8 / 14
結婚への道 レイト
1 逃げ道は袋小路
しおりを挟む
王都からクレスト兄様が帰って来た。
「母様達のお迎えに参りました」とにっこりしたが、うそだね。
だって今まで迎えに来た事なんて無いし、ここから王都まで2週間は掛かるんだぜ。
クレスト兄様は賢くて効率厨なクールビューティーだ。
しかも腹の中は真っ黒だ。
絶対ナニかあるんだ。
僕は知ってる。
収穫期の終わった晩秋から貴族の社交シーズンが始まる。
国中の貴族が群れを成して、鮭の遡上のように王都を目指す。
そこで夜会や茶会で就活や婚活や流行りのモノをゲットするのだ。
いやお楽しみだけじゃ無い。情報交換と収集は生き延びる為に必要だからね。
マーレント家は王国の東側の端っこだ。
王国は四方を他国に囲まれている。情報は無茶苦茶大切なのだ。
マーレント家は国を守る辺境伯として真面目に働く貴族なので、勿論冬は移動する。
安心して。父様のいない領地は後継のゼフィラス兄様が睨みを効かせてるからね。
王都のなんとかという所に勤めているクレスト兄様が、自ら迎えに来たという。
………ありえないだろうっ‼︎
レイトは湧き上がる不安に、出迎えで並ぶ使用人達を盾にこそこそと逃げ出した。
「レイト!卒業おめでとう‼︎」
オペラ歌手のように通る声が吹き抜けの玄関ホールに響いた。
あ、逃げそびれた。
20Mは離れていたはずなのに、クレスト兄様が目前で両手を広げている。
瞬間移動かよっ!
熱烈なハグ&キスでぐちゃぐちゃなレイトは、すぐに逃げるのを諦めた。
あんな、卒業って春やねん。
今は秋の終わりやねん。
そんな事を言ってやりたかったが、焼石にガソリンを掛けるほど無謀じゃ無い。
レイトは全面降伏を示す為に、へにゃりと笑いを返して撫でくりまわされた。
レイトはこの春学校を卒業した。
長兄次兄のように王都の有名所じゃ無く、隣領の学校に行った。
生徒より牛の数が多いソコで、マイペースに過ごして卒業した。
末っ子に甘い父様は手持ちの爵位を並べてどれがいい?と聞いたけど、断った。
人の群れを自分が御すなんて、想像しただけでオエッとなる。
出来る事なら領地の端っこの荘園で、代官あたりに就きたかった。
有能な召使い頭が牛耳ってくれる、書類にサインするだけの仕事だ。
可愛い末っ子を近くに置きたい家族と、人里離れた場所に行きたいレイト。
ついでと言うなら辺境はかなり危ない。
目の届かない所に行かせるわけにはいかないと泣き真似をする母様。
そんなぐちゃぐちゃな抗争の中でレイトは宙ぶらりんな存在だった。
「卒業祝いも買いたいし、レイトも一緒に行かないかい?」
クレスト兄様は語尾に?を付けた。
でも口調は!!!だ。
え?
王都に僕を連れに来た?
慌てて父様を見たら、すいと目を逸らされた。
家令もいきなり上空の雲の流れを見ている。
ゼフィラス兄様は何故かサムズアップでうんと頷いた。
え?
四面楚歌⁉︎
僕以外は根回し出来てるって事⁉︎
ニートになってる奴だから売られちゃうの?
レイトは絶望的な思いで立ち尽くした。
逃げ道は、逃げ道はどこ…
「あらぁ素敵ねぇ♡レイトちゃんのお洋服をつくりましょうねぇ」
ドナドナのヘビーな雰囲気をぶった斬って、母様が歓声を上げた。
「わたくしねぇ、レイトちゃんはパウテルカラーが似合うって思ってたのよぉ。
王都の流行りはどんなのかしらねえ?
お揃いで作りましょうねぇ」
うん。
母様は平常運転で僕の味方だ。
「母様達のお迎えに参りました」とにっこりしたが、うそだね。
だって今まで迎えに来た事なんて無いし、ここから王都まで2週間は掛かるんだぜ。
クレスト兄様は賢くて効率厨なクールビューティーだ。
しかも腹の中は真っ黒だ。
絶対ナニかあるんだ。
僕は知ってる。
収穫期の終わった晩秋から貴族の社交シーズンが始まる。
国中の貴族が群れを成して、鮭の遡上のように王都を目指す。
