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来ちゃいました王都

1 ままならない入学式

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で、入学式。
ルディはぐっと背筋を伸ばして前を向いていたが、意識は飛びそうだった。

デカいのだ。
自分が…

ガルム達と同じくらいの大きな生徒はいる。
多分騎士科に進む、マッチョを目指す健康優良男児が何人もいる。
この学園で交際相手を見つけようと、サーチで目をぎらつかせている。
その男どもと、悲しい事に自分の目線は同じくらいだった。

二列向こうには、華奢で可愛い令嬢達がフローラルな香りを醸している。
愛され受け側らしき男の子も、もじもじと可愛く辺りを見ていた。
その小動物がわきわきしているようなほんわかした整列ぐあいは、ルディが踏み込む事は出来ない世界で。
ルディが騎士科のマッチョと同類なのだと突き付けるようだった。


遠くにあの王子様もいる。
無事に育って騎士科達と肩を並べている。
相変わらずイケメンだった。
着々とイケメンに育っている。
ちらりとこっちを見た気がしたけど、すぐ逸らされた。
可愛いしめじの中に、でっかい紅天狗茸があるとでも思ったのかな。
ちょっと心が痛かった。



はっきり言おう。
この時ほとんどの者は、どんぐりが転がる中に精霊を見ていた。
華やかさとか美麗さでいうと他に何人もいる。
ただすらりと高く、凛と前を向くその姿は静謐な美しさに溢れていて。
わきゃわきゃと人生経験の浅い者にとっては、ルディは初めて見る類の尊さだった。


大人になる前の乙女(その心の者も)という者は、総じて綺麗なモノが好きだ。
髭だの鼻毛だの汗の匂いというものは乙女の辞書には無かった。

新入生とはいえ鍛えたマッチョ。
一部は既におっさん臭を醸している。
イケてるお面でも、あら顎が割れちゃうのかしら、将来お髭は朝昼晩と剃るのよね。と思われる雄臭さを見せ始めている。

そんな雄臭さは潔癖な乙女には受け入れがたい。
「男って野蛮だわ」から「男って不潔」を得て「男って嫌ねぇ‼︎」という目で乙女とその心の持ち主は、ふてぶてしいマッチョを見ていた。

その中で野蛮マッチョの列に、同じくらいの身長で半分くらいの薄さであろうルディは目立っていた。
しかもルディは母親似。
たとえ汗をかいたとしてもキラキラと花弁と飛び散るように見える。
ロマンス小説に出て来そうなその風貌に、乙女達はひゅうっ♡となった。


ルディは視線が横顔にぐさぐさ刺さるのを感じた。
妙にねちこい熱が下付近から悶々と発せられる。
いくら奥手な人見知りとはいえ、その熱は何を言わんとしているのかはすぐ察せられた。

やめてくれ。
デカくても僕は受けなんだ。
ごめんなさい。無理です。

ルディのナイーブなハートは、こうして入学式でもダメージを受けるのだった。
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