【完】俺が"しり"を愛でるようになった、その訳とその記憶とその結果について

たまとら

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王宮の攻防

1 護衛の日々

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レヴュトは随分懐いた。
勿論触れられないので、そっと靄の影に手を翳す。
なんとなくひんやりするその影に触れていると、レヴュトがうっとりする(気がする)
そうやって撫で撫でしている昨今だ。

仕事から帰って執務室に行くと。
わらわらと飛び出してきて、イースタンの周りをくるくる回る。(たぶん)
まぁ実際にはふらふらと表れてふわふわとしている。
ぷりっ尻がぷりんぷりんするから目の毒だけど。
その歓迎ぶりが嬉しい。
可愛い奴め♡と毎日思う。

さらにレヴュトは、自分が見えない事を理解したようだ。
屋敷の中をついて歩く様になった。
自分がすり抜けられる事を把握したらしく
するすると現れてイースタンを驚かせる。
一度風呂に現れて、まっぱに遭遇して。
あわあわ慌てて逃げ出したので、久しぶりに爆笑した。
レヴュトのいる生活はなかなか楽しい。



「なぁ。なんか恋人出来たろう?」

ユスフが時々聞いてくる。
はぐらかそうとすると、嫁さんに出会った頃からプロポーズまで、情感たっぷりに喋ってくるのでうんざりした。
だって、話そうにも、ユスフには見えないのだ。
レヴュトが手を振っても見えていないのだ。

レヴュトは家を行け出して、王宮についてくる事を覚えた。

レヴュトを見せびらかしたい。
この摩訶不思議さと可愛らしさを、自慢したい。
そう思ってたイースタンだったが。
やはり、誰もレヴュトを見れなかった。


不明者はなかなか特定出来ない。

レヴュトの身元を探してやりたい。
もしレヴュトの身体は眠ったままで、魂だけがふらふらしているのなら…
身元がわかって身体と出会えば、目が覚めるかも…
そんな白昼夢を見て、イースタンは苦笑した。

睡る身体。
起きる身体。
その顔は想像出来なくて、影のままだ。
それでもレヴュトはレヴュトで。
可愛いと思った。




あれから王太子殿下は吐かれるてはいない。
体力が回復して来たのか、頬に赤味が戻ってきた。
積極的に仕事を進める殿下を、イースタンは感慨深く見守っている。
本当は殿下の執務室に身元不明者は入れれないんだけどな… なんて思いながら本棚の背表紙を眺めるレヴュトを見ていた。

侍従が水差しを傾ける。
水はミントと爽やかな甘い香りがした。
グラスに半分ほど満たしてトレーにおく。
顔を上げた殿下は笑顔のまま手を伸ばした。
日差しの中でグラスが鈍く光る。
窓辺に立っていたイースタンは、グラスの水がミントの緑を受けて翠く反射するのを見た。


声では無い。

絶叫の振動が空気を揺るがせた。

身構えたイースタンは、レヴュトが殿下に向けて飛びついたのを見た。

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