なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

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9 側妃のお値段。

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当たり前だが、ジュノは言葉を失った。
て、いうか脳が働きを拒否した。

側妃。
なにそれ、美味しいの?


「ご存知の通り、成人王族には、それぞれ後宮があります。陛下には、王妃のお住まいとしての後宮があり、そこに側妃がいらっしゃいます。」

宰相閣下のイケボがバックミュージックのように流れていく。

「アドル様にもご用意致しました。もちろん予算も組みました。しかし、誰一人お入りになられない…。」

宰相閣下の、くっ!という苦悶の声で、ジュノは我に返った。

「そこの警備の者。使用人。たとえ最小限度に抑えていても、はっきり言って無駄遣い!
~~そして我らは正妃が欲しいのです。」

宰相閣下の麗しのお顔がグンと迫ってきた。
そして、なんと言う事でしょう!
宰相閣下の手が!
宰相閣下が手を!
手を握って、迫って来る‼︎

興奮してふんすと息を吐くと、鼻に詰めたティッシュがぽんと飛んでいった。

「あらゆる者とお近づきになる君なら。
君なら、アドル様のお好みを把握して、正妃を見出せるに違いありません!」

「…いや、わ、私は"混ぜるな危険"と言われた者でして…」

「あの無気力なアドル様を、あれ程までに気を立たせた者ならば、その気にさせる事も出来ます‼︎」

出来る。
君なら出来る。
宰相閣下の深い紺色の瞳が、ジュノの脳味噌にガンガンと沁みていく。

ふうわりと良い香りが漂って、
宰相閣下の体温まで感じて、
ジュノはうっとりと口を開けていた。


「それにね。」

宰相閣下は不敵に、ニヤリと笑った。

「一般の事務員の給料は月に金貨3枚。それに比べて側妃は金貨10枚。さらにお役御免の後もが支払われます。」


なんですとっ!

「もちろん閨ごとは閨係がおりますから。君はただただ、アドル様を令嬢達との出会いに引っ張り出し、誘導するだけです。~~上手く正妃が決まったら、ボーナスとして金貨100枚出しましょう。その上で側妃の条件そのままに、一般事務員に戻します、」




さらにボーナス‼︎

そんな言葉が頭の中でクルクルと踊る。

まて、美味い話にはナニかある。
まて、落ち着け自分。

そっと宰相閣下から手を離し、深呼吸する。

待てよ。
この仕事って、サーカスの猛獣使い並みの能力がいるのでは…。
あのアドル王子相手に…。

無理。無理。無理無理無理無理無理……

ブンブンと頭を横にスウィングするジュノの頬を、宰相閣下はがしりと止めた。

手が。
手が頬に。
手が~~

視界の全てが宰相閣下の顔である。
ジュノの理性は線香花火のように燃え尽きた。

「ねっ♡」

甘い、宰相閣下の囁きに、YES♡ 以外にあっただろうか。
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