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リラクの最低な日々

5 お茶会の波乱 上

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「おじいちゃんっ子は三文安」って言葉があるが。
リラクは安くない‼︎
じいちゃんは甘かったが、ちょっとズレてた。
掴まり立ちしだしたリラクに大剣を渡して、「何故振れない?」と真面目に聞いて来る男だった。
おかげで周りは良識人が多かった。

一番の参謀であるばあちゃんは顔も知らない。
でもばあちゃんが作為的に集めた兵士達は、なかなかだった。
まぁ、リラクを無事に育てたことから優秀で機転が効く事がわかる。

おかげでマナーだの勉強だのは、武器の一種として厳しく叩き込まれた。
おかげで隠密スキルも無いのに、気配を殺して忍び寄る事も。
頭に本を乗せたまま、剣の練習することもできる。

一般人は二の足を踏む様な、劇画調なゴリマッチョ揃いの中で。
リラクは可愛がられて面白おかしく過ごしていた。

そんな田舎生活が、第二王子のおかげで終止符が打たれたのだ。



第二王子のお茶会という集団見合いは、庭がよく見える開放されたホールだった。
第二王子はもう直ぐ成人ということで、下三歳までの令息が招集されていた。
言っとくが、この下三歳というのは、王子の趣味だ。
年上は嫌。乳臭いのは嫌。とゴネてこうなった。

第二王子は金髪碧眼のまるっと王子様ズラだった。
性格悪そうな傲慢感がオーラとなって醸されている。
脇の御学友も、舐める様な目付きで辺りのきゃっきゃうふふの御令息方を見ているので、正直近くに寄りたく無かった。

なのに隣も、その隣のおぼっちゃま達も
「やだぁ、素敵♡」と、くねくねしている。
わけわかんない!と思いつつ、にこにこをキープする。
そのまま並んで挨拶をし、目立たぬように過ごす。
(気配を消すのは狩で必須なので得意だ!)
初めて遭遇する同年代という子供の中で、目立たぬようにうふふあははと過ごしたが、案の定すぐ飽きた。

お菓子もお茶もたらふく食べたら、元気な子供に必要なのは冒険だ‼︎
するりと気配を消して、ふらふらと歩いた。
(もう一度言う。気配を消すのは得意だ。)

ダメだぞ王宮。
緩いぞ王宮。
リラクは溜め息をついた。

何処でも行き放題じゃないか。
うっかり触ったら意識を飛ばす仕掛けは、あちこちにある。
衛士も見張っている。
でも、どこもちょろくて隙だらけだ。

こんな事じゃ。
じいちゃんに深森に叩き込まれて特訓されるゾ。

初め観光客気分だったのが、徐々に検査官にチェンジしていく。
リラクは腹ごなしにと、フラフラ歩いた。



「※※**」
「・・‼︎」

その人声は、何処か神経をピリつかせた。
風に乗った声は、集中しないと聞こえないくらい小さい。

嫌悪感と危機感がどことなく項の毛を逆立てて。
リラクはそのまま辺りを伺った。

小作りな四阿が見えた。
何故目に留まったかというと、衛士が立っていたからだ。
四阿を背にして、守るように。
あんなところに…だ。
しかも衛士の視線は宙。
おい、それで護衛が出来るのか⁉︎って思った。
見るからに全意識を遠くに飛ばしている。

太い眉がひそまって、額にくっきり皺が寄ってる。
噛み締めた筋肉が、頬から顎にごりごりの山脈を作ってる。
不本意。
そんな言葉が透けて見える。


四阿の中から、けけけっと笑い声がすると。
衛士の目はさらに遠くに浮いた。



勿論、忍びよる。
良い子の人生に、冒険は必要だ。

リラクは四阿の窓へと忍び寄り、隙間から中を覗き込んだ。
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