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プロローグ

後朝の据え膳

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ヴォルフはきんとした痛みを股間に感じた。
わかってる、朝立ちだ。

この物理的な状態異常で朝の訪れを知る事、すでに六年余り。
………しょうがない。
相棒の"右手君"になんとかしてもらおう。
……すっごい惨めだ。

そんな泣きたい気分でも、俺の俺は早よせぇとずっきんずっきん主張してくる。
はいはいちょっと待っててねぇ、とパンツをずり下げるために体制を変えようとしたらソレに気が付いた。

くぅくぅと寝息が聞こえる。


ど、ど、どぉなってんだぁ!!

電撃から身を護ろうと横に飛び跳ねたら、ベッドが揺れてくぅんと声がした。

………….…、え?

同じベッドに人がいる。
しかも近距離だ。
1M以内だ。
俺の俺は勃っている。
なのに電撃が来ないだとぉ⁉︎

ヴォルフは恐る恐る隣で眠る人を見た。
あまりの衝撃で俺の俺は状態異常を脱している。
つまり臨戦形態をやめてふにゃってなってる。

隣の人はこっちに背を向けて横向きに寝ていた。
ヘーゼル色の髪がわさわさと枕に広がって、そこから寝息がしている。

誰だこいつ。
なんで俺のベッドにいる。
しかも起きねぇし。

あぁ頭が痛てぇ。
飲み過ぎたぁ。

這いずる様にベッドからでて水を飲んだ。
もうバケツ一杯飲んだ。
水を飲んで覚醒したら思い出した。
そういえば、俺、結婚したんだ。


昨日までは領地いったりして大忙しだった。
昨日も午前は貴族がずらりと並ぶ中で臣籍降下の儀があって、午後に結婚式があったのだ。
式のあとグランハルトの屋敷に兄上がこっそりやって来て、魔法局長官と宰相と財務大臣とセルジオとで多数決による行使で"勃ったらビリビリ君"を解除してくれたんだ。
んで、"良かった!""めでたい!"と歌って乾杯して痛飲して…どしたんだっけ?


"勃ったらビリビリ君"は1M以内に勃ったちんちんが有ったら、電撃が発動する魔道具だ。

6年だ。
それが6年も着いてたおかげでヴォルフはチュウも添い寝もぬきあいも出来なかった。
こんな隣に人が寝てるなんて無かった事だ。

ヴォルフは恐る恐る毛布を持ち上げた。
人がいる。
新緑に似た甘い香りがふわりとくる。
そして股間にクル。

股間の痛みでヴォルフはやっと結婚を実感した。

これで
チュウもセックスもし放題だ。

俺の俺が興奮で起き上がってきた。
馬鹿みたいだった机上の空論の閨教育も、やっと実践が出来るってことだな。

俺の嫁か…
飲み過ぎて覚えていない。
結婚の魔法契約がギッチギチなのに恐れをなされて、なかなか決まらなかった。
昨日会ったばかりだしな

勃ったらビリビリ君ファイナルに浮かれてガンガン飲んで、
「じゃ、本当に出来るか確かめますからぁ」
って兄上達に宣言した様な…
なぜか鳩尾が鈍痛だし…


ヴォルフはレイトを覗き込んだ。
ヘーゼルの髪の中から見える唇はぷるりと柔らかそうで半開きだ。
躑躅色の舌がのぞいている。
それがずきゅんと勃った股間を直撃した。

感動だ。
こんなに他人の体温や体臭を感じる程に近付くのは6年ぶりだ。

俺の俺は朝立ちの続きをずっくんずっくんと要求している。
頭の中がカーッと熱くて鼻血を噴きそうだ。
ずっくんとなった脈動が全身を打楽器のように打ち鳴らしてくる。
俺の俺だけじゃ無く、自身がもう勃っちゃってる感じだ。


……これ、俺の嫁だよな。
結婚したんだよな。

喉がからからでごっくんと唾を飲み込んだ。

これ、据え膳ってことだよな。
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