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来ちゃいました王都
2 ままならない王子様
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ギルバート王子は渡り廊下からルディを見つめていた。
ルディは庭のベンチに座っている。
庭は薔薇が咲き乱れて、まさしく薔薇を背負っていた。
ゆるりと青灰色の髪を一つに結って。
ほのかな微笑みを浮かべて本を読んでいる。
薔薇というより百合の花だな。とギルバートは思った。
入学式でもむさ苦しい奴らの中で、そこだけが陽に当たっているようだった。
すぐにわかった。
あの時の子だ。
怒鳴って拒否したあの可愛い子だ。
ずっと気にしてた。
茶会や夜会では密かに探してた。
やっと見つけた。
ああ、やっぱタイプだわ。
あのちょっとツンとした唇をむすむふしたい。
あの時みたいにその瞳に俺を映して欲しい。
そう思っても、それが出来ない事は身に沁みてわかっていた。
身から出た錆って奴だ。因果応報ともいう。
今の俺は良質なタンパク質と訓練で立派に育った。
騎士団の新兵に引けは取らない自信がある。
ああ、俺の馬鹿!馬鹿‼︎
悔やんでも悔やんでもやり直しは出来ない。
あの日、一方的に怒鳴った。
目を潤ませながらもきちんと辞去の礼をとった彼に尊敬を覚える。
俺が悪い。何やってんだよ!
しでかした事に吐きそうな気持ちで彷徨っていたら、きゅっと襟首を掴まれて吊り上げられた。
鼻先すれすれに仁王様のような顔があって。
そこから威圧がびんびんとダダ漏れしてくる。
喉の奥がヒィッと木枯らしが吹いて、おちんちんがくいっとなって
ああああっ、ちびってしまったぁ。
この年で怖くてちびってしまったぁ。
涙目で助けを求めて護衛を見たら、ぷるぷる震えてしゃがんでた。
おいおい。駄目じゃんかぁ!
そのまま猫の子みたいにぷらんと運ばれた。
濡れたズボンが気持ち悪くて内股になってしまう。
情け無さに泣きそうだった。
そして父上、母上の元へと連れていかれ、事情聴取が始まった。
あの子はこのデカくて怖いデルバイア辺境伯の子息だという。
嘘だろう!俺は愕然とした。
デルバイア辺境伯といえば、"チーム辺境"のリーダーだ。
この聳え立つようなごっつい男とあの子に血の繋がりがあるなんて!
その生命の神秘は受け入れ難くて、げぇっと声がでた。
つまり俺は虐めてるのをその親に見られた挙句にちびってしまった、と。
もう、なんて救いの無い愚か者だろうか。
どう見ても捕食の頂点に立つ男に言い訳は出来ない。
平身低頭で罪を認めた。(意地でも身長は触れないぞ)
学園でマブだったという父上にヘルプの視線を送り続ける。
頼む、とりなしてくれ!
「わしで良かったな」
デルバイア辺境伯はニタリと笑った。
その笑顔の怖さにギルバートは震える。
「バルカンが見つけてたら今頃ココは半壊だ」
その言葉に震えたのは王様だった。
デルバイア辺境伯はルディをまじまじと見た。
胃の内容物まで探られているような目に、ルディは居住いを正す。
謝罪をさせて欲しいと言ったら、デルバイア辺境伯の口元はさらに上がった。
いや、撲殺犯の目ですから。その笑みは無茶苦茶怖い。
きゅっと玉も縮み上がって、またちびりそうだ。
ガタブルするのをなんとか抑え、再び謝罪を願う。
「人のせいにしない王子はとても立派だと存じます。
ですからこれで手打ちといたしましょう。
王子はウチのルディに直接謝罪して頂かなくても構いません。
これからもみずから接触なさらないでください。」
心の広い許しに見えて、きっぱりと近付くなと脅しをかけていた。
頷く以外の道はあっただろうか?
うん、無い。
ルディは庭のベンチに座っている。
庭は薔薇が咲き乱れて、まさしく薔薇を背負っていた。
ゆるりと青灰色の髪を一つに結って。
ほのかな微笑みを浮かべて本を読んでいる。
薔薇というより百合の花だな。とギルバートは思った。
入学式でもむさ苦しい奴らの中で、そこだけが陽に当たっているようだった。
すぐにわかった。
あの時の子だ。
怒鳴って拒否したあの可愛い子だ。
ずっと気にしてた。
茶会や夜会では密かに探してた。
やっと見つけた。
ああ、やっぱタイプだわ。
あのちょっとツンとした唇をむすむふしたい。
あの時みたいにその瞳に俺を映して欲しい。
そう思っても、それが出来ない事は身に沁みてわかっていた。
身から出た錆って奴だ。因果応報ともいう。
今の俺は良質なタンパク質と訓練で立派に育った。
騎士団の新兵に引けは取らない自信がある。
ああ、俺の馬鹿!馬鹿‼︎
悔やんでも悔やんでもやり直しは出来ない。
あの日、一方的に怒鳴った。
目を潤ませながらもきちんと辞去の礼をとった彼に尊敬を覚える。
俺が悪い。何やってんだよ!
しでかした事に吐きそうな気持ちで彷徨っていたら、きゅっと襟首を掴まれて吊り上げられた。
鼻先すれすれに仁王様のような顔があって。
そこから威圧がびんびんとダダ漏れしてくる。
喉の奥がヒィッと木枯らしが吹いて、おちんちんがくいっとなって
ああああっ、ちびってしまったぁ。
この年で怖くてちびってしまったぁ。
涙目で助けを求めて護衛を見たら、ぷるぷる震えてしゃがんでた。
おいおい。駄目じゃんかぁ!
そのまま猫の子みたいにぷらんと運ばれた。
濡れたズボンが気持ち悪くて内股になってしまう。
情け無さに泣きそうだった。
そして父上、母上の元へと連れていかれ、事情聴取が始まった。
あの子はこのデカくて怖いデルバイア辺境伯の子息だという。
嘘だろう!俺は愕然とした。
デルバイア辺境伯といえば、"チーム辺境"のリーダーだ。
この聳え立つようなごっつい男とあの子に血の繋がりがあるなんて!
その生命の神秘は受け入れ難くて、げぇっと声がでた。
つまり俺は虐めてるのをその親に見られた挙句にちびってしまった、と。
もう、なんて救いの無い愚か者だろうか。
どう見ても捕食の頂点に立つ男に言い訳は出来ない。
平身低頭で罪を認めた。(意地でも身長は触れないぞ)
学園でマブだったという父上にヘルプの視線を送り続ける。
頼む、とりなしてくれ!
「わしで良かったな」
デルバイア辺境伯はニタリと笑った。
その笑顔の怖さにギルバートは震える。
「バルカンが見つけてたら今頃ココは半壊だ」
その言葉に震えたのは王様だった。
デルバイア辺境伯はルディをまじまじと見た。
胃の内容物まで探られているような目に、ルディは居住いを正す。
謝罪をさせて欲しいと言ったら、デルバイア辺境伯の口元はさらに上がった。
いや、撲殺犯の目ですから。その笑みは無茶苦茶怖い。
きゅっと玉も縮み上がって、またちびりそうだ。
ガタブルするのをなんとか抑え、再び謝罪を願う。
「人のせいにしない王子はとても立派だと存じます。
ですからこれで手打ちといたしましょう。
王子はウチのルディに直接謝罪して頂かなくても構いません。
これからもみずから接触なさらないでください。」
心の広い許しに見えて、きっぱりと近付くなと脅しをかけていた。
頷く以外の道はあっただろうか?
うん、無い。
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