なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

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36 王子が後宮にやって来た

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もしや、もしやと思っていたけど、王子は記憶が無いそうだ。
ヒョルムのリーダーと直接対峙して、連携取って戦ったけど跳ね飛ばされたとかなんとか。
ベシャリと落ちて、頭を打って。
まあ、今に至る。

ヤルターシ様がいろいろ世話してるらしい。
なんかヤルターシ様、不憫系なのか?



宰相閣下がほうっと息を吐く。
やばい。
ストレスで目の下に隈が出来ている。

諸外国や五月蝿型の貴族連中に、うっかりと"王子が変なんです"(元からだけど。)と、バレ無いようにいろんな事を張り巡らせている。



俺を見ると『可愛い』『近くにいたい』とくっついて来るせいで、王子様の世話係に任命された。(まあ、元から側妃だけどね。)


病室から帰ろうとする俺の服をぎゅっと握って、縋って来るのを見て、
『良い子にするなら、ジュノと一緒に帰れる様にしましょうね。』
と、決められた。


「い、一緒。ってことは後宮。こ、後宮であんなことやこんな事…。」

なんの説明も無いままに、王子は自分の妄想で鼻血を吹いた。
俺の目付きが白いのは、しょうがないってぇもんだ。
言っとくがからな。
だって勃たないんだよな。


「ジュノ。しばらく三階の部屋にとこう。」

オッケーです。
そうして、表情の抜け落ちたヤルターシ様がお世話に通うことになりました。



そうやって自室のソファにいるのだけれど…。
何故か横に王子がいます。


侍従ちゃんたちと共に後宮の三階へと案内した。
~~広くてゴージャス!
おつきの間だけで実家ぐらいの広さがあるぞ。
ベッドの広さ、シーツの材質。
茶器に至るまで高級品だ。

ああ、二階で良かった。
こんな高級品の中にいると、うっかりひじが当たって傷ついたら。とか。
涎垂らして寝ちゃってシミになったら。とか。
もうもう落ち着かないに決まってる。

だから、ぐっと手を繋いでくる王子に視線を合わせて、
「じゃあ、また明日。」
と、サヨナラをバッチリ決めた。

後宮の侍従ちゃんと、王子と一緒に来た侍従さん達に上手く押し付けて、るったったと部屋に帰った。


風呂の世話をされ、お疲れ様と言い合った時に王子が来た。
これが俺様でやってきたなら、がんがん拒否ってなったのに。

……王子はぷるぷるとべそをかいていた。
ガタイのいいイケメン野郎なのに。

とっても。
とっても困り顔の侍従ちゃん達に拝み倒されたら、そりゃ、部屋に入れるしか無い。

で、今に至る。


王子は目を合わせたら叱られる。
って感じの子供の様に、下を向いて横に座っている。
~~なんなの。もう。

「いや、なんか、いたたまれ無くって…」

ああ、自分がわからないのなら、確かにいたたまれ無いよね。

ちょっととんがってた気持ちを反省いた。
もう少し優しくなろうと思う。
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