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王宮の攻防

4 花とレヴュト

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「で、その幽霊はなんでこの花をしっていた?」

ユスフの質問に答えられない。
ソレはイースタン自身が思っている事だからだ。

「レヴュト。」

呼ぶと芝生の上をしゃしゃしゃと滑ってくる。
昼間の光の中で動いている影は異様で。
異様と思う自分が悲しかった。

そっと掌を出すと、そこに頭が擦り付けられる。
日光で暑いのに、そこにふっと涼しいものが当たる。
その動きと冷たさに、悲しみが少し増えたきがした。

「……で。にいるのか?」

ユスフの質問に頷く。

「レヴュト。アレが物だと、知っていたのか?」

レヴュトは首を傾げた。
ウィジャボードは無い。
首を傾げたのは、たぶんわからないというポーズだろう。

「ユスフ。家で詳しく聞いてみるよ。
レヴュトは国境沿いの出身者かもしれない。」

イースタンの目が掌を見ている。
いつも人生を謳歌していた姿しか知らない。
ユスフは楽しげなイースタンしか知らない。
今、自分の掌を見ている目は痛みと悲しみが複雑に混ざった色をしていた。

ユスフにはレヴュトという影は見えてない。
イースタンが悪ふざけをしている様にしか見えない。
でもイースタンの目は辛そうで。
ユスフはとりあえず緊急目標の王太子殿下の安全を考えることにした。


専用の侍従には、新鮮な水を沸かした茶を差し上げて欲しいといってきた。
食事等は毒味係がいる。
あの水だけが原因だとはわからないが、不調の大半を占めていたと思う。
明日は他の護衛騎士とも話し合うつもりだ。
水という毒を絶ったのを知って、犯人はどう動くのだろう。

何故なら、王妃は昨日から一週間の行程で視察に出ていた。
いつもより宣伝し、王都からお練り行列を大々的にして行った。
王妃が不在なのは王都中がしっている。
つまり、この一週間は完全にアリバイがあるのだ。

毒の中心に王妃がいると、イースタン達は思っていた。

春から不調だった王太子が死亡したとしても、誰も不思議に思わないだろう。
その場にいなかった王妃を怪しむ事は無い。
さらに寝付いて口を聞くのも億劫になった王様が。
王太子の死去に衝撃を受けて儚くなったとしても。
国民は泣いて悲しんでも受け入れるだろう。


ある日吐いて。
ある日は元気で。

それを繰り返して徐々に弱って。
"殿下は病弱"という認識を広めた今。
ある日急死となっても納得するだろう。

つまり、勝負はこの一週間なのだ。
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