そこで夜会や茶会で就活や婚活や流行りのモノをゲットするのだ。
いやお楽しみだけじゃ無い。情報交換と収集は生き延びる為に必要だからね。
マーレント家は王国の東側の端っこだ。
王国は四方を他国に囲まれている。情報は無茶苦茶大切なのだ。
マーレント家は国を守る辺境伯として真面目に働く貴族なので、勿論冬は移動する。
安心して。父様のいない領地は後継のゼフィラス兄様が睨みを効かせてるからね。
王都のなんとかという所に勤めているクレスト兄様が、自ら迎えに来たという。
………ありえないだろうっ‼︎
レイトは湧き上がる不安に、出迎えで並ぶ使用人達を盾にこそこそと逃げ出した。
「レイト!卒業おめでとう‼︎」
オペラ歌手のように通る声が吹き抜けの玄関ホールに響いた。
あ、逃げそびれた。
20Mは離れていたはずなのに、クレスト兄様が目前で両手を広げている。
瞬間移動かよっ!
熱烈なハグ&キスでぐちゃぐちゃなレイトは、すぐに逃げるのを諦めた。
あんな、卒業って春やねん。
今は秋の終わりやねん。
そんな事を言ってやりたかったが、焼石にガソリンを掛けるほど無謀じゃ無い。
レイトは全面降伏を示す為に、へにゃりと笑いを返して撫でくりまわされた。
レイトはこの春学校を卒業した。
長兄次兄のように王都の有名所じゃ無く、隣領の学校に行った。
生徒より牛の数が多いソコで、マイペースに過ごして卒業した。
末っ子に甘い父様は手持ちの爵位を並べてどれがいい?と聞いたけど、断った。
人の群れを自分が御すなんて、想像しただけでオエッとなる。
出来る事なら領地の端っこの荘園で、代官あたりに就きたかった。
有能な召使い頭が牛耳ってくれる、書類にサインするだけの仕事だ。
可愛い末っ子を近くに置きたい家族と、人里離れた場所に行きたいレイト。
ついでと言うなら辺境はかなり危ない。
目の届かない所に行かせるわけにはいかないと泣き真似をする母様。
そんなぐちゃぐちゃな抗争の中でレイトは宙ぶらりんな存在だった。
「卒業祝いも買いたいし、レイトも一緒に行かないかい?」
クレスト兄様は語尾に?を付けた。
でも口調は!!!だ。
え?
王都に僕を連れに来た?
慌てて父様を見たら、すいと目を逸らされた。
家令もいきなり上空の雲の流れを見ている。
ゼフィラス兄様は何故かサムズアップでうんと頷いた。
え?
四面楚歌⁉︎
僕以外は根回し出来てるって事⁉︎
ニートになってる奴だから売られちゃうの?
レイトは絶望的な思いで立ち尽くした。
逃げ道は、逃げ道はどこ…
「あらぁ素敵ねぇ♡レイトちゃんのお洋服をつくりましょうねぇ」
ドナドナのヘビーな雰囲気をぶった斬って、母様が歓声を上げた。
「わたくしねぇ、レイトちゃんはパウテルカラーが似合うって思ってたのよぉ。
王都の流行りはどんなのかしらねえ?
お揃いで作りましょうねぇ」
うん。
母様は平常運転で僕の味方だ。
100
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説


【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。

ギャルゲー主人公に狙われてます
白兪
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。
自分の役割は主人公の親友ポジ
ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、


王子様から逃げられない!
白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。


婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる