34 / 77
34 テンプレだなっ‼︎
しおりを挟む
「ジュノ。……可愛いなぁ…」
へあぉぅっ⁉︎
変な声を吐いてジュノは固まった。
名前を教えてくれと寝ぼけた事を言った王子。
さらに可愛いなぁ、と有り得ない事を連発する王子。
これはなんですか。
俺は何に巻き込まれたって言うんだ。
アレか。
頭を打って記憶喪失です。
っていうテンプレかっ⁉︎
ラヴストーリーの王道展開なのかっ⁉︎
そんなスタンダードなテンプレが始まったって言うんかっ!
口元がぴくぴくと引き攣ってると思う。
そんな微妙な空気も察せず、王子はにこりと笑った。
「花をありがとう。退屈していたから、話し相手になってくれたら嬉しい。」
そんな爽やかなセリフが出てくる。
ありがとう。
嬉しい。
何処のイケメンだよっ!
あ、王子だわ。
そんな事を頭の中でグルグル思いながら、後ろの侍従に花を渡して花瓶を頼む。
豪華な花の洪水の中で、分相応に小さくて質素なその花の固まりを、王子はベッドテーブルに置かせた。
その間もずっとジュノを見つめている。
~~穴が開きそうだ。
何かの熱がその目からビームのように出て、ジュノの体に巻きついていく。
小さな椅子を勧めて、ちんまりと居心地悪く座るジュノを舐めるように見ている。
「~~君は何処の部署から?」
マジ?
それとも何かを試してるの?
「私は、その…アドル様の側妃、でして…」
「はっ!側妃‼︎き、君が俺の側妃‼︎」
食い気味に叫んだアドル王子は、かっと茹で上がった。
『~~側妃って、嫁さんって事だよな。
マジか⁉︎
グッジョブだ俺‼︎
流石だ、俺!
こんな可愛い子が嫁なのかっ!
いや、男じゃん。
でもこんなに可愛いんだぞっ!
もろタイプだっ!
いける。
いける!
充分イケるぞっ!
やったじゃん。
でかしたぞ俺!』
呪文のようにぶつぶつ呟く姿に
ゔっ!
と、引く。
おいおい、思考がダダ漏れだぞ。
『~~ちゅうしてぇ。
どこもかしこもちゅうしてぇ。
舐めたり噛んだりしてぇ。』
たまらずジュノは椅子から飛び上がるように立ち上がった。
「じや、私はこの辺でっ!」
「えっ?」
えってなんだよ!
「俺はもう元気だ。一緒に帰りたい。」
「そ、それは担当の医師に相談して下さい!」
早く。
早くここから出たい。
お愛想スマイルにヒビが入ってます。
ベッキベキにヒビが入ってます。
くうん。
といいそうな目で王子はジュノを見上げた。
げっ。と、ジュノは引く。
いやいや、連れてけませんから。
そんな困惑と葛藤をじっと見つめてから、王子は寂しそうに片手を差し出した。
………。
しばらく互いにそのポーズで見合ってから、
ジュノは渋々とその手を取った。
自分より大きな手に包み込まれる。
そして軽く引き寄せられて、手の甲に唇を押し当てられた。
ひいぃぃぃっ。
鳥肌と、心の叫びを押しとどめ目を見開く。
王子はうっとりとジュノを見上げながら
「また来てくれるか?」
と尋ねた。
ジュノはこくこくと首振り人形に転じた。
~~ゾワゾワする。
ついでに変な汗が伝う。
なけなしのスマイルを貼り付けて廊下にでると、宰相閣下の執務室目掛けて駆け出した。
へあぉぅっ⁉︎
変な声を吐いてジュノは固まった。
名前を教えてくれと寝ぼけた事を言った王子。
さらに可愛いなぁ、と有り得ない事を連発する王子。
これはなんですか。
俺は何に巻き込まれたって言うんだ。
アレか。
頭を打って記憶喪失です。
っていうテンプレかっ⁉︎
ラヴストーリーの王道展開なのかっ⁉︎
そんなスタンダードなテンプレが始まったって言うんかっ!
