なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

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25 推し活も時々休みたい

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ああ、宰相閣下。
かっこよかったなぁ。
あんなに愛されてたら幸せだろうなぁ。


ぼうっと思ってたら、扉をノックされた。
アドル王子が気まずげに入って来る。
ソファをすすめてお茶を出す。
だってここ、王子の後宮だし。
ちらちらと見て来る王子。

何?
何かいいたいの?

ちょっと荒れた気分で顎をしゃくったら、目を伏せて申し訳なさそうに聞いていた。

「いや、その…。宰相に子が産まれたと聞いて、落ち込んでいないかと…」


あっ。
と、目の前が開けた。
そうか、王子心配してくれたんだ。
俺が宰相閣下に"♡ "なのわかってて…。



「お、俺。知ってましたから!」


なんか恥ずかしくって、上擦った声で叫ぶ様に言い訳した。


初めて見た時から宰相閣下には奥様がいた。
学園でクラスメイトだったらしい。
ラブラブだって。

~~俺の推しへの包囲網を舐めないでもらいたい。

宰相閣下が屋敷に帰って、家令に荷物を渡すのは左手なのだ。とか。
子供の頃犬を飼っていたから犬が大好きで、枕カバーは犬柄なのだ。とか。
そんな諸々の事を、俺は推し活でがっちりくっきり知っているのだ。
家族構成なんて基本中の基本。
今更、奥様にショックなんて受けないし。

目を見開いて若干引き攣っているアドル王子に、尚もガンガン叩きこむ。

俺は知っていたから。
俺はショックじゃ無いから。



同じ歳ってことはそれなりなのに、後継がいない事で第二夫人だのなんだのと、周りから吠えられ続けたこと。
そんな奥様の懐妊に、執務室一同が感涙だったこと。
本当は育休を一年だって差し上げたかった事。

青空の瞳が、労わる色を持っているから止まらなくなる。
だって俺は傷付いていない。
推しの幸せは俺の幸せ。
宰相閣下が幸せで、とっても嬉しい。



皆んなでお祝いを考えた。
お金持ちのお貴族さまは、新生児でも部屋がある。
だけど貧乏人は自分のベッドで家はいっぱい。
つまり赤ん坊はベビーベッドを使う。
それに取手を付けると持ち運べるから、目を離さないように仕事が出来る。
育休して、愛する我が子をいつでもどこでも愛でれるように、ジュノはクーファンを提案した。

アドル王子は静かにうんうんと聞いている。
ソファに隣同士に座って、じっと聞いている。



お金持ちはクーファンを知らなかった。
図解説明して、ジュノが作り上げた。
余計なレースは赤ちゃんの柔肌にちくちくするかもしれない。
周りの布も何度も水を潜らせて、肌の当たりを柔らかくした。
見た目は貧相だけど、シンプルでベスト。
中にタオルで犬のぬいぐるみを作った。
そして皆んなでお渡しした。
いつもキリッとした宰相の目が潤んでいたのに、もう、ドキドキして…



いきなり王子に抱き締められた。


はうっ‼︎


と、顔を見上げると辛そうな顔してる。
気がつくと俺のほっぺはびしょ濡れで、呼吸もせずに捲し立てていたらしい。


王子の手が頭を撫でる。
人の体温が強張りを解かしていく。

俺、泣いてばかりじゃん‼︎
と、ツッコミを入れながらも。
ジュノは王子の胸に顔を埋めて泣いていた。

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