王宮侍従テミスの、愛と欲望のサスペンスな日常

たまとら

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社交シーズンのドタバタ

1 お出掛け

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兄ちゃんに、ぴょん☆と飛びつけば。
あうんの呼吸で、片手ですいっと掬い上げてくれた。
兄ちゃんの首に腕を回して抱き付く。

兄ちゃんは、呵呵々と笑いながら。
テミスを片手で抱き上げたまま、ずんずん歩いた。

ああ、この抱っこ歩き、久しぶり♡
すんごくうきうきしちゃう‼︎
ちょっと目線が上からだから周りがよく見える。
門番の、商人の、従者の、観光客の。
たくさんの目が見事にかっぴらいて、こっちを集中してガン見している。

テミスはあっと顔を赤くした。

いけない‼︎

ここは国の中枢、王都。
しかも行政の中心、王宮だ。
ど田舎とは違うっていうのに、何も考えずモモンガになって飛び付いていた。

……ま、いっか。

尻の下の太い腕は筋肉で硬くて柔らかい。
りっぱな胸筋はぱん!と張って。
首なんて両腕で抱えてちょうど良い。

やっぱりタイナ兄ちゃんはゴリマッチョだ。
好き♡
安心感にうっとりする♡



かなり涼しい、いや寒い季節になりましたが皆様お変わりございませんか?って感じ。
季節はもう冬。
テミスもペーペーから、ぺーが一つ取れた感じのベテランに近づいた。
冬といえば社交のシーズンだ。
領地の実りの秋を終えて、王都目指しての貴族の民族大移動が始まる。
つまり王宮も、気の休まらない程に忙しくなる。

テミスにも一週間前に、送配の従者さんが封筒を届けてくれた。
ペルセポネ伯の蝋封印だ。
そう、アフロディ兄ちゃんがお嫁に行った家だ。

『王都に行くから、タイナ兄ちゃんと来てね』
っていう招待状で、もう、もう、気分は爆上がりだった!

もう喜びが溢れ過ぎて、"お得意さん"に不審がられるわ、(やっぱりまだ名前を覚えていない)ハウスさんに拉致による事情聴取されるわ、とてんやわんやだった。



で、当日でーす。

いつものようにタイナ兄ちゃんと門で待ち合わせして飛び付く‼︎
今日は一番いい服。
兄ちゃんもシュッとした服で格好良い‼︎
あ、皺とか考えずに飛び付いてたよ。
てへっ☆

今日はお互い正装だ。

ペルセポネ伯爵家は、『港を牛耳るお金と力のある家』だとハウスさんが教えてくれた。
領主夫人の兄と弟の訪問だから、ちゃんとしなさい。って諭された。

まぁ本来なら馬車でぐんと乗りつけるのが、使用人の手前カッコいいとは思うけど。
そんな無駄なお金、ナッシング。

テミスが侍従で働いてるのは知ってるし。
滅多に見れない世紀末覇王のタイナ兄ちゃんの正装だから、もう良いよね。

金持ちのペルセポネ伯爵の屋敷は王宮に近い。
貴族街は地位とお金で場所が決まる。
王宮に近いほどお偉いさんなワケ。
どうせ社交シーズンにしか使わない屋敷なのに、どーんとデカくてゴージャスだった。
王宮の門から、辻馬車を拾わなくても直ぐ着く。

赤ちゃんの時から抱っこ歩きされてたから、疑問も持たずに楽ちんしてた。

そして二人はペルセポネ伯爵のどでかい門で、門番に声を掛けていた。
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