なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

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14 逃げる者と追う者

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さんざっぱら探しても、アドル王子は見つからなかった。
おサボり野郎は、要るべき所にいないって事だ。
~~舐めるなよ。
俺の人海戦術。


次の日、ジュノは下働きや庭師に頼んだ。
彼等の連絡網は絶大だ。
むろんギブandテイク。
それはもちろんお金では無い。

庭師にとって雑草が、実は馬の胃腸を整える薬草だったり。
洗濯している人の手荒れに塗る油が、厨房で棄てられるものだったり。
そんな橋渡しをしている。
皆んなでwin-winな感じ?


そうして見つけた王子は、城の中に点在する四阿の一つにだらけていた。
早速分厚い書類を持って駆けつける。

「アドル様。アドル様の為のお茶会があります!」

面倒くさいので、挨拶をすっ飛ばして喋る。
うとうとしていたアドルは、ビクッと飛び上がって目を見開いた。

「これ、資料です。出席お願いします。」

突き出した資料を手で払われる。
ちっ‼︎  と、舌打ちされてちょっとドキッと固まる。

「そんなもの、行かん‼︎」

そう叫ぶとアドル様は起き上がって踵を返した。

「あっ、待ってください。話を…」

「うるさい!」

全拒否の背中が、近寄るな危険を語っている。


~~今は見逃したけど。
俺を甘く見ちゃいけないよ。

ジュノはふふふん。と笑った。
何処にいても出没して、根負けするくらい書類を突き出してやる。
逃したりしないからね。
しつこさには自信があるんだ!





宰相閣下はゆっくりとお茶を楽しんだ。
長いこと懸念材料だった第一王子の妃というものが、なんとかなりそうな気がする。

あの俺様で。
そうかと思って攻めたら無気力に変じて、どうにもこうにも掴みどころのなかった、あのアドル王子を。
押して押して、押してるじゃあありませんか。

ジュノはとてつもなく、良い拾い物だった。

ジュノは下級貴族だった。
しかもかなり貧乏寄りの。

成る程、持たない者の戦い方は、目新しいものがありますね。
下働きや厩番などを使って場所を特定しましたか。

戦力と数えて無いものを上手く使い、その能力を引き出す。


素晴らしい! 


この国を支えているのは貴族では無く平民。
平民を上手く使う事こそが国の繁栄をもたらすのですから。

あの能力。
諜報部に欲しいですね。
でも、真っ直ぐ斬り込むあの性格は、騙し合いにはむいてませんね。
でも、とても好ましい性格だ。


宰相閣下はふうっと息を吐いた。
真面目で努力家だった王子が、いきなりおサボり魔人となった。
心をポッキリ折られたようだ。
出来る者は挫折に弱い。

まぁ、折れたのが今で良かった。
王になってからでは目も当てられ無い。
早く克服して頂きたいものだ。


宰相閣下はジュノの頑張りにエールを送り。
王子の復活を望んでいた。





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