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田舎の領地暮らし

1 じいちゃんのはなし

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じいちゃんは"伝説の男"だった。
『我が国の宝』を奪おうと、襲いかかってきた隣国。
漁夫の利を狙って、侵攻してきた別の国。
盗まれた宝を真ん中に、やがて力は拮抗して三すくみになった。
その三つ巴の戦争は歴史の教科書にも載っている。
そこに従軍したじいちゃんが、戦局をひっくり返したのだ。

宝を無事に取り返し、隣の軍を叩きのめして制圧し。
ハイエナの様な国を叩きのめして追っ払い。
ついでに喚くばかりで役立たずなウチの上層部を制圧した。(らしい)

平民なのに、その功績で一代騎士伯に叙爵されたほどだった。
じいちゃんの暴れっぷりに自国の兵すら、"惨虐魔王"とか"殲滅の赤鎧"だのと、かっけぇ二つ名で呼んでいた。(らしい)

そんなじいちゃんの家名は『サリニャ』というプリティな物だ。
じいちゃんは平民だから家名が無かった。
惨虐アトラサティとか殲滅アナイアレイトとかいう厨二病たぎる単語から、かっけぇ名前をとらなかったのは、お貴族様のやっかみのせいだと、田舎のおっさん達が言っていた。
隣国では悪魔が人を齧る音が、"サリサリニャーマ"と聞こえるって伝承があるそうで、それな☆ってなったらしい。

『実戦的で世紀末のなんか的な威圧感のあるゴリマッチョで、しかも劇画タッチなイケメン。』
そんなじいちゃんを見たばあちゃんは、その雄臭さにごっくんと一目惚れしたそうだ。
なんせ貴族のぼんぼんはひょろい。
ぺらっぺらに薄い。すっごく物足りない。
だから肉食系の暑苦しいじいちゃんに、心身共にうっとりした。そうだ。

先代は青い血を脈々と受け継ぐ貴族だったが。
薄くなった貴族達はせいぜい一人した後継を設けられない。
家はやがて先細りが見えている時に湧いて出たその恋心に、
「それもアリだな。」となったらしい。

ばあちゃんはグラディス公爵家の一人っ子。
爵位剥奪。そして子供を後継者として渡すのなら。
と言われてあっけらかんと頷いた。
だって上級貴族は手ずから育児はしない。
上手く育ててくれるなら大丈夫だもーん。

ばあちゃん、脳筋か?
恋に生きるばあちゃんは、結婚して田舎で領地も拝領してるんるんだった。
で、生命力溢れるじいちゃんは5回も孕ませて。
先代は五人の孫に貴族教育を施して、手持ちの爵位を与えて。
目論見通りに貴族社会に蔓延っていった。

じいちゃんは正直、戦う以外は中々ポンコツで。 
そんな姿も愛しいと、ばあちゃんが領地経営した上に舵取りもしてたから上手く行ってた。
領地にはじいちゃんを慕う者たちがやって来た。
いつのまにかブートキャンプ場。
ばあちゃんはそこの多種多様の中から補佐だの側近だのをチョイスして、上手く仕組みを作っていった。

仲良しな二人だったが。
ある日落馬してばあちゃんが死んだ。

嘆くじいちゃん。

でもそれよりも、今代(つまり父上)はガタブルだった。
生まれた時から離れていたので、自分の父親(つまりじいちゃん)に馴染んでいない。
実は巨大で迫力満点なあの劇画タッチが怖いのだ。
だってほら、自分生粋の貴族だから。

母親というストッパーが消えたあの"荒くれ者の集団"がどんな問題を起こすかわからない…。
今代の心臓はノミだった。
どうしよう。どうしよう。ただオロオロしていた。


そんな時。
正妻がリラクをぶっ込んだのだ。
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