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第2話

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 ヒステリーをおこして、マーガレット様が叫びます。

「だって、だって私見たんだものっ!!その人がいけない事をしてるところ!!」

 見たところ、こんなに必死なのは玉の輿に乗りたいからでしょうか。何としてでも私を追い落として、自分がその座につくのだという確固たる意志が見えますね。

「ほう。では、いつ見たのかを教えてもらおうか」

 鋭い目つきはそのままに、お父様が聞きました。図々しく家に乗り込んできただけありますね。怯むことなく言い放ちました。

「ちょうど1か月前、18時くらいに学校の教室でクラスメイトと2人きりになってたじゃない!その後やばい声が聞こえてきたのよ!!」

 私は記憶を探ります。すると、しっかりアリバイが出てきました。

「確かその日は、両家が集まって食事をしていませんでしたか?」

「そうだね。お前もいただろう」

 私の質問に返事をしたのはアドリード公爵です。そのままマドラー様に視線を移し、強い口調で確認しました。

「え?あ、ああ、そうだったかな…」

「まさか、その程度の口車に乗せられたのか」

「い、いや、これだけじゃないんだ!そうだよな?マーガレット」

 鬼のような形相でこちらを見ていたマーガレット様が、マドラー様の言葉を聞いてコロッと態度を変え、頷きました。

「え?ああ、はい。実は1週間前の今日も同じ事をしていたんです!」

 それもアリバイがありますね。

「その日は体調が悪くて学校を休んでおりましたよ?」

 ついにマーガレット様が喚き出しました。

「何なの、あんた!!邪魔しないでよ!!」

 え?いや、その人私の婚約者なんですけど…。そう思った時、アドリード公爵が失望したようにマドラー様に言いました。

「マドラー。お前はまだ自分が騙されている事に気づかないのか?」

「マ、マーガレット、僕を騙していたのか?」

「だったら何よ!何か悪い!?」

 いや、悪い事しかありませんけど。すると突然、今度はマドラー様が叫びました。

「僕を騙すなんて許さないぞ!!さっさと出て行け!!」

「言われなくたって出ていってやるわよ!!」

 理解に苦しんでいる間にマーガレット様が帰っていきました。最後までよく分かりませんでしたわ。

「はー、良かった良かった!!危ない、悪い女に引っかかるところだった!!という訳で、今回の話は無しって事でお願いしますね!」

 その場にいた全員が『はぁ?』という表情になります。一番最初に声を出したのはアドリード公爵です。

「………お前は何を言っている?」
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