口元がぴくぴくと引き攣ってると思う。
そんな微妙な空気も察せず、王子はにこりと笑った。
「花をありがとう。退屈していたから、話し相手になってくれたら嬉しい。」
そんな爽やかなセリフが出てくる。
ありがとう。
嬉しい。
何処のイケメンだよっ!
あ、王子だわ。
そんな事を頭の中でグルグル思いながら、後ろの侍従に花を渡して花瓶を頼む。
豪華な花の洪水の中で、分相応に小さくて質素なその花の固まりを、王子はベッドテーブルに置かせた。
その間もずっとジュノを見つめている。
~~穴が開きそうだ。
何かの熱がその目からビームのように出て、ジュノの体に巻きついていく。
小さな椅子を勧めて、ちんまりと居心地悪く座るジュノを舐めるように見ている。
「~~君は何処の部署から?」
マジ?
それとも何かを試してるの?
「私は、その…アドル様の側妃、でして…」
「はっ!側妃‼︎き、君が俺の側妃‼︎」
食い気味に叫んだアドル王子は、かっと茹で上がった。
『~~側妃って、嫁さんって事だよな。
マジか⁉︎
グッジョブだ俺‼︎
流石だ、俺!
こんな可愛い子が嫁なのかっ!
いや、男じゃん。
でもこんなに可愛いんだぞっ!
もろタイプだっ!
いける。
いける!
充分イケるぞっ!
やったじゃん。
でかしたぞ俺!』
呪文のようにぶつぶつ呟く姿に
ゔっ!
と、引く。
おいおい、思考がダダ漏れだぞ。
『~~ちゅうしてぇ。
どこもかしこもちゅうしてぇ。
舐めたり噛んだりしてぇ。』
たまらずジュノは椅子から飛び上がるように立ち上がった。
「じや、私はこの辺でっ!」
「えっ?」
えってなんだよ!
「俺はもう元気だ。一緒に帰りたい。」
「そ、それは担当の医師に相談して下さい!」
早く。
早くここから出たい。
お愛想スマイルにヒビが入ってます。
ベッキベキにヒビが入ってます。
くうん。
といいそうな目で王子はジュノを見上げた。
げっ。と、ジュノは引く。
いやいや、連れてけませんから。
そんな困惑と葛藤をじっと見つめてから、王子は寂しそうに片手を差し出した。
………。
しばらく互いにそのポーズで見合ってから、
ジュノは渋々とその手を取った。
自分より大きな手に包み込まれる。
そして軽く引き寄せられて、手の甲に唇を押し当てられた。
ひいぃぃぃっ。
鳥肌と、心の叫びを押しとどめ目を見開く。
王子はうっとりとジュノを見上げながら
「また来てくれるか?」
と尋ねた。
ジュノはこくこくと首振り人形に転じた。
~~ゾワゾワする。
ついでに変な汗が伝う。
なけなしのスマイルを貼り付けて廊下にでると、宰相閣下の執務室目掛けて駆け出した。
51
お気に入りに追加
1,770
あなたにおすすめの小説
嵌められた悪役令息の行く末は、
珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】
公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。
一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。
「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。
帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。
【タンザナイト王国編】完結
【アレクサンドライト帝国編】完結
【精霊使い編】連載中
※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話
鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。
この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。
俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。
我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。
そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。
無冠の皇帝
有喜多亜里
BL
「連邦」、「連合」に次ぐ銀河系内の第三勢力「帝国」。その宗主であった「連合」五星系の一つザイン星系は「帝国」の再植民地化をもくろみ侵攻しようとするも「帝国」宇宙軍と皇帝軍護衛艦隊に阻まれる。「帝国」の元皇太子アーウィンが司令官を務める皇帝軍護衛艦隊の鉄則はただ一つ。〝全艦殲滅〟。――なーんて感じの「なんちゃってSF」。コメディ寄りのボーイズラブ(自称)。大佐(変態だけどまとも)×元皇太子(ツンデレストーカー)。
----
◆BOOTH様で同人誌を通販しています。既刊4冊(https://aarikita.booth.pm/)。
◆表紙はかんたん表紙メーカー様で作成いたしました。ありがとうございました(2023/03/16)。
----
◆「第11回BL小説大賞」(2023)で奨励賞をいただきました。ありがとうございました。
◆「第12回BL大賞」(2024)で奨励賞をいただきました。ありがとうございました。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる