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6 幸せはどこかズレている。
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ジュノは卒業後、晴れて王宮に就職が決まった。
貧乏な実家は泣いて喜び……
しょうがなく給料から毎月いくばくか仕送りする事になった。
~~だって、さらに六男まで産まれてるんだぜ。
ありえない。
でも寮があるから全然平気。
賄い付きだし。
お仕着せだから衣裳代もかからないし。
あと、あと、宰相閣下と同じ空気を吸ってるって事だぜー‼︎
ああ、鼻血が出そうだ……。
とにかくジュノはルンルンだ。
毎日が薔薇色で幸せだ。
楽しそうに挨拶をして。
嫌な顔ひとつせずに、平民の厩番にも手を貸すジュノは、強面の騎士様からベテランの侍従の懐にまでするりと入り込んだ。
お試し期間が終わったら、所属部署が決まるっていうし。
頑張っちゃう♡
今日もジュノはご機嫌だ。
もっと威厳のある歩き方をしてね。と、注意されたけど、楽しくって弾む足取りになっている。
希望の部署は?って言うアンケート用紙に、バッチリ"宰相室"って書いておいた。
宰相閣下、俺を拾ってくれたらいいなぁ。
「あっ、君っ!」
各部署に手紙を配達していたら声を掛けられた。
お仕着せは青ライン。
第一王子の侍従だ。
焦って顔色の悪いその人は、アフタヌーンティーのカートを押していた。
「た、頼む。お茶をアドル様に届けてくれ、」
変な汗をかいている。
……わかります。
いきなり自然に呼ばれたんですね。
にっこり頷くと、彼は一瞬ぽかんとした。
でもすぐに ゔっ‼︎ と内股になってよろよろと走って行った。
アドル王子の部屋…っと。
王宮の地図はバッチリ頭に入ってる。
迷う事なく部屋に着くと、軽くノックした。
「入れ。」
礼をして入る。
~~そこに宰相閣下がいた‼︎
「お、お茶をお持ちしましたぁっ」
いやだ。
声が上擦っちゃう。
頬がかっと熱くなって、紺色の目に釘付けに……
「なんでおまえがここにいる!」
野太い声がして、我に返る。
そういえばここは第一王子の部屋。
なんだ、いるじゃん。
そばにいるじゃん。
宰相閣下しか見えてなかったよ。
えへっ♡
照れ隠しに笑って礼をとる。
「失礼しました。お茶をお持ちしました。」
「ちがーう! 何故ここにいるかと聞いている‼︎」
ずかずかと前を塞いで王子は怒鳴る。
やめてよぉ。
宰相閣下が見えないじゃない。
「あ、私はこの度、王宮にお勤めさせて頂くことになりました。」
とりあえずお愛想スキルでにっこりと微笑む。
ぐっ‼︎と押し黙る王子と、目を丸くする宰相閣下。
~~ああ、びっくり顔の宰相閣下も素敵♡
お茶の入れ方には自信がある。
お茶の産地で有名なお貴族様の侍従に、直々に習ったからだ。
がぶがぶ飲んでる王子の横で、宰相閣下はゆっくり香りをティスティングして飲んでくれた。
「うん。美味しいね。」
はい。
いつでもあなたの為にお入れします。
目の前に宰相閣下がいる。
ああ、幸せ♡
貧乏な実家は泣いて喜び……
しょうがなく給料から毎月いくばくか仕送りする事になった。
~~だって、さらに六男まで産まれてるんだぜ。
ありえない。
でも寮があるから全然平気。
賄い付きだし。
お仕着せだから衣裳代もかからないし。
あと、あと、宰相閣下と同じ空気を吸ってるって事だぜー‼︎
ああ、鼻血が出そうだ……。
とにかくジュノはルンルンだ。
毎日が薔薇色で幸せだ。
楽しそうに挨拶をして。
嫌な顔ひとつせずに、平民の厩番にも手を貸すジュノは、強面の騎士様からベテランの侍従の懐にまでするりと入り込んだ。
お試し期間が終わったら、所属部署が決まるっていうし。
頑張っちゃう♡
今日もジュノはご機嫌だ。
もっと威厳のある歩き方をしてね。と、注意されたけど、楽しくって弾む足取りになっている。
希望の部署は?って言うアンケート用紙に、バッチリ"宰相室"って書いておいた。
宰相閣下、俺を拾ってくれたらいいなぁ。
「あっ、君っ!」
各部署に手紙を配達していたら声を掛けられた。
お仕着せは青ライン。
第一王子の侍従だ。
焦って顔色の悪いその人は、アフタヌーンティーのカートを押していた。
「た、頼む。お茶をアドル様に届けてくれ、」
変な汗をかいている。
……わかります。
いきなり自然に呼ばれたんですね。
にっこり頷くと、彼は一瞬ぽかんとした。
でもすぐに ゔっ‼︎ と内股になってよろよろと走って行った。
アドル王子の部屋…っと。
王宮の地図はバッチリ頭に入ってる。
迷う事なく部屋に着くと、軽くノックした。
「入れ。」
礼をして入る。
~~そこに宰相閣下がいた‼︎
「お、お茶をお持ちしましたぁっ」
いやだ。
声が上擦っちゃう。
頬がかっと熱くなって、紺色の目に釘付けに……
「なんでおまえがここにいる!」
野太い声がして、我に返る。
そういえばここは第一王子の部屋。
なんだ、いるじゃん。
そばにいるじゃん。
宰相閣下しか見えてなかったよ。
えへっ♡
照れ隠しに笑って礼をとる。
「失礼しました。お茶をお持ちしました。」
「ちがーう! 何故ここにいるかと聞いている‼︎」
ずかずかと前を塞いで王子は怒鳴る。
やめてよぉ。
宰相閣下が見えないじゃない。
「あ、私はこの度、王宮にお勤めさせて頂くことになりました。」
とりあえずお愛想スキルでにっこりと微笑む。
ぐっ‼︎と押し黙る王子と、目を丸くする宰相閣下。
~~ああ、びっくり顔の宰相閣下も素敵♡
お茶の入れ方には自信がある。
お茶の産地で有名なお貴族様の侍従に、直々に習ったからだ。
がぶがぶ飲んでる王子の横で、宰相閣下はゆっくり香りをティスティングして飲んでくれた。
「うん。美味しいね。」
はい。
いつでもあなたの為にお入れします。
目の前に宰相閣下がいる。
ああ、幸せ♡
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