なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

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24 宰相閣下の育休

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王宮はホワイトな職場です。
宰相の執務室は、ブラック臭濃いめだけどそれは仕事量が多いから。
休日は推奨されている。

休みに、ジュノはベッドに転がっていた。
正直何もしたくない。
枕を抱いて、楽な格好でダラダラしている。
食事も断った。

宰相閣下は二週間の休みだ。

~~育休である。~~



数日前の御前会議での勇姿を、もう何度も何度も脳内でリフレインしていた。

会議場で、両脇に並んだ目付きの悪い爺さん達。
ああ、その
"学園の名士達"という、古臭い肖像画でみたぞ!
っていう、真ん中分けで耳元にコロネパンをくっつけたような頭をした爺さんが、嫌味ったらしく喋っている。
記録係として出ていたジュノは、全てをがっちりと見ていた。

「子供が産まれたので、休みをとりますだとぉ!」

そのコロネ爺さんは宰相閣下を指差した。

なにゆうとんのじゃあ!

と、吠えた。

そんなの女の仕事だ。
女がやるだろう。
何女々しいこと抜かしとんのじゃぁ。
国を守る気あんのかぁ!
と。

確かに宰相はお金持ちの貴族で。
お子様が生まれる前から、乳母だの子供部屋だの、護衛だのと用意されていた。

でもね。

「愛する人が命を懸けて自分の子供を産んでくれたのですよ。
その子は育っております。のその子に会えることは、未来永劫無いのですよ。」

普段理路整然とした宰相閣下が炎の様に吠えた。

「愛する子供が初めて見る物。初めて味わう物。そんな大事な物を見ないで、人として何が楽しいと言うのです!
乳母がいようがメイドがいようが、そんな事は関係ない!
自分の子供という愛しい者を大事にする事の、どこに女々しさがあるのですかっ!
産んだばかりの妻を思いやる事に、何のやましさがあるのですか‼︎」

王宮にはきちんとした福利厚生があります!

宰相閣下は伝説の魔王のように、爺さま達を威圧し、地獄の熱で焼き焦がした。
その熱気の渦に会議場は飲み込まれ、女性と若い男性は涙を流しながら割れんばかりの拍手を送った。



結局、宰相閣下は僅か二週間の育休を手にした。
何で二週間かというと、他よりも仕事量が半端なかったからだ。


この日の為に執務室は一丸となって仕事をした。
なんとか敬愛する閣下に満足のいく休みを差し上げたい!と。
なのに辺境に近い村で凶悪な害獣が群れて人を襲っているだの、他でダムが決壊しそうだの。
次から次へと事件が起こる。
それによる収支報告書や、派遣要請など、どんどんどんどん書類は溜まる。


「獅子身中の虫だと、裏切り者だと言われても返す言葉がありません。でも、でも、閣下がいなければ仕事の量がぁ!」
と、土下座をしたのは補佐官だった。

一段落したら、今度こそまとめて休める様にいますから!
~~うん。多分ただの空手形だよね。

宰相閣下は小さく肩を落とし、育休をとった。

「王宮の執行部の流れを徹底的に見直しましょうね。」と、毒のある笑顔を浮かべながら。
~~多分、流れよりも宰相閣下なみの要石魔人が必要なのだと思います。



何故か全員で号泣しながら、宰相閣下の育休を万歳三唱で送り出した。


……そして今がある。
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