲いている。
遠くの芝生の上を柔毛のふわふわしたひよこが駆け抜けて行くのが見えた。
きっと向こうに小さな池があるのだろう。
王宮で見慣れた薔薇園や庭とは趣きが違う、手入れされながらも自然のままに見せかけている。
なかなかの癒し空間だ。
王様はスローライフに憧れているのかもしれない。
白い柱で八角形の広いガゼボの中には、女性が二人いらっしゃる。
こんな時、後ろの侍従は空気となっている。
「側妃のカーミラ様と、ソラージュ様よ。」
俺は緊張しながらきちんと仕込まれた礼をした。
なんだ、王よ。
スローライフを愛する朴念仁風なのに、奥さん三人もいるんじゃないか。
……やっぱ子孫の為だよね。
王の役目は血筋を未来に残す事。
男の側妃って、……無いよね。
なんとなく、ジュノはちくっと胸が痛かった。
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