なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

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34 テンプレだなっ‼︎

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「ジュノ。……可愛いなぁ…」


へあぉぅっ⁉︎


変な声を吐いてジュノは固まった。
名前を教えてくれと寝ぼけた事を言った王子。
さらに可愛いなぁ、と有り得ない事を連発する王子。

これはなんですか。
俺は何に巻き込まれたって言うんだ。

アレか。
頭を打って記憶喪失です。
っていうテンプレかっ⁉︎
ラヴストーリーの王道展開なのかっ⁉︎
そんなスタンダードなテンプレが始まったって言うんかっ!


口元がぴくぴくと引き攣ってると思う。
そんな微妙な空気も察せず、王子はにこりと笑った。

「花を。退屈していたから、話し相手になってくれたら。」

そんな爽やかなセリフが出てくる。
ありがとう。
嬉しい。

何処のイケメンだよっ!
あ、王子だわ。

そんな事を頭の中でグルグル思いながら、後ろの侍従に花を渡して花瓶を頼む。
豪華な花の洪水の中で、分相応に小さくて質素なその花の固まりを、王子はベッドテーブルに置かせた。

その間もずっとジュノを見つめている。
~~穴が開きそうだ。
何かの熱がその目からビームのように出て、ジュノの体に巻きついていく。
小さな椅子を勧めて、ちんまりと居心地悪く座るジュノを舐めるように見ている。


「~~君は何処の部署から?」

マジ?
それとも何かを試してるの?

「私は、その…アドル様の側妃、でして…」


「はっ!側妃‼︎き、君が俺の側妃‼︎」

食い気味に叫んだアドル王子は、かっと茹で上がった。


『~~側妃って、嫁さんって事だよな。
マジか⁉︎
グッジョブだ俺‼︎
流石だ、俺!
こんな可愛い子が嫁なのかっ!

いや、男じゃん。

でもこんなに可愛いんだぞっ!
もろタイプだっ!
いける。
いける!
充分イケるぞっ!

やったじゃん。
でかしたぞ俺!』


呪文のようにぶつぶつ呟く姿に
ゔっ! 
と、引く。
おいおい、思考がダダ漏れだぞ。


『~~ちゅうしてぇ。
どこもかしこもちゅうしてぇ。
舐めたり噛んだりしてぇ。』


たまらずジュノは椅子から飛び上がるように立ち上がった。

「じや、私はこの辺でっ!」

「えっ?」

えってなんだよ!

「俺はもう元気だ。一緒に帰りたい。」

「そ、それは担当の医師に相談して下さい!」

早く。
早くここから出たい。
お愛想スマイルにヒビが入ってます。
ベッキベキにヒビが入ってます。


くうん。
といいそうな目で王子はジュノを見上げた。
げっ。と、ジュノは引く。
いやいや、連れてけませんから。

そんな困惑と葛藤をじっと見つめてから、王子は片手を差し出した。

………。

しばらく互いにそのポーズで見合ってから、
ジュノは渋々とその手を取った。

自分より大きな手に包み込まれる。
そして軽く引き寄せられて、手の甲に唇を押し当てられた。

ひいぃぃぃっ。

鳥肌と、心の叫びを押しとどめ目を見開く。 
王子はうっとりとジュノを見上げながら
「また来てくれるか?」
と尋ねた。
ジュノはこくこくと首振り人形に転じた。

~~ゾワゾワする。
ついでに変な汗が伝う。

なけなしのスマイルを貼り付けて廊下にでると、宰相閣下の執務室目掛けて駆け出した。
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