なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

たまとら

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8 マジですか、

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「ジュノ・カルナン君。宰相室の事務を希望。……だね。」

「……はい。」

小さく返して、いかん‼︎と、思った。
こんなもじもじおずおずしてないで、ハキハキしなくては雇って貰えない!
出来る男に見せなくては‼︎

直ぐに背筋を伸ばして、真っ直ぐ。
そう、真っ直ぐ宰相閣下を見る。

「はい。希望しております!」

宰相閣下はふっと微笑んだ。(眩しい。)



目の前に、顔を真っ赤に茹で上げた青年がいる。
ダークブラウンの髪は柔らかそうで。
エメラルドグリーンの瞳が、うるうるとこっちを見上げている。
お仕着せの制服から覗く細い首も真っ赤っかで。
何より鼻にティッシュを詰めている。
‥‥面白すぎるだろうが。

部屋に入っていきなり鼻血を噴いた時は、爆笑しそうになった。

手元の資料を眺める。
相互評価は"A"すこぶる良い。
特に目下の下女や清掃係。庭師など。
これ、ファンクラブ?
と、言わんばかりに高い。
見目の麗しさも相まって、各部署から引き合いが多い。

「実は配属先ですが……」

その声にジュノはごくりと唾を飲んだ。
身を乗り出すような無礼はせずに、顎を引いて背筋を伸ばす。


「………あなたはアドル様と面識がありますよね。」

~~ぐんと溜めた後のセリフに、ちょっとガクッとした。

なんだアイツか。
アイツが実家王宮の人事に横槍を入れたのか。
アイツが絡んできたなら、もう終わりだ。
望むようにはならないよね。
下手したら試用期間なのに打ち切られちゃうかも知れない。

せっかく。
せっかく、宰相閣下の近くに来れたのに。

俺のバカ、バカ。

ジュノの頭の仲でぐるぐるとノリツッコミが暴れ回り、やがてすとんと落ちた。

「はい。存じております。学園で同じ学年でしたから。」

さようなら宰相閣下。
ちょっとの間でしたが幸せでした。

脳内自己完結でふう、と息を吐くと淡々と答える。
もう、どうなってもいいし。


「実はアドル王子に困っておりまして。」

でしょうね。

「弟のラガロ様でさえ婚約者がいらっしゃいますが、アドル様は嫌だとおっしゃいまして…」

まあ、唯我独尊だしね。

「ご存知の通り、やる気もなくお過ごしになられてまして。」

あのクソ王子、相変わらずか。

「こちらが意見すると、なら王位継承権を放棄するとまでおっしゃって。」

はあぁ‼︎

ジュノは慌てて座り直した。

なんですと‼︎ という驚愕の表情に、宰相閣下がうんと頷く。
あ、阿吽の呼吸ってカンジ?
こ慣れた夫婦みたいで、こんな時なのにちょっと嬉しい♡

「ラガロ様は隣のジョコム皇国の姫と婚約されて、御行きになるともう決まっております。アドル様に、なんとしても結婚して頂かないといけないのです。」

………なんか、嫌な予感がしてきたぞ。

ジュノはお尻をもじもじと動かした。
そんな機密事項、新人の自分に言うなんて。
…その…

「ですから、まず君に側妃となって、アドル様の正妃をお探しになる手伝いをしていただきたいのです。」
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