17 / 19
王宮の攻防
8 レヴュトの行方
しおりを挟む
気がついた時。
レヴュトはいなかった。
あの意識のままならば、医術師のクワンと遭遇して。
自分がチャルだった事を思い出してしまったのだ。
その影に触れていたユスフとイースタンも、チャルが泣き叫ぶようすを自分の事として見てしまった。
ユスフは怒りで青褪めて、拳を震わせていた。
イースタンは自分を思う心に、途方に暮れた。
切なくて苦しくて、何も言葉が出なかった。
重い頭を振立てながら、二人は四阿を探した。
ただの夢だったと否定したくて、真剣に探した。
六角形のものは王宮では三箇所。
その内薔薇のある物へと急ぐ。
そして、まさしく、見たあれのままに。
書面は隠されていた。
王太子の命の元、すぐにクワンを拘束する。
王妃や協力者に繋ぎを取る前に、牢へ突き入れた。
あのチャルの意識を見た今。
ユスフもイースタンもクワンへの攻めは拷問に近かった。
イースタンはチャルの遺体の在処をただ尋ねた。
レヴュトは幽霊だ。
それをわかっていた。
わかってるつもりだった。
それがあんなに苦しんで、痛がって、泣いてたなんて。
それもこんな俺の為に我慢して、頑張っていたなんて。
俺の為に生きるのを諦めたなんて。
チャルが俺の元に現れたのはわかった。
逢いたい。そうおもってくれたからだ。
しりだけが見えていたのは…
尻だけが無事だったからだ。
クワンは「折角の人体だから、部位ごとの実験をした。」と、言った。
イースタンのほとんど狂気の殺気を浴びせられて、支離滅裂になりかけた言葉を纏めると…
「途中から喚かなくなったから、死んだんだと思う」
イースタンだけじゃなく、ユスフも。
苦しいのが早く終わって楽になれたら良かった。と、祈るように思った。
王太子は、屋敷に帰れと半ば強制的にイースタンを帰らせた。
クワンの逮捕。
毒物の特定。
そして証拠の書面。
侍従も騎士も文官も働いた。
あとは王妃の帰城を待つだけだ。
レヴュトは、いやチャルは。
初めて会ったコンサバトリーに逃げ帰っているかも知れない。
このまま昇天してしまったら、悔やんでも悔やみきれない。
心はふわふわと落ち着かず。
イースタンは馬に鞭まで入れて屋敷に帰った。
チャルは隅で震えていた。
暗いところでふるふるとちいさくなっている。
しゃがんでいるのか、泣いているのか…
「チャル。ありがとう。」
済まないでは無い。
俺の事ばかり考えたチャルに言うのは、ありがとうだ。
自分よりも人を守ろうとしたチャル。
そんなチャルが痛かったなんて…
イースタンの涙が止まらない。
肩を揺らして。
ぽたぽたと落ちる雫に、チャルはぷるぷるした。
「LOVE」
ウィジャボードが告げた。
それはlikeの好きじゃなくて、愛してるの好きだ。
そうだな。
チャルはそうだな。
そして、俺だって。
「好きだ。」
チャルがふわりとイースタンに抱きついた。
いや、抱きついて来たというより、影が纏わって来た。
こんなに好きなのに、抱き合えない。
その身体はひんやりと涼しい。
チャルの身体が発見されるまで。
ひたすらイースタンとチャルはコンサバトリーにいた。
『生まれ変わってくる』
「待ってる」
『急ぐ』
「そうしてくれ」
『好き』
「俺も好きだ」
雨垂れのような言葉を紡いで、二人はいた。
レヴュトはいなかった。
あの意識のままならば、医術師のクワンと遭遇して。
自分がチャルだった事を思い出してしまったのだ。
その影に触れていたユスフとイースタンも、チャルが泣き叫ぶようすを自分の事として見てしまった。
ユスフは怒りで青褪めて、拳を震わせていた。
イースタンは自分を思う心に、途方に暮れた。
切なくて苦しくて、何も言葉が出なかった。
重い頭を振立てながら、二人は四阿を探した。
ただの夢だったと否定したくて、真剣に探した。
六角形のものは王宮では三箇所。
その内薔薇のある物へと急ぐ。
そして、まさしく、見たあれのままに。
書面は隠されていた。
王太子の命の元、すぐにクワンを拘束する。
王妃や協力者に繋ぎを取る前に、牢へ突き入れた。
あのチャルの意識を見た今。
ユスフもイースタンもクワンへの攻めは拷問に近かった。
イースタンはチャルの遺体の在処をただ尋ねた。
レヴュトは幽霊だ。
それをわかっていた。
わかってるつもりだった。
それがあんなに苦しんで、痛がって、泣いてたなんて。
それもこんな俺の為に我慢して、頑張っていたなんて。
俺の為に生きるのを諦めたなんて。
チャルが俺の元に現れたのはわかった。
逢いたい。そうおもってくれたからだ。
しりだけが見えていたのは…
尻だけが無事だったからだ。
クワンは「折角の人体だから、部位ごとの実験をした。」と、言った。
イースタンのほとんど狂気の殺気を浴びせられて、支離滅裂になりかけた言葉を纏めると…
「途中から喚かなくなったから、死んだんだと思う」
イースタンだけじゃなく、ユスフも。
苦しいのが早く終わって楽になれたら良かった。と、祈るように思った。
王太子は、屋敷に帰れと半ば強制的にイースタンを帰らせた。
クワンの逮捕。
毒物の特定。
そして証拠の書面。
侍従も騎士も文官も働いた。
あとは王妃の帰城を待つだけだ。
レヴュトは、いやチャルは。
初めて会ったコンサバトリーに逃げ帰っているかも知れない。
このまま昇天してしまったら、悔やんでも悔やみきれない。
心はふわふわと落ち着かず。
イースタンは馬に鞭まで入れて屋敷に帰った。
チャルは隅で震えていた。
暗いところでふるふるとちいさくなっている。
しゃがんでいるのか、泣いているのか…
「チャル。ありがとう。」
済まないでは無い。
俺の事ばかり考えたチャルに言うのは、ありがとうだ。
自分よりも人を守ろうとしたチャル。
そんなチャルが痛かったなんて…
イースタンの涙が止まらない。
肩を揺らして。
ぽたぽたと落ちる雫に、チャルはぷるぷるした。
「LOVE」
ウィジャボードが告げた。
それはlikeの好きじゃなくて、愛してるの好きだ。
そうだな。
チャルはそうだな。
そして、俺だって。
「好きだ。」
チャルがふわりとイースタンに抱きついた。
いや、抱きついて来たというより、影が纏わって来た。
こんなに好きなのに、抱き合えない。
その身体はひんやりと涼しい。
チャルの身体が発見されるまで。
ひたすらイースタンとチャルはコンサバトリーにいた。
『生まれ変わってくる』
「待ってる」
『急ぐ』
「そうしてくれ」
『好き』
「俺も好きだ」
雨垂れのような言葉を紡いで、二人はいた。
10
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
残念でした。悪役令嬢です【BL】
渡辺 佐倉
BL
転生ものBL
この世界には前世の記憶を持った人間がたまにいる。
主人公の蒼士もその一人だ。
日々愛を囁いてくる男も同じ前世の記憶があるらしい。
だけど……。
同じ記憶があると言っても蒼士の前世は悪役令嬢だった。
エブリスタにも同じ内容で掲載中です。
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる