なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

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46 みんなでお茶を

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厨房からカートを押す。
王子が執務室に居るおかげか。
お茶時間をちゃんと摂れるようになったおかげか。
グルメな宰相閣下の感想を、身振り手振りで料理長に伝えているおかげか。
半端ないくらいに、お茶時間が豪華になった。

アミューズなんか柿と生ハム、スモークサーモンと生クリームと、なんと二種類もある。
スコーンもほかほかと美味しそうで、クロテッドクリームと今日は苔桃ジャムだ。
料理長からドヤ顔で渡されて、ジュノは目をキラキラさせて褒め称えた。


うふふふん♡

足取りが軽い。
踊り出しそう。

そんなジュノに皆んなはにこにこと声を掛けてくれて、ジュノは笑顔で挨拶を返す。



カートを執務室に運び入れ。
まず宰相閣下と王子に用意する。
今日の紅茶はティーフラバール。
超高級品だ。
あの怒涛のお茶会の後、ご令嬢が贈って下さった。
貧乏舌のジュノは、美味しい淹れ方はマスターしたけれど、ソレに合わせるミルクはわからない。
どの牛種の何歳のが良いとか、砂糖はどこ産のどの種類が良いとか。
まーったくわからないので料理長に丸投げだ。
お貴族様、面倒臭い。

一杯目は香りを楽しんでストレートで。
王子は流石に王族で、ちゃんとティスティングしている。

「美味しいよ。ジュノが淹れてくれたから、とても幸せだ。」

最近、息を吐くように甘々トークが途切れない。
観察するような宰相閣下に微笑み返す。
王子はさりげなくスルーする。

そして執務室の皆んなへの用意を始める。
宰相の執務室は超極秘が多いから、昔から侍従は入れない決まりだ。
手の空いてる事務員が用意する。
ソレはもっぱらジュノだったりする。


「さあ、お茶の時間ですよ。」

声を掛けると、皆んなは手を止めてお茶用のテーブルに集まってきた。

~~すんごいよねぇ。

『休憩を入れなければ効率が落ちます!』

朝から晩まで机に齧り付いていた先輩達に、休憩を取らせたのはヤルターシ様だ。
ヤルターシ様と先輩達は、べきべきと首を回しながら座る。
ほおぅっ。と息を吐いてお茶を飲む。
アミューズをすっ飛ばしてスコーンに手を伸ばす人もいる。


かつて、ココは"宰相のお茶"と呼ばれるモノを繊細なティーカップじゃなくてデカくて頑丈なマグカップで飲んでいた。
コレは眠気防止の為にと、ガンガン煮出して渋い濃い液体だ。
それにミルクと砂糖をぶち込んで飲んでいた。

お茶の時間も取れず、飲むのは眠気防止の凄い味。
添える軽食やデザートも手付かずで。
用意する料理人はそのプライドをへし折るに"宰相のお茶"と揶揄ってた。

もちろん宰相閣下にはちゃんとしたモノを出してた。
でもスコーンもデザートも手付かずで…。
目の前の書類を片付けるのに満身創痍の宰相閣下に、隣の部屋の部下達の実情はまあ、見えてなかったわけで。



宰相補佐官も先輩達も、ヤルターシ様に
『ここの子になりましょうよぉ~』
と、誘っている。
(目が血走っててちょっと怖い。)

ヤルターシ様がいれば、育休いけますね♡
と、腹黒く囁いて宰相閣下を動かそうとしている。

確かに。
剣の腕も。
家柄も。
事務処理能力も。
(多分腹芸も。)
他の貴族に侮られる点は一つもない。
もう、理想の新人だ。


ジュノは、こうやって美味しいお茶がず~っと飲めたらいいなぁ。
と、思った。



   **************

いつも読んで頂きありがとうございます。

次回から、ちょっとエロが始まります。
苦手な方はご遠慮下さい。
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