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結婚への道  レイト

6 人生論と分岐点

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「きみはこれからの人生をどう考えているのかな?」

おうっふ。
いきなりの人生論‼︎

クレスト兄様の攻撃にレイトはダメージを負った。


『いやいや、返事は明日ココでお会いしてからで』と挨拶を交わすセルジオとクレストの営業トークに、おでこを押さえたレイトはなんでだよと思った。
明日ってナニ?
なんでこんなに推してくるの?
そんな疑惑と不満で屋敷に帰ったら、目を?にした母様が吹っ飛んできた。
その母様を笑顔一発で黙らせてから、レイトは応接間に座らされ今に至っている。

「これからの人生」
いや、ぶっちゃけ考えていない。
スローでフリーに行けたらいいなぁと思ってる。
長兄に嫁が来ても母様の眼鏡に叶うラブリーな人なら、レイトが敷地の端っこに居させてくれると信じてる。甘いよね、それってニート目標みたいじゃん。
あと、どっかの荘園の代官もいけるかなぁと思ってる。うん、甘いよね。
でもこんな世間を舐めくさってる感じって、我ながらどうなんだろうと思う。

レイトはむむむと考えこんだ。

レイトの取り柄はなんか色が見える事だけど、それを使い熟してのし上がる程のハートの強さは持ってない。
クレスト兄様の魔道具のおかげで、知りすぎる事は無くなって、そこそこ人と付き合える様になっては来たけどね。
殺意害意のドス黒い赤だけは危機回避の為に見えっぱなしだから、学校で牛を襲撃する獣の位置や頭数はわかった。これならド田舎でも生き延びられるんじゃないかと思う。

あと収入的にできる事といえば、学校で誉められたのは薬の錬成だ。
資格証書も執ったから違法じゃ無く作れる。でもね、
「ダメじゃん、この葉っぱ虫食いで足りな~い」
「ココにサイカの茎入れたら傷治るのよん」
って光の玉がわちゃわちゃ寄ってたかったおかげで作れた。つまり他力本願だったのだ。
錬成は素材を混ぜ合わせたりするんじゃ無くて、魔力を入れて反応を促進したり変化させる。入れる魔力の質で出来が大きく変わっていく。
光の玉は「そうそうそのくらい」と言語でのみ指導していた。
つまりざっくり言えば、レイトは薬を作るのに向いてるらしい。
でもまるっきりのカンニングだったわけで。

「これからの人生」
レイトは熟考して決断した。

"生活費の為に光の玉ときゃっきゃうふふと何か作って。(他力本願上等じゃん)
襲ってくる野盗や獣からぬるりと逃げ延びて。(逃げるが勝ちって言うし)
めんどくさい人間とは出来る限り関わり合いにならずに。(ストレスフリーだ‼︎)
のんびりゆったりたっぷりと生きる。それが目標だ‼︎"

脳内で叫び拳をぎゅっとしたところでクレストの人差し指が額を突いた。

ぐゔっ。

まだ決意表明の声出してないのに、モロバレですかあ。

悶絶するレイトにクレスト兄様は笑顔を見せた。
母様似の美麗な笑顔はきっと王都の御令嬢のハートを幾つも撃ち抜いたモノだろうが……目が怖っ。マジで怖っ。
第一なんでこんなに推してくるんだ。
それもグイグイと圧全開で。

そんな疑惑にクレスト兄様ははんなりと答えた。
「このまま家族と離れたレイトが、無事に生きていけるとは思えない」
なるほど。

相手は白い結婚相手を求めている。
相手は一か月で、共同生活を終えて良いと言っている。
結婚の対価としてグランバルト領の望む土地建物が与えられる。

クレスト兄様のプレゼンは、あの呪文の様な乙だの甲だのより端的明瞭だった。

「しかも嫁としての予算が組まれるという事だ。」
つまり荘園の代官とかしなくてもニート生活が確約されている。
おでこを摩っていたレイトはおおぅと口を開けた。

「そして結婚という免罪符を手に入れてしまえばもう勝ち組だ。
一族郎党のベテラン勢からの追及からおさらば出来る。」

それな!
ピカ~んとシナプスが覚醒した。

結婚することが正義と信じる一族のベテラン勢は、いつでもどこでもポケットの中に釣書を隠し込んで迫ってくる。
その狩は御し易い者を群れで取り囲んで離さないのだ。
しかも曇りなきまなこのまま、波動攻撃を仕掛けるてくるえげつなさだ。

あ、この御し易いがミソね。
ゼフィラス兄様やクレスト兄様には爪痕さえ立てられず玉砕してたから。
そんな恨み高まる本家の末っ子が、成人して獲物と化した。
しかもチョロさと御し易さに定評のある末っ子だ。
そりゃ集中包囲網が組まれるに違いない。

レイトはちょっと身を乗り出した。
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