なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

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38 明るい家族計画。って  アドル

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騎士棟の小会議室に、俺はもじもじと報告していた。
"小"だけあって小さい。
ごっつい騎士が六人も坐れば息苦しくなりそうだ。
テーブルがあって、向こうにヤルターシがいる。

ヤルターシはもう顔馴染みだから、問題無い。
ただ、その横に女性がいる。

『リサ・ラッサムでございます。』

と、美しいカーテシーをした女性。
美しい笑みと、その洗練された所作。
場所をわきまえて簡素にまとめながらも、上質なその衣装。
成る程侯爵令嬢だけはある。

そしてその落ち着き払ったその令嬢の前で。
なんか得体の知れない圧と、舐める様にジロジロ見られて、俺のナニは縮こまってるカンジだ。



とりあえず、抱っこして朝を迎えたことを話す。
リサ嬢はうんうんと頷くとにっこり笑った。

「それで良いのです。
隙を見て攻め込むとして、初動に行き過ぎるのは禁物ですわ。」

「あ、ありがとうござぃますっ…」

何故かお礼の言葉が出ちゃったよ。
ヤルターシは、なんか疲れている。
悟りの眼差しでこっちを見ている。
その慈愛に満ちた目が、なんかイタい。


「もう、お分かりですよね。
自分のやらかしちゃったコト。」

黙って頷く。
やめてくれよ、あげつらうのは。
一つづつあげつらわれたら、緊張でゲロるかも知れない。
そんな祈りを知ってか知らずか、二人はうんうんと頷くだけだった。


「一同やらかした事はもう消えません。
ですから、これからはひたすら上書き作業です。」

「はい。」

「どれだけ愛しいか。可愛いか。
とりあえず思っていることは言葉にすること。よろしいですね。」

「はい。」

「察してくれるはず。は、傲慢な無知です。
人は人。言葉にしないと伝わりません。」

「はい。」

もうこれはお受験対策のレッスンか、面接対応へのハウツウですね。

それからしばらく。
叱咤。
叱咤。
叱咤。
激励。
を、うけて、メンタルはボロボロになった。


「良いですか。あの子ジュノは恋に免疫がありません。自分ではなかなかしたたかに世をわたってるつもりですが…」

一旦溜める。
リサ嬢の拳がぷるぷるしている。
扇がその手の中で変な形に曲がっている。
握りつぶされそうだ…… コワい。
そして、溜めに溜めてから、


「ちょろい‼︎」


横でヤルターシがうんうんと頷いている。

「一旦懐に入れた物への警戒はぐんと下がります。
ここからですよ。巻き返しは‼︎」

リサ嬢の目は生き生きギラギラ光ってる。
~~捕食者の目だ。

「あ、あのリサ嬢。すまないが教えて欲しい。」

恐る恐るお伺いを立てる。

「貴女はジュノをたいそう可愛いがっているようだ。~その、私に任せて良いのだろうか…」

気分は嫁と姑だ。
リサ嬢は琥珀色の瞳をキラキラと見返した。

「そのお言葉が出るだけで、もう合格ラインですわね。」

おほほほほの口元を扇で覆う。
おぼぼぼぼと魂を吐き出しながら、ヤルターシが下を向く。


「これはすべて"明るい家族計画"の為ですわ♡」

「ぶぼぉぅっ!」
変な声が出た…

「王子があの子を望んで下さって、本当に良かったわ。」

笑が怖い。
助けを求めるように隣を見たが、ヤルターシは既に秘技、拈華微笑を発動していた。

「一緒に頑張りましょうね♡」

望みは一つ。
やるしか無い!

おーーー‼︎


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