なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

文字の大きさ
上 下
32 / 77

32 王子の病室

しおりを挟む
王位継承者の負傷。
その一言で王宮は蜂の巣をつついたようになった。

日頃水面下でおとなしくしていた輩が、大事な王子を討伐遠征とは何事か!
と気炎をあげる。
そうやって王は鍛えられていくんだろう!
と、他の派閥が叫ぶ。
もう、沸いた沸いたの大騒ぎだ。
後宮にも、よくわからない貴族からの手紙が届き、ジュノは頭を抱えた。
(今までがっちり守られていたんだと実感した。もちろん宰相閣下に。)

王の御前会議に臨んだ宰相閣下は、まずにこりと微笑んだ。


~~正直に言おう。
ジュノはナニがなんだかわからなかった。

御前会議の時、宰相閣下はおろしたての真っ白な手袋をする。
まずその白い手袋が、ぐん、と始まりを告げた。
貴方方は舟に乗ったことない船頭の舟に乗れるものなのか…と。
コロネ爺さんみたいな奴らが赤くなり青くなり、怒号が飛び交う。

白い手袋は、まるでオーケストラの指揮者。
五本の指がパッとひろがる。
人差し指が天を指す。
掌を上にして、指がゆるりと流れていく。
そしてぐん!と力強く握られた。

白手袋は暑苦しいその場で蝶のように舞った。
その向こうにある宰相閣下の顔は拈華微笑だ。
凄く麗しくて。
魂をもってかれた。



終わってみると、文句を言っていた貴族が、何故か村や負傷した団員に見舞金(それもゴッソリ)を出すことに決まり。
宰相閣下に賞賛されて、もう舞い上がらんばかりに上気して胸を張っていた。

なんでやねん。

まあ、いいか。

流石です!

ジュノも拍手をしていたが、上級貴族って、やっぱ怖えーと思った。



そうこうしている内に、騎士団は凱旋した。
王都の人々は熱烈歓迎だ。
ヒョルムのリーダーの固体は、腐敗を考えて皮だけを持ち帰った。
ソレが荷馬車3台をくっつけて運ぶ程にデカい毛皮で。
その映像効果と人喰いということに、人々はものすごく沸いた。
ソレを討伐した騎士団とアドル王子への賞賛と好感度が爆上がりしたのは言うまでもない。




そして王子は入院した。
以前ジュノがいた病室だ。

ヤルターシの無事を抱きついて祝ったジュノに、見舞に行ってほしいと言う。
そりゃ、俺は王子の側妃。
当たり前じゃん。
~~なんか煮え切らない感じ?
周りが奥歯に物が挟まった感じになってる。

どんなケガ?
と聞いても、行けばわかるからとしか言われない。

不安な気持ちで。
とにかくブーケを片手に出かけていく。
なぜか侍従ちゃん達に磨かれて、気恥ずかしいくらいにおめかししている。


護衛も遠くで見守って、ひと気の無い病棟。
ノックすると、
「どうぞ。」
と、声がした。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話

鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。 この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。 俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。 我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。 そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

第二王子の僕は総受けってやつらしい

もずく
BL
ファンタジーな世界で第二王子が総受けな話。 ボーイズラブ BL 趣味詰め込みました。 苦手な方はブラウザバックでお願いします。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

処理中です...