なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

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22 お茶会は御開きに

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令嬢達は帰りの挨拶の時、順順にジュノを抱きしめて行った。

「またここ王宮に顔をだすわ。」

「頑張って。」

「二人の邪魔はしないわよ。」

~~あれ?

「大丈夫。お似合いよ。」

~あれあれっ?
ちょっと待って‼︎
何か路線が違う気がする!

いつの間にか自分の腰を抱いている笑顔の王子に、
ちょっと違うんじゃない?
軌道修正しなくていいの?
と、熱視線ビームを送る。

それをロイヤルスマイルで跳ね飛ばし、結界を張った王子の笑顔は固定のままだ。

‥‥伝わって無い!
ちぇっ。
宰相閣下みたいに、阿吽の呼吸は無理みたい。


なんか逃した魚は大きかったっていうか。
漁として囲い込みが出来なかったって言うか。

……このお茶会は側妃のお披露目。
という第一目標は果たした。
でも正妃を探すというお題目は玉砕した気がする…
なんとなく燃え尽きて灰になった気がする。




撤収作業を任せて、ジュノは王妃様に御礼を申し上げた。

「ありがとうございます。
…いろいろ申し訳御座いませんでした。」

その言葉に王妃様は、花が綻ぶ様に笑った。
ああ熟女になられても美少女のように可憐だ。

「こちらこそ、ありがとう。
いろいろ良いものを見せて頂いたわ。」

「いえ、お仕事ですから。」

そう、これは側妃という役職。
それ以外ではありません。
そんなジュノを透かし見るように、王妃様は微笑んだ。
柔らかな、手入れされたその白く美しい指先で、ジュノの髪を優しく耳元に掛ける。
そして睦言のように、ゴールディレッドに塗られた唇を軽く尖らせると、色っぽく囁いた。

「アドル王子をこれからも、よろしくね♡」

……血を吐きそうになった。



どことなく深い所にダメージを負った気がする。
だがここは職場。
そして自分はここの事務員。

ギギギっ…と、軋む身体を動かして、アドル王子と向き合う。

「今日はありがとうございました。
おかげ様で無事に終わりました。」

(正妃は見つからなかったけどな。)

ほら、俺って大人じゃん。
ロイヤルスマイル爆弾を懐に仕舞い込んで、アドル様はうんと頷いた。

「こっちこそ、すまなかった。」


OH‼︎
空耳じゃ無いっすね‼︎


~~まあ、何という事でしょう。
王子が大人の階段を一段登られましたわっ‼︎
何か感動でうるうるしちゃう‼︎



すっと手が右の頬に触れた。

「まだ腫れてるな… 痛かったろう。
本当にすまなかった。」

「………。」

大丈夫だよん。
という言葉は、何故か出てこなかった。
じわじわと頬が熱くなっていく。


王子の青空の瞳は宝石みたいで、キラキラとジュノを映していた。

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