隣の家の幼馴染は学園一の美少女だが、ぼっちの僕が好きらしい

四乃森ゆいな

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第九部

第79話「幼馴染たちは、恋の現に身を投じる②」

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 ◆一之瀬 渚◆

 何ということだろうか。

 勢いで考えついてしまったこととはいえ、今日(数時間前)付き合いだしたばかりの彼氏の家にいきなり「泊まってもいい?」なんて……完全に一線超えようとしてる感じじゃない! 違う! 私そんな破廉恥じゃないもん!

「あううぅ…………」

「……おい。いつまでそんな部屋の隅っこですみっコぐらししてるつもりなんだ?」

「す、すみっコはそんなゲームじゃないわよ!」

「じゃあ何してんだよ」

「う、うるさいっ! そ、そもそも晴斗があんなことを優衣ちゃんの前で言うのがいけないんじゃない! 罪よ罪! 私に恥じをかかせたっていう罪人よ!」

「人を勝手に悪人に仕立て上げるなよ。あれは完全にお前の自爆だったじゃねぇか」

 素直に否定しずらい台詞を並べにきた晴斗。……確かに、玄関での出来事は私の自業自得かつ盛大な自爆として捉えられるだろうけども!
 ……だからって、自白に追い込んだ晴斗にだってそれ相応の責任というものがね!

「……ったく」

 ふと、ベッドに腰を掛けながらラノベを片手に持ち直しながら、晴斗は一息を吐く。

「とりあえず、これ以上もめててもしょうがないし、双方が悪い。これでいいか?」

「…………許す」

 少々不満は残るものの、晴斗も『悪かった』と認めてくれたし今はこれで許すことにした。それに、一々こんな些細なことでもめてたら気が短い人みたいで嫌だし……。

 晴斗の家に泊まることになってから展開は早かった。

 晴斗といつものように3人分の夕飯を作り、その後は相互交代にお風呂へと入った。1ヵ月前にもあったお泊り会と、何ら変わらない生活リズム。

 けれど、不思議とそれらに苛立ちは湧いてこない。寧ろそれが、居心地がいいとまで感じてしまったほどだった。

 そして今──私は部屋の隅っこで蹲り、晴斗は私との会話を終えると再び読書へと集中力を戻した。……ズルいと思わない? この度胸、本当に羨ましい。
 1人でウジウジ考えて、恋人同士になって初めての晴斗の家の訪問。幼馴染として、何度も通ったはずの入り口にさえ抵抗があったというのに──。

 そう、この幼馴染は通常運転すぎるのだ。

 先程の玄関での出来事を冷静に分析して私に問いただし、そして今ではベッドの上に腰を掛け足を組みながら呑気に読書ときたものだ。

 ……まぁ、これが『彼』である以上、否定なんて到底出来るはずもないけれど。
 だけど、さぁ……仮にも彼氏の部屋にカノジョが上がり込んでいるというこの状況に、何の変化も起こさないとか、どれだけ肝が据わってるんだと。そう褒め称えたい。

 い、今までが今までだったから、しょうがないのかもしれないけど……少しはさ、相手してくれてもいいと思うの。
 でも、ここで早まったらダメだ! ふしだらな女だと思われる! 早まるなよ、私っ!!

「……いつまでそこにいる気なんだ?」

「い、いいでしょ。私がどこで何をしようとさ!」

「……拗ねてるのか」

「拗ねてないですぅ……」

「はぁ……」

 私がいじけているのを悟ってか、晴斗は重苦しいため息を吐いた。

 今現在、部屋の隅っこで両手で膝を抱えながら蹲る私。……けれど、私は一体何がしたいのだろう。

 ひ弱なのはお互い様。長年気を遣い続けてきた間柄とはいえ、すぐにその癖が修復されるわけでもない。そのため、両想いとなった今でも、本当のことを伝えるべきか否か……と、何度も思考が働いてしまう。

 過去のくさびというのは非常に重たい。自分が思っている以上に──。

 両想いになれたからと云えど、要は〝男女関係〟になったばかりにすぎず、私の欲望がただ単に独り歩きしているだけかも、と。そう思うのは、もう仕方がない。
 そんな欲望と自制が論争を繰り広げる中、

「……お前さ。一体何をそんなに緊張してるわけ? 何度も上がってるだろ、僕の部屋」

「そ、そうかもしれないけど……」

「……渚の考えが完璧にわかるわけじゃねぇけど。恋人になったからって、いきなりになるわけじゃないんだ。だから、そんな気を張る必要どこにも無いぞ」

 まるで心読んだかのような正確な回答。

 しかし、あれかな……。自分の本心が彼氏に論破されて返ってくるとか、最早ダメージ量が半端ないことになってる気がするんですが……。

 でも、それだけじゃない。何よりのことだった。

 何事にもほぼ無頓着な晴斗の口から『アレな関係』って言葉が飛び出してきたことに、何よりも驚いていたりする。
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