なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

11 後宮の初夜 下

ドスドスと足音がする。

ひいぃぃぃぃっ‼︎

ジュノはきつく布団を抱き込んだ。
どこにも逃げ場は無い。
こんな無防備な格好で、外なんか出られない。



ノックもせずに、バンと扉が開いた。
恐る恐る見上げると、そこには唖然とした顔のアドル王子がいた。
王子はずかずかと部屋に入ると、ジュノを見下ろす。

「ふぅん。宰相の冗談かと思ったら。
本当に側妃になったんだな。」

目が、口調が、嘲っている。
ジュノはぐっと唇を噛んで睨みつけた。

「なんだ、その目は。文句でもあるのか。」

腕を組んで、王子は余裕で見下ろしている。
文句はある。
でも言えない…。

屈辱で真っ赤になりながら、ジュノは視線を外して下を向いた。



沈黙が流れる。


沈黙が流れる。

無音が痛い。
特に心が……。



　ちっ‼︎


舌打ちがしんとした部屋に響き渡った。

「それで俺が勃つとでも思ったのか。」

いいえ、決して。

「い・い・か。よく聞けよ。
何を勘違いしたのか知らんが。」

王子はベッドに膝を付いてジュノと目を合わせた。
してやったり感が目の中で踊っている。

「俺はおまえが嫌いだ。俺様のありがたいブツを挿れてもらえるなんて思うなよ。」



はあぁぁぁぁっ……⁉︎

ジュノが言葉を失っているうちに、王子はとっとと出て行った。
バタンと下で扉が閉まる音がする。

怒りと惨めさで身動きできず。
ジュノはそのまま朝を迎えた。



侍従達がわらわらと来たので、とりあえず泣いた。
見栄を張ったら、後が大変なのを昔から実感しているから、とりあえず泣いた。

勝手に決まったおまえなんぞ抱けるかって…。
皆んなの努力を無駄にしちゃった。
ごめんね。　

なんて言ってたら、えぐえぐとマジ泣きになって。
背中を撫でられて、抱きついて泣いて。
四人で団子のようにスクラム組んで、わんわん泣いた。

もう水分出ないぞってくらいに泣いたら、なんか空っぽになった。
ああ、とにかくここでやってくしかないんだなって、ストンと落ち着いた。