30 / 77
30 も一人絡んできました
しおりを挟む
今回の討伐はヒョルムというオオカミの一種だ。
それが村を襲っているらしい。
狼や熊は年を取って知恵ずくと、人の味を覚える奴が出て来る。
人の近くにいると、楽に家畜が狩れる。
そうやって楽して体力がついて来るうちに、あれ、人って弱いんじゃねぇ?
と気が付いたりしてくる。
もうそうなると村という集団は、巨大なバイキング会場に変化するわけで。
そうやって人を襲っている内に、攻防が知恵を加速させ。
特に力のあるのがリーダーとなって群れを動かす。
そうなった獣はもうただの害獣では無く、魔物のようだと"魔獣"と呼んで恐れられる。
統制のとれた群れは、もう自警団や傭兵では太刀打ち出来ない。
奴らは人の裏を掻き、人を喰う。
やつらの目に映る人とは、抵抗する食料ということで。
その為には討伐は単独行動を取らずに動くことが必要になる。
群れが小規模なら、ある程度連携が出来るようになった新人の訓練に使われていた。
「報告によると5・6頭ということだから、俺達が出るけどね。」
ヤルターシ様はカップを口に運びながら、いろいろ教えてくれた。
「王子が加わることへの護衛。あと、隣の領からもヒョルムの目撃情報が上がってるだろう。だから群れの規模がデカい場合も考えて、追加の要請もだしたんだよ。」
うん。万が一を考えるって大事だよね。
うんうん頷いていたら、向こうから
『ジュノ!』
と、呼ばれた。
誰かが小走りでやって来る。
リサ・ラッサム嬢だ。
侯爵令嬢にも関わらず、侍従を振り切って走って来る。
とても行動力のあるご令嬢だ。
手を振りながら走って来ると、きゅっとジュノに抱きついた。
「お顔が治ってよかったわぁ♡」
と、撫でまわす。
そそくさと立ち去ろうとしたヤルターシに声を掛けた。
「あら、逃げちゃうの?今日は貴方に御用なのよ。」
「お知り合いですか?」
口調が同学年という繋がりよりも近い。
むっちゃ砕けている。
ちょっと眉を顰めるヤルターシに、リサ嬢はおほほと口元を扇で隠して笑った。
「あら、存じませんでした?幼馴染って奴よ。」
「いじめっ子のな…。」
ぼそりとした声は、小さかったがジュノの耳にはきちんと届いた。
「ごめんなさいね。
今日はジュノに会いにきたわけじゃ御座いませんの。
遠征前のヤルターシ様に御用がありますの。」
指をぱちんと弾く。
追い縋って来た侍従が、すっとヤルターシに封筒を差し出した。
封蝋の印を見て、ヤルターシは目を見開く。
宰相閣下の印だ。
ジュノを愛でながら、リサ嬢は捕食者の目で笑った。
「ヤルターシ様。貴方に内密のお話しがございますの。」
それが村を襲っているらしい。
狼や熊は年を取って知恵ずくと、人の味を覚える奴が出て来る。
人の近くにいると、楽に家畜が狩れる。
そうやって楽して体力がついて来るうちに、あれ、人って弱いんじゃねぇ?
と気が付いたりしてくる。
もうそうなると村という集団は、巨大なバイキング会場に変化するわけで。
そうやって人を襲っている内に、攻防が知恵を加速させ。
特に力のあるのがリーダーとなって群れを動かす。
そうなった獣はもうただの害獣では無く、魔物のようだと"魔獣"と呼んで恐れられる。
統制のとれた群れは、もう自警団や傭兵では太刀打ち出来ない。
奴らは人の裏を掻き、人を喰う。
やつらの目に映る人とは、抵抗する食料ということで。
その為には討伐は単独行動を取らずに動くことが必要になる。
群れが小規模なら、ある程度連携が出来るようになった新人の訓練に使われていた。
「報告によると5・6頭ということだから、俺達が出るけどね。」
ヤルターシ様はカップを口に運びながら、いろいろ教えてくれた。
「王子が加わることへの護衛。あと、隣の領からもヒョルムの目撃情報が上がってるだろう。だから群れの規模がデカい場合も考えて、追加の要請もだしたんだよ。」
うん。万が一を考えるって大事だよね。
うんうん頷いていたら、向こうから
『ジュノ!』
と、呼ばれた。
誰かが小走りでやって来る。
リサ・ラッサム嬢だ。
侯爵令嬢にも関わらず、侍従を振り切って走って来る。
とても行動力のあるご令嬢だ。
手を振りながら走って来ると、きゅっとジュノに抱きついた。
「お顔が治ってよかったわぁ♡」
と、撫でまわす。
そそくさと立ち去ろうとしたヤルターシに声を掛けた。
「あら、逃げちゃうの?今日は貴方に御用なのよ。」
「お知り合いですか?」
口調が同学年という繋がりよりも近い。
むっちゃ砕けている。
ちょっと眉を顰めるヤルターシに、リサ嬢はおほほと口元を扇で隠して笑った。
「あら、存じませんでした?幼馴染って奴よ。」
「いじめっ子のな…。」
ぼそりとした声は、小さかったがジュノの耳にはきちんと届いた。
「ごめんなさいね。
今日はジュノに会いにきたわけじゃ御座いませんの。
遠征前のヤルターシ様に御用がありますの。」
指をぱちんと弾く。
追い縋って来た侍従が、すっとヤルターシに封筒を差し出した。
封蝋の印を見て、ヤルターシは目を見開く。
宰相閣下の印だ。
ジュノを愛でながら、リサ嬢は捕食者の目で笑った。
「ヤルターシ様。貴方に内密のお話しがございますの。」
26
お気に入りに追加
1,770
あなたにおすすめの小説

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話
鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。
この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。
俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。
我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。
そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる