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35 人が恋に堕ちるのを 侍従A
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はい、私は第一王子様専用の後宮に勤めております。
後宮の侍従にと辞令が降りた時、内心複雑でございました。
なにせ後宮には寵妃が御入りになられます。
その御心次第で、待遇が天国と地獄程に変わるのを、嫌というほど見て参りました。
皺一本、髪型一つで打たれるのを見て参りました。
そのドロドロとしたマウントの取り合いは、私の結婚というものの夢をぼっきり折るほどに、なかなかハードなものでした。
仲間たちと、とにかく頑張ろう。
後宮に入られた方を盛り上げよう。
と、就任したのですが。
……はっきり言って暇でした。
誰も入られないのです。
第一王子といえば、アドル様とおっしゃって、たいそう見目麗しい方です。
ただ。
そう、ただ。
廊下の曲がり角の向こう側から、もう存在がわかるほどにピリついた威圧をダダもれさせているか、
カビて発酵するようなものを醸しているのです。
王妃。
この国のファーストレディ。
そんな憧れで、挑んできた数々の御貴族様方と御令嬢は、王子の発酵するほどのダラけ具合と
絶えず放たれる威圧感の中で、自分では無理。
と、悟るのに時間はかかりませんでした。
ちかよんじゃねぇ!
そんな無言のオーラの中で、腫れ物に触るように皆んなが遠巻きにしておりました。
せっかく、出来る侍従を目指してスキルを上げておりました。
お身体のお手入れでしたら、髪から爪までマスターしております。
しかし掃除係など下働きなみの仕事しか無く、正直腐っておりました。
そんな時でございます。
ジュノ様がいらっしゃったのは。
ジュノ様は、見るからにお手入れされていない素のままで。
その性格も素のままでした。
とにかく磨いてみますと…。
とても麗しいのです。
媚びず、いやらしさも無く、もじもじなさる様子はとてもきゅんとなる色香がございました。
そのジュノ様に、
あのクソガキは。
いえ、王子様は。
~~一緒に、団子の様に丸まって泣くと、絆が深まりました。
見てろよ王子。
逃した魚の大きさを、後で泣くといい!
ジュノ様をピカピカのプルプルにして見せるからなっ!
仲間とともに決意した朝でした。
ジュノ様は楽しげにお仕事をなさいます。
見ているこっちが楽しくなる様な姿は、心がほかほかして参ります。
~~おや。
時々、苦虫を噛み潰したような王子のオーラが、そこかしこで立ち昇っております。
見つからないようにジュノ様を伺うその姿は、子供の頃好きな子にカエルを突きつけた自分が被ります…。
これは、もしや…。
まあ、静観ですね。
あれだけ泣かせた後ですから。
手助けなんぞ致しません。
遠征でアドル王子は負傷して帰還致しました、
ジュノ様のおつきとなって、病棟に参ります。
ジュノ様を見た王子の瞳が見開かれました。
そうでしょう。
そうでしょう。
ジュノ様は日々、可愛いうえに美しくなっておられます。
王子の王家特有の青空の様な瞳が、一瞬透き通るようになり、秋空のように深く、深くキラキラと光出します。
その間、王子の口はぽかんと開いたままで。
いつもの不機嫌オーラは影もなく……。
ああ、私は人が恋に堕ちるのを見てしまいました。
お話しには聞いていた、ソレを見てしまいました。
王子のぽかんとした顔は上気して。
ただただジュノ様を見つめています。
うん。
良いものを見せて頂きました。
立場逆転の下克上でございますね。
ああ。
この感動をリサ様にお伝えしなくては。!
後宮の侍従にと辞令が降りた時、内心複雑でございました。
なにせ後宮には寵妃が御入りになられます。
その御心次第で、待遇が天国と地獄程に変わるのを、嫌というほど見て参りました。
皺一本、髪型一つで打たれるのを見て参りました。
そのドロドロとしたマウントの取り合いは、私の結婚というものの夢をぼっきり折るほどに、なかなかハードなものでした。
仲間たちと、とにかく頑張ろう。
後宮に入られた方を盛り上げよう。
と、就任したのですが。
……はっきり言って暇でした。
誰も入られないのです。
第一王子といえば、アドル様とおっしゃって、たいそう見目麗しい方です。
ただ。
そう、ただ。
廊下の曲がり角の向こう側から、もう存在がわかるほどにピリついた威圧をダダもれさせているか、
カビて発酵するようなものを醸しているのです。
王妃。
この国のファーストレディ。
そんな憧れで、挑んできた数々の御貴族様方と御令嬢は、王子の発酵するほどのダラけ具合と
絶えず放たれる威圧感の中で、自分では無理。
と、悟るのに時間はかかりませんでした。
ちかよんじゃねぇ!
そんな無言のオーラの中で、腫れ物に触るように皆んなが遠巻きにしておりました。
せっかく、出来る侍従を目指してスキルを上げておりました。
お身体のお手入れでしたら、髪から爪までマスターしております。
しかし掃除係など下働きなみの仕事しか無く、正直腐っておりました。
そんな時でございます。
ジュノ様がいらっしゃったのは。
ジュノ様は、見るからにお手入れされていない素のままで。
その性格も素のままでした。
とにかく磨いてみますと…。
とても麗しいのです。
媚びず、いやらしさも無く、もじもじなさる様子はとてもきゅんとなる色香がございました。
そのジュノ様に、
あのクソガキは。
いえ、王子様は。
~~一緒に、団子の様に丸まって泣くと、絆が深まりました。
見てろよ王子。
逃した魚の大きさを、後で泣くといい!
ジュノ様をピカピカのプルプルにして見せるからなっ!
仲間とともに決意した朝でした。
ジュノ様は楽しげにお仕事をなさいます。
見ているこっちが楽しくなる様な姿は、心がほかほかして参ります。
~~おや。
時々、苦虫を噛み潰したような王子のオーラが、そこかしこで立ち昇っております。
見つからないようにジュノ様を伺うその姿は、子供の頃好きな子にカエルを突きつけた自分が被ります…。
これは、もしや…。
まあ、静観ですね。
あれだけ泣かせた後ですから。
手助けなんぞ致しません。
遠征でアドル王子は負傷して帰還致しました、
ジュノ様のおつきとなって、病棟に参ります。
ジュノ様を見た王子の瞳が見開かれました。
そうでしょう。
そうでしょう。
ジュノ様は日々、可愛いうえに美しくなっておられます。
王子の王家特有の青空の様な瞳が、一瞬透き通るようになり、秋空のように深く、深くキラキラと光出します。
その間、王子の口はぽかんと開いたままで。
いつもの不機嫌オーラは影もなく……。
ああ、私は人が恋に堕ちるのを見てしまいました。
お話しには聞いていた、ソレを見てしまいました。
王子のぽかんとした顔は上気して。
ただただジュノ様を見つめています。
うん。
良いものを見せて頂きました。
立場逆転の下克上でございますね。
ああ。
この感動をリサ様にお伝えしなくては。!
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