なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

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10 後宮の初夜  上

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「とりあえず正妃が決まって、事務員に戻った時の為に、私の所属にしましょうね。」

宰相閣下は麗しい笑顔でそう仰った。

「配属先は私の所。何か困ったら連絡して下さい。」

昼でも夜でもOKですよ。
そう言われて王宮の敷地にある第一王子専用の後宮に連れてこられた。

当たり前だが専用である。
塀があり、入り口には兵が控えている。
宰相閣下とはいえ、雄は許可が無いと入れない。
王の後宮は戸建てみたいだが、王子の後宮はマンション形式だ。
……ムダが無い。

一階が全員集まれるサロンのようになっていて、お客様との食事も出来るようになっている。
三階のフロアは全てが正妃様の予定。
そして二階には部屋が四つ。
つまり、正妃一人に四人までなら側妃オッケーの仕組みらしい。

4つの扉の横には付属の扉がある。
控えの間だって。

ほら、側妃があり得ないおねだりをしないか。
とか、ヤバめのプレイで死にかけないか、とかを見張る侍従がいるそうだ。
……声丸聞こえって、ありえない。
恥ずか死ぬ。


侍従に引き渡されて、じゃあ。と言われた。
えええぇぇ…っと、心細さに震えるジュノを、侍従が優しく部屋に案内する。

二階の部屋には、なんと言う事でしょう。
もう、自分の荷物が鎮座ましましている。

王子をもてなす為の部屋と、その隣に寝室。
…ベッドがでかい。
四人で寝れそうなほどにでかい。
そしてトイレと浴室。
もう意図と目的がはっきりしているよね。
でも機能的なその部屋は、ムカつく事に実家くらいの広さだった。
そして、小さな扉があり、控えの間に続いているそうだ。



侍従達は頬を染めてプルプルしていた。
男が来ちゃってごめんねー
と、思っていたら、初めての入居に感動したらしい。

「配属されてから、掃除以外する事が無くって。」
「もう、どなたでもいいからお世話したくて。」

嬉し涙にくれながら、三人はジュノに訴えた。

「わかった。俺、頑張って正妃を探す。」

拳を握って宣言したら、盛大に拍手された。
そして夕食を食べた後。


「じゃあ、とにかく磨きましょう♡」
「そうね、初めての夜ですし。」
「久々に腕がなりますわ」

えい、えい、おー‼︎
と、叫びながら三人はジュノに取り付いた。
えっ、えっ、と言葉を出すまでもなく剥かれる。
そのままお湯に突き込まれ、洗われた。

ジュノはカラスの行水だ。
湯舟に入らず、シャワーのみ。
清潔だったらオッケーじゃん。
は、ダメだったらしい。

蒸され、揉まれ、擦られた。
船乗りが大渦に飲まれた時はこんなだったろう。と言う試練が待ち受けていた。

ナニからナニまでピカピカにされ、疲れ果てて声も出ないうちに、薄化粧まで施された。

「まあ、お美しいですわ!」

出来上がりに三人は頷いた。

櫛削られた髪は艶々で。
もともと綺麗な顔は化粧でくっきりして。
その唇は喰いつかれるのを待っているように、プルプルだ。
ついでと言うなら、半泣きなのでエメラルドグリーンの瞳が潤んで色っぽい。

「あ、あの…閨係がいるから、閨は要らないと言われて…。」

蚊の鳴くような声で反抗したが、三人は
『初夜ですから‼︎』
と、バッサリ切って捨てた。


~~そんな訳で、あり得ないような透け感のナイトドレス(男なのに。)を着て。
でもその無防備さに、せめて布団を着ようとベッドに潜る。
~見えなかったら安心する。

なんでこんな事になっちゃったんだろう…。


では、ごゆっくり。
と、侍従が下がってからしばらくして。
建物の一階の入り口がバタンと閉まる音がした。
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