隣の家の幼馴染は学園一の美少女だが、ぼっちの僕が好きらしい

四乃森ゆいな

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第二章

第1話「幼馴染たちの、ゴールデンウィーク」

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 季節は春場の気候を感じさせないほどの気温へと早変わりした5月。

 学生にとっての最大にして夏休み前の長期休暇──ゴールデンウイークに突入していた。きっとみんな、クラスの友達や家族と炎天下の中出掛けたりするのだろうが、果たして、陰キャかつ引き籠もりな僕──凪宮なぎみや晴斗はるとが、そうするかと問われたらそりゃあもちろん、


「ノー、以上」

『冷たいねぇ~、晴。いいか? ゴールデンウイークという連休の中、読書しかすることが無く既に出された課題すら片付けたと思われるお前を遊びに誘ってんだろうが』

「余計なお世話だ」


 ベッドの上でいつも通りラノベを読み漁る中、急に電話がかかってきた。

 こんな僕に時間を費やそうとしてくれる奴なんぞ、この世に3人しか存在しない。隣の家に住む幼馴染。異常なブラコン素質の変態。そして──今電話をしている相手、藤崎ふじさきとおるだ。

「大体、どこに連れてくつもりだよ」

『どこだっていいじゃねぇか! 偶には外に出ないと、身体なまっちまうぞ?』

「……家である程度のトレーニングはしてるつもりだが。っていうか、それこそ余計なお世話なんだが?」

『トレーニングっつったって、それリビングにあるゲームだろ?』

「十分じゃないか。わざわざ外に出なくとも、ちゃんと運動が出来る。……あぁ~、いい時代になったもんだなぁ」

『昭和時代のおっさんかお前は』

 ラノベを読む時間を割かれつつあるこの状況。どうしてこんな会話になっているのかというと……。
 突如として電話がかかり、憂鬱な気分になりつつも10コールしたぐらいに電話に出たのはいいものの、その要件というのが──『遊びに行かね?』という陰キャ嘗めてんのかと張っ倒したいぐらいの内容だった。


 藤崎透。僕と同じ中学の同級生兼クラスメイト。

 陽キャという陽の下を堂々と歩くお手本のような奴だ。最初は縁も無かったのだが、中学の頃、同じ図書委員に入ったことでこいつが読書好きだということを知った。

 クラスではまったくそんな素振りを見せることはないのだが、おそらくそれはあいつ同様、クラスメイトとの会話を優先するという陽キャの性なのだろう。

 だが、あいつとは少し違う部分もある。
 あいつ──幼馴染とは違い、あいつは自分から率先して『輪』に入っていること。仕方なくなどの感情は無いところ。そこばかりは、僕の幼馴染とは似て非になる部分だろう。


「とにかく、友達とつるむつもりなら他当たれよ。何で僕が……」

『──お前……今、オレのこと……って、言ったか?』

「な、何だよ。僕はそう思ってたけど、お前は違うのか?」

 どうしたんだ? 急に通話先の透の様子がおかしくなってしまった。

 常日頃から透には助けてもらうことがよくあった。中学のときだってそう、友達なんて“偽の関係”でしかないと思ってきた僕の考えを、こいつはトコトン否定してくれた。

 ──そんなのは、始めから友達じゃない。って、何度言われたことか。

 だから僕はあの頃から、透とは友達のつもりだったが……何故急にこんな話になった?

『オレ……初めてかも』

「えっ、何が?」

『お前に──初めて『友達』だって言われたかも……!』

 いやいやいや、それはさすがに盛りすぎでしょ。1回ぐらい…………1回、ぐらいは……絶対、言ったことぐらい────思い当たらん!!

「あぁ……うん。悪い、心の中でしか呟いたことなかったかも」

『ひでぇ! もっと感情の表現ぐらいしろよ!』

「んなこと言われても……」

 元から自分がこういう性格である以上、ひとときの感情表現ぐらいは出来るようになった方がいいのだろうか。妹の優衣ゆいにも「晴兄、あんま笑わないね」なんてどストライクに言われたことあるからな。……本当、容赦ないわあの妹。

『ってかさ、お前の家にゲーム機あるんだよな。だったら、お前ん家行っていいか?』

「ノー、以上」

 即答だった。

 当然だろう。ただでさえお前に付き合ったお陰でゴールデンウイーク内の読書予定が崩れているというのに。これ以上割けば今日1冊しか読めなくなってしまう。

「とにかく、用が済んだから切る」

『ちょ! それマジで言ってんのか!? あそぼーよー! 暇なんだよー!』

 小学生かこいつは! 暇だってことは僕に電話をかけてきた時点で察してたけども。
 と、そんな会話をしている矢先の出来事だった。

「──晴兄ー、なぎささん来たよー!」

「…………」『…………』

 下の玄関から僕の部屋に向かってあいつが来たことを伝えた妹。
 その叫びは電話をしていた僕にさえ聞こえているということは、当然こいつにも聞こえているというわけで……。

『……と、いうことだそうだ。あの人は家に入れるのが自然だというのに、友達のはずのオレを入れないという領分はありますかな?』

「……………………」

 先程まで僕が『友達』だと認めていることに動揺しまくっていた男が、今度はその立場を利用してくるとか……本当、人間のすることなのかと問いたくなった。

 それに、あいつはいつも家に来るから定着化してるけど……他の人を家に入れているという点だけで言えば、透の筋は通っている。誤魔化そうとすれば、また嫌な感じで反撃してくることはこの時点で確定事項となった。

 と、なれば、僕が折れない限りこいつは何度でも電話をかけてくる。
 最悪直談判という手もあるしな。今日に限っては、妹の優衣も家で勉強してるし。

「……わかった。いいよ、来ても」

『うっしゃ! そんじゃ、お昼食べたら行くなー!』

 そう言い残し、一方的に電話を切った。

 ……どうしてこうも計画が上手くいかないのかと、僕は読み進めていたラノベをベッドの上に放置し、そのまま部屋を出てリビングに向かうのであった。
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