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15 逃げる者踏み留まる。
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「受け取ってください!」
あれから3日。
いつでもどこでもジュノは現れる。
何故だ。
点在している四阿。
中には、隠し通路かっ‼︎
と言うべきものもあるのに。
いつでもどこでも書類が突き出される。
これを受け取ったら負けだ!
アドルはがんとして受け取りを拒否して、ひたすら逃げる。
やがて逃げ場が無くなって、しぶしぶ騎士棟に避難した。
「なぁ、ジュノとなんかあったの?」
ヤルターシとストレッチしていたら、興味津々で聞いてきた。
「ジュノが妖精の様に、おまえのいる所に出没してるって噂になってるぜ。」
妖精?妖怪だろ。
俺が逃げ回ってるのが、噂にまでなってるのか…。
アドルは顔を顰めた。
「茶会の要請だ…。」
「うわぁ。集団見合いって奴か…」
ヤルターシも婚約者が居無い。
いわば自由を愛する仲間だ。
「でも、アドルは側妃を設けたって聞いたぜ。紹介してくれないのか?」
側妃。
その言葉に、伸ばしていた腕をぶんと離す。
「側妃は陰謀だ。茶会もな。」
「……。」
それだけで何かある。
聞いてはいけない。と思ったのだろう。
ヤルターシは黙った。
「おはよう御座います。」
訓練場の入り口で元気な声がする。
わらわらと騎士達が吸い込まれる様にそっちに向かい、なんか楽しそうな雰囲気が湧き上がってる。
その中から小柄な人影が一つ抜けると、こっちへ近づいてきた。
「ヤルターシ様。おはようございます。」
朝からにこにこなジュノがいた。
「王子。コレお願いします。」
ヤルターシに挨拶しながら、横にいるアドルにおざなりに書類を突き出す。
「嫌だ。」
「わかりましたー。皆様の迷惑になっちゃいけないので。じゃ、また。」
あっさりと踵を返す。
「えー、ジュノ。もう帰るのか?」
「今度の休みはいつなの?」
騎士達がジュノを囲んで話しながら去っていくのを、アドルは肩透かしな気分で見送った。
受け取れ。
受け取らない。
が、様式美のようになって来ている。
そのやりとりが少ないのは、淋しいような、なんと言うか……
「おまえ、もっとコッチに訓練にこいよ。」
ジュノを見送りながらヤルターシが言う。
「なんでだよ。」
「そしたらジュノがもっと来るだろ。皆んなも割と狙ってんだよ。」
「はぁ⁉︎あの生意気な奴だぞっ!」
「何言ってんだよ。可愛いし、いつも楽しそうだし。心がほわぁんってなるって、人気No.1だぜ。俺だって、長男じゃなかったら狙っちゃうけどな。」
「………。」
苦虫を噛み潰したようなアドルは、やる気が失せたと言って、そのまま騎士棟を後にした。
出没の噂にまでなってたら、たまんないよな。
アドルはぶつぶつと考えた。
まぁ、どうしても出席して下さいと泣いて頼むんなら、出てやってもいい。
俺に跪いて、お茶だのなんだのと世話をして、3歩下がってるんなら認めてやってもいいけどな。
そんな事をぐるぐる考えて、夜になって思い立った。
そうだ、後宮に行こう。
あいつだって、人前で頭を下げたくは無いよな。
後宮の部屋で頭を下げるなら、書類を受け取ってやってもいいかもな。
あれから3日。
いつでもどこでもジュノは現れる。
何故だ。
点在している四阿。
中には、隠し通路かっ‼︎
と言うべきものもあるのに。
いつでもどこでも書類が突き出される。
これを受け取ったら負けだ!
アドルはがんとして受け取りを拒否して、ひたすら逃げる。
やがて逃げ場が無くなって、しぶしぶ騎士棟に避難した。
「なぁ、ジュノとなんかあったの?」
ヤルターシとストレッチしていたら、興味津々で聞いてきた。
「ジュノが妖精の様に、おまえのいる所に出没してるって噂になってるぜ。」
妖精?妖怪だろ。
俺が逃げ回ってるのが、噂にまでなってるのか…。
アドルは顔を顰めた。
「茶会の要請だ…。」
「うわぁ。集団見合いって奴か…」
ヤルターシも婚約者が居無い。
いわば自由を愛する仲間だ。
「でも、アドルは側妃を設けたって聞いたぜ。紹介してくれないのか?」
側妃。
その言葉に、伸ばしていた腕をぶんと離す。
「側妃は陰謀だ。茶会もな。」
「……。」
それだけで何かある。
聞いてはいけない。と思ったのだろう。
ヤルターシは黙った。
「おはよう御座います。」
訓練場の入り口で元気な声がする。
わらわらと騎士達が吸い込まれる様にそっちに向かい、なんか楽しそうな雰囲気が湧き上がってる。
その中から小柄な人影が一つ抜けると、こっちへ近づいてきた。
「ヤルターシ様。おはようございます。」
朝からにこにこなジュノがいた。
「王子。コレお願いします。」
ヤルターシに挨拶しながら、横にいるアドルにおざなりに書類を突き出す。
「嫌だ。」
「わかりましたー。皆様の迷惑になっちゃいけないので。じゃ、また。」
あっさりと踵を返す。
「えー、ジュノ。もう帰るのか?」
「今度の休みはいつなの?」
騎士達がジュノを囲んで話しながら去っていくのを、アドルは肩透かしな気分で見送った。
受け取れ。
受け取らない。
が、様式美のようになって来ている。
そのやりとりが少ないのは、淋しいような、なんと言うか……
「おまえ、もっとコッチに訓練にこいよ。」
ジュノを見送りながらヤルターシが言う。
「なんでだよ。」
「そしたらジュノがもっと来るだろ。皆んなも割と狙ってんだよ。」
「はぁ⁉︎あの生意気な奴だぞっ!」
「何言ってんだよ。可愛いし、いつも楽しそうだし。心がほわぁんってなるって、人気No.1だぜ。俺だって、長男じゃなかったら狙っちゃうけどな。」
「………。」
苦虫を噛み潰したようなアドルは、やる気が失せたと言って、そのまま騎士棟を後にした。
出没の噂にまでなってたら、たまんないよな。
アドルはぶつぶつと考えた。
まぁ、どうしても出席して下さいと泣いて頼むんなら、出てやってもいい。
俺に跪いて、お茶だのなんだのと世話をして、3歩下がってるんなら認めてやってもいいけどな。
そんな事をぐるぐる考えて、夜になって思い立った。
そうだ、後宮に行こう。
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